日常3
『ああ、終わんねぇ。』
『おや、今日も終電かな、廻くん。』
『うっせ、お前もだろ。』
『なはは、一緒に頑張ろうな。』
『わたしは一足先にお暇させて頂きますわね。』
『愛、裏切ったな!』
『先輩達と違って、わたくしデキる女ですの。』
『つっても、もう22:00過ぎてるけどな。』
『うわーん!定時に帰りたいよー!!』
『泣くなわめくな。鬱陶しい。』
『少しウザったいぐらいの方が後輩は可愛いと思いません?』
『あーそーだねー。』
『あー!もう廻先輩からも何とか言ってやってくださいよー。』
『はは。二人とも仕事のし過ぎでおかしくなってんぞ。』
『二人?三人の間違いだろ。』
『そりゃそうか。』
深夜のオフィスでの謎テンションは社畜あるあるだ。
『んじゃあな、愛。帰り道気を付けて。』
『!!』
『?・・・何だよ?』
『拓先輩の優しさにキュンとしちゃいました。』
『あーはいはい、先輩をからかわない。お疲れ。』
『お疲れさまでした~。』
『お疲れー。』
愛も最近は遅くまで残っている。
今日は22:00なので早く帰れたようだ。
『なあ、何で俺らこんなに仕事してんの?』
『仕事量多過ぎだよな、人手不足ってやつじゃね。』
『もうちょっと上が仕事減らしてくれたらなあ。』
『無理じゃね。あの人たちも業務効率化だの業務削減だの考えられるほどの時間が無いでしょ。』
『それもそうか。嫌なら転職しろってことだわな。』
深夜のオフィスだ、自然と会話は会社への不平不満になる。
最近はよくSNSやテレビで転職の広告を目にするようになったし、ひと昔前に比べたら転職しやすい社会なんだろう。頑張ればもっと良い条件の企業に転職できるかも知れない。
でも毎日終電で帰っている俺に転職活動している時間なんてあるのか?そもそも、俺みたいなスペックの人材を採用してくれる会社があるとは到底思えない。
それに比べて拓は引手数多なんだろうな。だからそんなに口調が明るいのか。もしかして、もう転職活動を始めている、、、いや、もう転職先が決まっているのかも知れない。
『にしても、拓の案件っていつも拓しか残ってないよな。他に作業振れるメンバーいないの?』
『ああ、予算が足りなかったらしくて人が足りないんだわ。
メンバーにはそれぞれの仕事があるから、足りない分に手が回せるのは俺みたいな暇人ってわけ。』
『それって拓の責任じゃないじゃん。メンバーは、、、増やしてもらえるわけないか。』
『ま、あと3か月で山は越えるし、何とかなるでしょ。』
噂には聞いていたが、拓が配属されている案件は文字通りの人手不足で結構まずい状況らしい。
それでも拓は諦めず、こうして2~3人分の仕事を1人でこなしているのだ。深夜で意識も朦朧としてきているためか、彼が完璧なAIロボットのようにも見えてきた。
『今22:00回ったところだから、あと2時間は作業できるな。』
『そんなに仕事出来るのか!これからが本番だな。』
『・・・拓ってタフだよな。』
『廻もな。』
終電コースも慣れてしまえば日常だ。どうということはない。
今日も明日も明後日も同じような日々が続いていくだろう。
仕方ない。人生なんてこんなもんだ。
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