第6話
時は、彼女が猫カフェに通い始めた頃に遡る。
当初は猫の生態を記録しようと猫カフェにネコ――カメラを設置していた。順調に記録も増え、
黒髪の青年――吉田
吉田が最初に言った『ある人』というのは店長とお福さんのことだった。猫カフェ前で彼女――藤田このみが
「このみ。お主の肉体の治癒力は不死の力に近いようじゃ。生きておれば、大なり小なり治癒力に差はあるというもの。しかし、長年生きておる我でも死んでから蘇るというのは始めて見る。妖怪との混血かとも思い、血液も調べたんじゃがな。何にもなく、お主は普通の人間じゃった」
「で。俺らと同じように力があるのかと見ても…ねえんだよなぁ〜これが」
金髪の青年――津田
「呪いですか?」
「「「「それはない」」」」
四人の声が見事にハモった。
「呪いの『の』の字もないのじゃよ、これが…」
「かと言って祝福でもないのよね…」
「本当に純粋な肉体の治癒力…」
「俺らの力とも違うし、マジでなんで状態…」
四人が唸って考え込んでしまった。彼女も考える。
――私の体、とっても面倒くさいんだなぁ…。
一歩引いた他人行儀な思いを抱きつつ、彼女はカフェオレを飲んだ。
「まぁなんじゃ、調査しても考えても分からんもんは分からん。結局は、
「そうね。死んで蘇った代償が、意識の混濁や記憶の欠如に繋がっているのは確か。死ぬことがなくなれば、病院に通わずに普通の日常生活を送れるはずよ」
「え…」
普通の日常生活が送れる、と聞いて彼女は驚いた。
「病気…じゃな、いの??」
「そうよ。貴方は病気ではない。
「――病気じゃない」
彼女は、意識が曖昧な状態が死に戻りの影響で病気ではないと言うことに不思議な気持ちになった。肩の荷が降りたような、ずっと疑問に思っていたことが分かって安堵したような、とても不思議な気持ちだ。
「ただ、護衛に伴って重要なことを言うぞ」
「…重要なこと?」
吉田が頷いた。
「まず、護衛は俺と一が行うんだが、何があってもすぐに対応出来るように俺たちの近くに引越しをしてもらう必要がある。
――あれ?そういえば……。
ここで、彼女は疑問に思った事を口にした。
「あの、
「残念だが、
「あ……そうなんですか……」
「今日の一体を倒しても、また別の
確かに彼女は家でも襲われた。それを考えれば、引っ越しは必要なことだろう。下を向いて彼女は考えていた。吉田は話しを続ける。
「引越しの費用は全額こちらが負担する。男の俺たちだけじゃなく、女性も数名手伝いに来るから心配はいらない」
どうやら決定事項のようだ。それもそうだろう。拒否れば、
「よくある話になっちまうが……俺の両親、
津田を見ると、コーヒーを見つめていた。
「他の組織の連中も大体が似たようなもんで…助けれるなら助けたいんだよ」
津田の言葉に店長が悲しい表情を浮かべた。
「貴方が目の前で死んで蘇った時は驚いたわ。でも――それ以上にずっと死に続けて…それでも生き続けなければならない姿を見て、絶対に何とかしないとと思ったの」
店長が彼女に向き直る。その眼差しは嘘をついておらず、決意に満ちていた。
「お願い……私たちを信じて」
その言葉を聞いて、彼女はゆっくりと目を閉じた。
考えるのは、いつもそうだ。
「――自分が、生きてるのか…死んでいるのか…分からなくなってました。所々、記憶が無くて……自分がどうやって生きているのかも、曖昧で怖い」
微笑みながら、ぽつり、ぽつりと彼女は呟いていく。
「どうして、と原因は今も分からないけど…ずっと、薬を飲まなくて良くなるなら……その方がいい」
今飲んでいる薬も彼女の症状に合わせて処方されている。間違ってはいない。ただ、症状の根本的な原因が『死んで甦った代償』という、薬ではどうしようのないことだった。ならば、取るべき行動は一つだ。
彼女は顔を上げた。
「みんなを、頼らせてください。――お願いします。」
頭を下げる彼女に、津田はニカッと笑った。
「任せろよ!その為に、お前のところに来たんだからさ!」
力強く、安心できる言葉だ。吉田も店長も、お福さんも津田の言葉に笑みを浮かべている。暖かい空気に彼女は安心して、微笑んだ。
「ありがとう」
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