第14話 新人魔女と不器用な師匠(6)
「ありがとうございます、ジャックスさん。おかげで助かりました」
「いいってことよ」
ジャックスはニカッと笑う。その時、工房の扉が開いた。仏頂面をしたリゼが顔を覗かせる。
「騒がしいと思えば、やはりお前か」
リゼは不機嫌そうにそう言った。ジャックスはそんなリゼの機嫌などどこ吹く風と言った様子で答える。
「お、相変わらず綺麗な髪色してるな。そうか。今日は金曜だったか」
リゼはフンと鼻を鳴らしたが、特に怒っているわけではないようだった。
リッカはリゼとジャックスのやりとりをぼんやりと聞いていたのだが、そこでふと気になった。ジャックスはリゼの髪色を当たり前のように褒めていたが、昨日と髪色や髪型が違うことについては一切何も言わなかった。普通ならば、真っ先に触れてもいい程の変わりようなのに。
(なんでだろう?)
リッカは不思議に思い、二人の会話を遮るようにおずおずと口を開いた。
「あ、あの……ジャックスさん? リゼさんの髪型や髪の色が変わったことに驚かないんですね?」
すると、ジャックスはきょとんとした顔になり、その後豪快に笑った。
「あっはっは! そりゃそうさ。もう見慣れちまったからな」
「え? 見慣れた?」
リッカの頭の上に疑問符が浮かぶ。リゼの見た目が変わったのは、昨日から今朝にかけてだ。なのになぜ見慣れたと言えるのか。
リッカの表情を見て何かを察したのだろう。ジャックスはチラリとリゼの方を見る。リゼは面倒くさそうにため息をつき、肩をすくめただけだった。そんなリゼに代わりジャックスが説明する。
「そうか。またリゼは何も言わなかったんだな。実はな、リゼの髪は昔から日替わりで染まるんだよ」
「へぇ……って、え!? そ、染めてるんじゃなくて、染まるんですか?」
リッカは驚き、まじまじとリゼの顔を見つめた。だが、当の本人は鬱陶しそうに目を逸らすだけで何も語ろうとしない。代わりにジャックスが説明を続けた。
「まぁ、正確に言うと、見た目をいじってるのは『魔装』なんだがな」
「ま、魔装?」
聞き覚えのない単語にリッカは首を傾げる。すると、ジャックスは意外そうに言った。
「おいおい、嬢ちゃん。本当に知らないのか。立派な魔女を目指してるんだろ? それはちょっと勉強不足じゃないか?」
「す、すみません」
リッカは申し訳なさそうに謝った。確かに自分はまだまだ未熟者だ。これではいけない。そう思って気持ちを入れ替えようとした時、ジャックスは笑って続けた。
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