第76話 リプルとアアスフィア3
「やめてってば!」
兵士の手から投げ槍が離れ、地面をえぐる。
「お友達にひどいことしないで! 許さないんだから!」
だから、運が悪かったのだ。
えぐれた地面からクレーターをつなぐ亀裂が走ったのも、亀裂の内側にリプルが両手を広げて立っていたのも、リプルを受け止めようとしたアアスフィアへ兵士の一人が火薬器で攻撃したことも、すべては偶然。
火薬器の煙が晴れる間に、何か大きなものが沈む音がした。
煙が晴れた先には誰もおらず、フラクロウは快哉を叫んだ。
ハイシアは止めることもできずに、その光景を見つめていた。
「あんた、あんなにきれいだったのに俗物になっちまいやがって」
黙って海を見つめる背中に、どろどろと腐った声がかけられた。
ミルキだった。
ハイシアの目は小刻みに震え、しわになるほど胸元を握っている。
ミルキはその足を噛んで自分に向き直らせると、大きく跳びあがってハイシアの胸を蹴った。
「あんたのせいだよ。あんたがもっと早くアアスフィアとリプルを離していれば、あたしの邪魔さえしなければ……リプルだってまだ生きてた」
ハイシアは答えない。
「このデクノボー!」
尻もちをついたその首を睨みつけて、ミルキはハイシアの頸動脈に噛みついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます