EPCOTIA

𐎢‎𓊆1録𓊇𐎽 転生したら、ガワだった件










𐏃O𐎢𐎩O𐎢𐎿𐎡𐎣𐎡𐎣𐎠𐎼E𐎴













「…………………………うぅ」



···············あれ、?


ん……?私、生きてるの?


私、皆と一緒に電車から飛び降りて……確実に山手線の内回りに引かれたはずなのに。


いや、内回りとかはどうでもいいか。


電車に轢かれて………奇跡的に生きていたとしても、こんなにも体のどこにも異変というものが無いのはおかしい。


そもそも、電車に轢かれて体は間違いなく木っ端微塵。


テレビのニュース風に言うならば「全身を強く打って死亡」という形になっているはずなんだ。


全身グチャグチャになってることを婉曲的に表現して「全員を強く打って死亡」って言い方をしているんだよね。


グチャグチャのスクランブルエッグ状態になった体で生きていられるほど、私は人間を辞めてはいなかったので、確実に死んでいる。…………はずなのに、今は普通に生きている。



「あー、あー」



声もちゃんと出る。骨伝導と気導音が混ざった自分の声………うん、間違いなく聞き覚えしかない自分の声だ。


自分の手を見てみても、特に異変はない。


服装も死んでいた時の服。


若干ヨレヨレになっている部屋着の黒いパーカーに、しまむらで買ったスウェットのズボン。


………体には一切の傷跡は無かった。無論、痛みも何ひとつとして無い。



違和感があるとすれば、自分が今………知らないホテルにいるということ。今までも、仕事でホテルに泊まったことはあるものの、今居るホテルの中のように、内装が豪華で………1泊数十万円はくだらないであろう高級ホテルには泊まったことはない。


せいぜい、掛かったとしても数万円くらいのスウィートルームしか無い。


ファンタジーのラノベに登場する宮殿みたいな高級ホテル………なんで、ホテルかっていうことを断定できるのかと言うと、たまたま見ていた窓の景色が、東京だったから。


東京……と凄い似ている街なのかな?


東京タワーやスカイツリーみたいなのはあるんだけど、微妙に形が違うのと………そもそもの高さが違う。


タワー以外の高層ビル全般が、私の知っている東京の1.5倍くらいの高さがあるのだ。


そして、近くの高層ビルの広告の看板には楔形文字のようなものが書かれていた。日本語では無いのは確かだが………ってことしか分からない。


でも、日本の都会という雰囲気が残っている世界ではあるようなので、こんな西洋風の内装の建物は何処かのホテルであると見て間違いない。


鏡の無い化粧台の上には、部屋番号が書かれている鍵も置かれていた。


………うん、ここはホテルで間違いないね。



でも、ホテルだとしたら………誰が私のことを部屋に泊まらせたんだろうか?


死んだ時、私はUSBメモリしか持ち歩いていなかった。だから、財布もカードも全て自宅のマンションに置いていた。


どーせ、死ぬからと家の鍵も開けっ放しにしていたため、鍵もマンションのリビングに放置していた。



(あっ、USBメモリはどこにいったんだろ?)



私はスウェットのズボンをまさぐる。


飛び降りる時までは、そこのポケットに入れていた。まだ入ってるのかなって思って突っ込んでみたら、手に何か固いものが当たる感触があり、それを取り出してみると、一切の傷が無いUSBメモリが出てきた。


私の相棒……豐穣熾カレンのUSBメモリのデータが入った、大切な宝物が綺麗に残っていた。


ただ、気になるのは………形などはそのままなのだが、少しサイズ感が大きくなっているような気がした。


そして、USBメモリにはあるはずのないボタンのようなものが、端子の部分ではないプラスチックの先端に付いていた。


押してみようかな?っていう興味こそあったが、何が起こるか分からない恐怖の方が勝り、一旦は押さずにポケットの中に、ボタンが勝手に押されないように仕舞い込んだ。



私は空いている窓の外へ向かい、ベランダの方に飛び出した。かなり上の階層にいるはずなのに全くの無風。



高いところって基本的に風が強いイメージがあったんだけど。まぁ、天気だったらどこに居ても風が吹かない日なんていうのもあるか。


そもそも、筋金入りの高所恐怖症である私は、下を見た瞬間に気絶しそうになった。明らかに20階以上はあるであろうビルの真下を覗き込んだので、ビビってしまって腰を抜かして尻もちを付いた。



その状態で這いずるように部屋の中へと戻った。


恐怖心が落ち着いたところで、再びゆっくりと立ち上がり、外の様子などもしっかりと確認するために、部屋の外へと繋がる扉の方へと向かう。


ワンルーム式の部屋だったため、すぐに扉自体には辿り着けた。扉の前には死ぬ時に履いていた靴が綺麗に並べられていた。


自然になることは無いので、確実に私をここに連れてきた人が居るんだろう。誰が私を連れてきたのかは知らないが。


私は靴を履いて、最低限の身だしなみを意識しようと、たまたま近くに設置されていた全身を見れる鏡で自分の姿を見た瞬間………唖然として、その場で固まってしまった。



「えっ……………なっ……………」



私は、電車に飛び降りる前は………メガネを掛けていて、ボサボサの黒髪のポニーテルという、いかにも芋っぽいヲタク女子っていう見た目だった。


いや、実際にヲタクで推しの一人で女性VTuberの影響で配信業を始めたようなもの………


そのために、事務所にオーディションで受かった瞬間に大卒新卒の会社を辞めて……まだ数ヶ月しか務めていない会社を飛び出して、VTuberとして頑張っていた。


そんな地味な見た目の私とは違って、豐穣熾カレンは容姿端麗の美少女。


17歳のピチピチJKという設定で売っていた。少しだけ歌に自信があった私は、よく豐穣熾カレンにジャニーズの………主に、NEWSやKAT-TUNの曲を歌わせていた。


ジャニヲタから始まり、推しの一人であったキスマイの宮田君がアニヲタだったってことで、その繋がりでV配信を見ることになって、その時に憧れだった人を目指して……夢を叶えて、豐穣熾カレンの中の人になれたのだ。



って、今は私のVTuberになった経緯とか……私がジャニヲタだのV豚だのっていうのは置いといて。



豐穣熾カレンという女の子は……


つり目の綺麗な二重

青紫色のショートボブ、

白と青のオッドアイ、

唯一リアルの私と一緒の貧乳、



というビジュアルだ。


私好みの、大好きなビジュアルだった。


そんな、可愛いビジュアルの豐穣熾カレンの顔が………今、見ている鏡に反射されて、おそらく今の自分がしているであろう唖然とした表情というものを映し出して、私と同じポーズで、同じ服で固まっていた。



「なんで、私が…………カレンに?」








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