日常6

『もう夕方か。』

今週は本当に疲れた。

仕事でというより拓と愛に気を遣うことに精神的に疲弊した。

なぜ俺が二人に気を遣わなければならないのか?この状況は一体何なんだ?

いっそ全て拓に話せたら楽になるかも知れない。

そんなこと出来ないことは自分が一番わかってる。

この状況に甘んじている自分が一層惨めに思えてきた。


『夕飯、、、どうすっかな。』

今日は休日だ。いつも通りの休日。いやいつもより悪い休日か。

二人のことを考えて何も手につかないし食事もとっていない。

ああ、何もしていないのはいつものことか。


『拓と愛は何してたんだろ。』

何をしていたか、だあ?

そんなの決まってる。デートだ。大人の男と女が休日に一緒に街へ出掛ける。デート以外なことがあるか?

別れ際を見た。では、その日は何もしていないだろう。その日は。

では今日は?今は?

気が狂いそうだ。


『とりあえず飯でも買ってくるか。』

こんなにどうしようもない状況でも腹は減っていた。仕方がない、生理現象だ。

コンビニにでも行こうとテーブルに置いたスマホに手を伸ばした時、ふとあの日あの男に渡された名刺が目に入った。


『"~あなたの人生お売りください~ 輪廻堂"・・・?』

名刺には胡散臭いキャッチコピーと店名が印刷されていた。

バカバカしいと思うのと同時にあの男が別れ際に放った言葉が脳裏に蘇ってきた。

”損はさせねーから”

どういう意味だろう。ただの古本屋の店員であろうあの男のどこからそんな自信に溢れた言葉が出てくるんだろう。誇大広告にもなり得そうなキャッチコピーと相まって無性に気になってきた。

"もっとしんどくなったら同じ時間にまた来てくれよ"

同じ時間、、、てことは深夜に来いってことか。

幸い今週は珍しく二連休だ。終電が無くなってもタクシーで帰るかネカフェに泊まれば大丈夫だ。週明けの仕事にも支障は無い。


『・・・行ってみるか。』

俺はアパートを出た。

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