第73話 箱舟には乗せられない
「僕たちはみんな、見捨てられて溺れたわけだ」
「何度も言うけれど、見捨てたつもりはなかった」
「じゃあどうして、ミルキを連れて行かなかったの。彼女がこちらに来たのはフラクロウが集落に入り込んでからだ」
「……最初にも少し言ったけれど、ミルキはイヌダシオンの技術に魅入られていた」
自転車を漕ぐ足にますます力を入れて、立ち漕ぎしながらハイシアは荒い呼吸の下言葉を発する。
「反省してもらわないと箱舟には乗せられないんだ」
「反省しないまま、アアスフィアと兄さんへの憎悪だけ募らせたってこと?」
「信用してもらわないと、俺も万能じゃない」
「……兄さんの”再生”が見せた幻だったんでしょ? なんでそんなに辛そうなの。ミルキのため?」
「幻でも守れなかった様は応えるさ」
「……ミルキのこと、本当に悼んでくれないんだね」
「悲しんでいるとも」
「本当……だよね、その顔見る限り」
少し拗ねたように、セルーナは言った。
セルーナがコーヒーをまた一口飲む様を、ハイシアは黙って見つめていた。
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