第12話 新人魔女と不器用な師匠(4)
(……一体何をしているのだろう?)
納得がいかないのか、難しい顔をして首を傾げているリゼの様子を見ていたリッカは、控えめに声をかけた。
「あの……何をされているんですか?」
すると、リゼは怪しげに目を細めて言った。
「何って、新しい薬の開発だ」
「そ、そうなんですか?」
予想外の答えだった。リッカは驚くと同時に慌てる。
「あ、あの……もしかしてわたしの調合した薬を使われるおつもりですか?」
「当然だろう。そのために今朝は早くから用意していたのだ」
「いやでも……品質の確認とかは……」
「品質? そんなものはさっき確認したではないか。私は早く新薬を作りたいのだ。邪魔をするな」
「えっ……あ、はい」
有無を言わせない迫力に圧倒され、思わず返事をしてしまった。
「いい子だ」
リゼは満足気に言うと、また薬作りに没頭し始めた。取り残されてしまったリッカは、仕方なくリゼの隣に立って作業の様子を眺めることにした。
(それにしても……本当に綺麗だなぁ)
真剣に薬を作る横顔を見ながら、リッカはぼんやりと思った。リゼの顔立ちは整っていて、どこか神秘的な雰囲気がある。特に今は、窓から差し込む太陽の光が金髪をより一層輝かせていた。
しばらくリッカはぼぉっとしていたが、ハッとして頭を振った。いけない。早く残りの作業を終わらせなければ。慌てて作業に戻ろうと工房の扉を開けると、突然目の前に人影が現れた。
「うわっ!?」
驚いて飛び退くと、そこにはジャックスがいた。彼も驚いた様子でリッカを見ると言った。
「おう、嬢ちゃん。どうした? 早速リゼにこき使われてるのか?」
リッカは曖昧に笑う。
「いえ、そういうわけではないのですが……」
リッカはちらりと後ろを振り返る。リゼはこちらの様子など気にもせず作業を続けていた。
「なんだ? どうかしたのか?」
「それが……」
リッカは簡単に事情を説明した。すると、ジャックスは豪快に笑った。
「はっはっは! そりゃ、リゼは間違ってないぜ。確かに嬢ちゃんはリゼの助手として雇用契約されてる」
「ど、どういうことなんでしょうか。わたし、助手なんて一言も聞いて……」
そこまで言って、リッカは思い出した。確か昨日、ジャックスとリゼが言い合いをしている時、ジャックスは言っていたはずだ。
――こいつを逃したら二度とお前のところに助手は来ないぞ――と。
つまり、ジャックスもリゼも最初からリッカのことを工房見習いではなく、助手にするつもりだったのだ。
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