『たわしのわたし』

やましん(テンパー)

『たわしのわたし』


 みなさん、こんにちは。


 わたしは、たわしです。


 長らく、やましんちの台所で働いていました。


 

 さて、地球支配の妄想にかられた、世界十大王たちは、あるとき、一斉に、まわりの国々を襲いました。


 それで、世界中が戦争になり、たわしのわたしには、わけのわからないことになりましたのです。


 食糧が無くなったので、やましんさんが、たわしのわたしを使うことも無くなりました。


 あるばん、やましんさんは、ふらりふらりと、くまさんを連れて出かけましたが、そのまま、帰ってこなくなりました。



 あまりに帰ってこないので、たわしのわたしは、探しにゆくことにしました。


 ころころと、荒れ果てた町を転がりましたが、なかなか、見つかりません。


 やがて、大きな川に、ぶつかりました。


 『こいつは、こまった、たわし。橋は、壊れてるし。』


 すると、川上から、でかい洗面器さんが流れてきて、言うのです。


 『おや、たわしさん、渡りたいのかい? 渡してあげよう。かわりに、ちょっと中身を拭いてくれ。』


 洗面器さんは、かなり汚れていたので、ごろごろ、きれいにしてやりました。

  

 『ありがとう。じゃ、行くね。』


 洗面器さんは、苦労しながら、川を渡してくれました。


 『さあ、ついたよ。』


 洗面器さんが、くるりと回転しましたら、たわしのわたしは、川岸に落ちました。


 『じゃ、元気でね。おいらは、海に行くんだ。それが、夢なんだ。』


 『ああ。気をつけてね。洗面器さん。』


 『まあ、底が抜けない限り、ダイジョブだ。』


 洗面器さんは、くやくやと揺れながら、川下に向かって、去って行きました。



 たわしのわたしは、草むらをさ迷いました。


 ふつか、みっか、さ迷いました。


 そうして、見つけたのです。


 人間の骸骨です。


 服をみると、見覚えがありました。


 やましんさんです。


 くまさんも、抱っこしています。


 どうやって、川を渡ったのでしょう?


 『やあやあ。まなごみだあ。なまごみだあ。たわしたわしたわし。なまごみだあ。』


 たわしのわたしの旅は、あっさりと、終わりました。


 たわしのわたしは、ここで、やましんさん、くまさんと、いっしょに眠ることにしたのです。



 長い時間、太陽さんは出ませんでした。


 核の冬とよばれます。


 しかし、やがて、ついに、太陽さんは姿を現したのです。


 

 『やれやれ。やっと、晴れたか。あや、君たちなにしているのね?』


 太陽さんが呼び掛けたので、ぼくは目を覚ましました。


 『ああ、太陽さん。じつは、たわしたわし………なのです。』


 たわしのわたしは、戦争からいままでのことを話しました。


 『そうか。それは、わるかったなあ。ぼくが、さきに、地球を焼いてしまうべきだった。そうしたら、多少はましだったろう。少なくとも、殺しあいは避けられた。可愛そうだから、きみたちは、空にあげて、星座にしてあげよう。』



 それが、やましん座、くまさん座、たわしのわたし座なのです。


 


    🍭🍭🍭🍭🍭🍭🍭🍭🍭🍭🍭



ごきプラネタリウムのおねえさん。


 『はい。これで、今日はおしまいですごき。みなごきさん、今夜晴れていたら、台所でお食事するまえに、夜空を見上げてみましょう。ごき。』



ごきの子供たち


 『はあい。ごき❗』




 そのばん、ごきの子供たちは、台所で倒れているやましんを発見したのである。



 『やはり、ほんとうだったんだ。』




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 これは、近未来空想的物語です。







 


 

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『たわしのわたし』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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