第8話 皇帝謁見
同じ《
「ん、なんか外から音、いや、音楽が聞こえる気がする」
居室の窓から中庭を見下ろしていた僕は視線を上げた。
それに気づいたカリーナさんが、昼食の後片付けの手を止める。
「おそらく、皇帝陛下がお帰りになったのだと思います。昨日から
皇帝が帰還したということは、ついに《こちらの世界》の最高権力者とあいまみえることになる。
僕は身体が少し震えていることに気がついた。この震えは緊張なのか、それとも恐怖なのか──この時点では判断はつかなかった。
僕は気持ちを切り替えようと両頬を叩く。
すると、同じタイミングで、扉がノックされると同時に勢いよく開かれ、息を切らせた大司教さんが部屋の中に飛び込んできた。
「お待たせいたしました、キョウヤ殿! 明日の朝一番に
この時の僕は知る
《こちらの世界》に来てからの、最初の大きな転機が待ち受けていることを──
○
僕は、大司教さんに先導される格好で《
中は《むこうの世界》でいう体育館くらいの広さがあるホールだった。正面に一段高くなったステージのような場所があり、中央に
「あれが、《
玉座へと続く
そのまま玉座から少し手前の位置まで歩み寄ると、大司教さんがゆっくりと
「
大司教さんが、僕に頭を下げるように促す。
同時に、周りの人々も頭を下げ、室内の空気が一段と重くなったように僕には感じられた。
そして、一拍置いて、靴音高くひとりの青年が姿を現した。視線だけを上げてその姿を追いかける僕。
《皇帝ラファエーレ》は
僕よりも年上ということだが、年齢の差以上に
皇帝が着席したことを察し、
その
「お前は何ができるのだ?」
「え?」
反射的に僕は皇帝に正面から視線を向けたが、逆に皇帝の鋭い視線に射貫かれて、あっさりと圧倒されてしまう。
「武芸か、魔法か、それとも我々にはない知識をもたらすのか」
僕は言葉に詰まってしまった。
武芸どころか運動は人並み、魔法に至っては空想上の存在でしかない。一応、《こちらの世界》よりも文明的に発展していると思われる《むこうの世界》の知識を持っているが、それがそのまま《こちらの世界》に適用できる者なのかもわからない。
そんなことを、困惑しつつたどたどしく口にする僕に対して、皇帝はあからさまな苛立ちの色を見せた。
「それで、お前は
「って、言われても……正直、いきなり召喚されて、それでいて役に立てるかと聞かれても、答えようがないんだけどなぁ」
いろいろ考えるうちに、逆に冷静さを取り戻せたのか、僕はぼやきを口にするくらいまで開き直っていた。
だが、皇帝にとっては、そのことが気に
その空気に慌てた大司教さんがフォローしてくれた。
「勇者殿は、まだ《こちらの世界》のことには
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