数多の性癖を網羅した俺がNTR耐性を獲得し、ついには妹をNTRせたい(未遂)!!!!

飛浄藍

第1話 ごめん……俺、止められねえんだわ

 2024年2月18日 16時12分

 

 我が家の主たる両親は不在。ついては同じ屋根の下のもと、実の妹と2人きりの状況なのだグヘヘグヘグヘ――


 いかん落ち着きたまえ壱持垂美いちもつたるみ! ここで勘づかれてはすべてが台無しである!


 俺は忍び足で階段を上る。背徳さが背筋を撫で、くすぐったさに痙攣しそうな感覚を必死に抑える。


 昇り切った先には、ピンクのネームプレートが掛った扉。妹の部屋だ。グヘヘ。あのピンクの色、なんかエロいな。まあ妹なんかに欲情なんてしないんだけどねっ☆


 俺の目的はただ一つ。俺の中に疼く宿痾サタンを抑えるため、妹にはその生贄になってもらうのだ。


 まずは強行突入!

 驚き戸惑う妹の服を脱がし拘束!!

 遊びに来る友だちがこれに飛び込む!!!

 俺はあられもない二人の情事を遠隔で楽しみ、日々募るばかりの悶々とした無聊を慰めるとしようではないか。


 NTRに耐性がついちまった俺が思いついた史上最悪ド畜生のイン〇ッシブルミッションが発動しちまうぜえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!


「ッるっせーよ変態兄貴!!」


 怒号とともに扉が開けられた。顔をひどく歪ませた妹が、階段に這いつくばる俺を切りつけるような目つきで睨む。おくれ毛のない纏まったポニーテールを揺らしながら部屋から出てくる。

 学校終わったばかりだから制服のままなんだな。あ、パンツ見えそう。


「見んなこのバカ!!」

「痛い」


 けどうれちい。もっと踏んでほしいかも。


「きっっっっも」

「あーもっとやってほしいな! ワンワン! くぅーん」


 おねだりしたらもっと踏んでくれた。これがおかわりってやつだ。世間一般的な頼み方とはちょっと違うかもだぞ。みんなは真似しないようにね!!


 白ソックスをまとった脚は怒りに任せて溝内を狙ってくる。まあまあ痛いかも。でも激情に染まった顔色も、羞恥と同じ顔色だから鎮痛されるんだよね☆


「調子乗るなバカ兄貴! やることなすこと、全部キモいんだよ!」


 最後にトドメとばかりに頭を蹴り飛ばし、俺は階段から落とされそうになる。

 咄嗟に手すりを掴み、後ろへの落下は回避できた。冷や汗ピュッピュ止まんないよ!


 息絶え絶えになりながら、妹は懲らしめたかのように腕を組む。


「よくも毎日懲りずにセクハラしてくるな! ふつうにキモいからやめろよ。アンタの考えなんてお見通しなんだから!!」

「まるで以心伝心だねっ。心だけじゃなくてお体の方も繋がりたいね☆」


 ゲシゲシヅカヅカ蹴られる。あ、けっこう真面目に怒ってるな。


 俺の妹、瑠香は人の心を読むことができる。いわばテレパシーの一種らしいけど、そんなの関係ないよ。

 きっとこのテレパシーは、俺たち兄妹を運命から解き放つためのエクスカリバーなんだ! あれ……剣を持ってるのは瑠香で、でもマジモンの剣を持ってるのは兄である俺だから適切な表現じゃないな。ま、いっか! 兄妹だし!!


「よくねえよ!! 近親〇姦とか犯罪だし! 警察呼んじゃえばアンタなんかお縄にちょうだいされるんだからな!」

「お縄に頂戴!? 拘束プレイ!!」

「んあ゛あああ~~~~!! 発言と思考どっちもキモイし性癖多いし! なんでこんなのが兄貴なんだよお!」


 自慢ではないが、俺の性癖の数には際限なんてないのさ。アンリミテッド性癖ワールド!!


「おい近親相姦上等野郎。性癖の数より命の貯蔵は十分なのかよ」

「何を言っているんだい? 俺には命より大切な性癖たちが体を構成しているんだよ。もしも心臓を貫いたとしても、性癖たちが滅びぬ限り生き永らえるのさ」

「一突きで死ねよ。強キャラ感出してるけど実際アンタはチュートリアルに出るスライム以下なんだよ」


 スライムってエロいよね、って言おうとしたら瑠香が拳を構えてきた。

 まずい、脚は大丈夫だけど拳には性癖補正かかってないからダメージ直撃なんだよね☆

 ここは潔く口を慎もう。


「……なんでもエロいって言えばいいってもんじゃねえからな? 今日はもう喋り疲れた。もう帰って」


 瑠香はスカートを翻らせ、自室に戻っていく。扉の締まる音が、今までの白熱した会話を終わらす帳だ。

 今日の会話はここまで、らしい。


「学校、楽しかったか?」


 俺は無理やり扉越しに会話を投げた。

 沈黙が続き、待っていても返事は帰ってこなかった。


「そっか」


 俺も階段を下りて自室へ帰る。


 これが俺たちの兄妹としての会話だ。

 何気ない一日の、気まぐれな会話は次の日に持ち越しとなる。

 

 明日かあ~。NTRの性癖が振るわなかったぜ。足で踏まれるのもいいけど、やっぱりNTRじゃないと物足りないなー。


「ちょっと待て。今なんて言った?」

「え?」


 振り返ると、またしても扉を開けてこちらを睨む妹がいた。


「ネトラレ? アンタが? 数ある性癖のうちでもNTRだけは拒絶してたじゃん」

「食わず嫌いはよくないよ。ちゃんと克服したさ」

「こないだNTR漫画の刑に処すって言ったら失禁して大泣きしたじゃん」


 はて、なんのことやら。今ならNTR読むだけで空飛べちゃうもん。


 すると瑠香は、俺の顔を精査するように見回し始める。


「……延長」

「延長って、会話の?」

「いいから部屋入って」


 えへへ、いいの~~?? おいらが部屋で押し倒しちゃっても知らないぞ?


「そん時は警察な。はよ入れ」


 拳には勝てません。ごめんなさい。


 促されるまま俺は妹の部屋へ入った。ぬいぐるみばかりの、つまらない部屋だ。


 二人きりの部屋。閉ざされた空間に謎の緊張感が走る。瑠香の目つきはいまだ鋭いままだ。嘘をも見抜く彼女の領域に踏み入れた。それが意味することは一つしかない。

 

「アンタ、何か隠してるでしょ」


 一方的な尋問だ。

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