第21話 優柔不断・・・


 一旦仮想現実をログアウトし、あくるんと離れた俺はそのまま帰路につくことにした。

 足取りが重い。鉛でも付いてるみたいだ。それでもずるずると足を引きずって家に向かう。

 頭の中がぐるぐるとごちゃ混ぜになって、考えることさえままならなくなってきている。


「太宰の世界を作ろう、かぁ・・・」


 と、俺はため息をつくと同時に、ひとりごちる。

 

 あくるんとの共同戦線。あんなことやこんなことを、常にふたりきりの状態で切磋琢磨しながら、別世界の創造を目指していく。

 これらの意味は分かってる。本来だったらまず起こり得ない出来事だし。推しと終始一緒にいられて、なおかつ相手から直接『必要だよ』と言われるなんて奇跡としか言いようがないじゃないか。


 それは分かってるんだけどっ・・・!!思わずぎゅっと拳を握りしめた。手のひらに爪が食い込んだけど、痛みなんかどうでもよかった。

 何を隠そう。俺が最も恐れているのは、このことがバレた時だ。


 あくるんを俺がしていたなんて事実がもしも公になってしまった暁には――想像しただけで背筋に冷たいものが走る。


 どうしよう。

 どうしたらいいの。

 どうするのが正しいの。

 あくるんの誘いは無下にしたくない。


「よっ!練一!」


 背後からバシンと思い切り背中を叩かれる。歩だ。クラスが変わってからは会っていなかった。相変わらず元気さが取り柄なやつだよ。


「新クラスはどうだ?うまくやれそうか——ってうぉ⁉どうしたそのひっでぇ顔は⁉ますます暗さに磨きがかかってるぞ⁉」


 歩は俺の表情を見て早々、大きく目を見張った。


「あぁ、歩か・・・。お前の方こそどうだ?順調か」


 せめてもの思いで、俺は力なく答える。


「人の心配してる場合かよ・・・ったく。で?何があったんだ?話くらい聞いてやっから。な?」


 話す口調こそやや荒っぽい一面はあっても、なんだかんだ歩は人を見捨てるような真似はしない。いい友人を持ったなぁ。我ながら心底思う。ここはあいつのお言葉に甘えるとしよう。


「実は――」


 これまでのいきさつを、包み隠さず全て話した。そうしないと、とても理解してくれるとは到底思っていなかったから。


「おいおい練一!?おまっ・・・?それ、マジで言ってんのかよ!?」


 案の定、歩は目をまん丸にして驚いた。当然の反応だ。


「じゃあ練一は、今後あくるんと日々『夢の時間』を過ごすわけかぁ。あー。めっちゃ羨ましい。俺が代わりたいくらいだぜ」


「夢の時間、ねぇ・・・」


「どうした?気が進まないみたいだな?またとない絶好のチャンスだろ?練一だって、ぼっち卒業も夢じゃない」


 ふと、あくるんの顔が浮かんだ。

 ぼっち卒業・・・うーん・・・やれやれ・・・。

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