第20話 新たな舞台、変わらぬ想い

時は流れ、美織学は高校生として新たなステージに足を踏み入れていた。一方、るんはラジオのパーソナリティーとして、多くの人々に声を届ける仕事に情熱を注いでいた。二人はそれぞれの道を歩みながらも、不器用ながら前に進もうとしていた。


高校に入学してからの学は、美術部に入部し、絵画に対するこだわりをさらに深めていった。彼の作品は、顧問をはじめとする周囲からも高い評価を受け、「すごい!」という声が常に彼を取り囲んでいた。学の絵には、彼の内面の葛藤や深い感情が色濃く反映されており、それが彼の作品に独特の魅力を与えていた。


しかし、学の社交面での苦手意識は相変わらずで、友達付き合いは依然として難しいものがあった。彼はしばしば一人でいる時間を選び、過去の記憶やトラウマ、ミジンコだった頃の記憶など、心に秘めた悩みを抱え込んでいた。そうした内面の葛藤は、時に彼を塞ぎ込ませることもあった。


一方で、るんはラジオを通じて、自分の言葉で多くの人々に勇気や癒しを届けることに喜びを感じていた。彼女自身も過去に苦悩を経験してきたが、その経験を力に変えて他人に寄り添う仕事を見つけたことで、自分自身も前を向いて歩いていくことができていた。


学とるんは、互いに異なる道を歩んでいるものの、時折連絡を取り合い、互いの成長や変化を喜び合う関係を保っていた。学は、るんのラジオ番組を聞きながら、彼女が発する言葉に励まされることもあった。


学の日々は、時に孤独や苦悩に満ちていたが、彼の心の中には変わらぬ想いがあった。それは、絵を通じて自分自身を表現し続けること、そしていつか自分の内面と向き合い、過去の記憶やトラウマを乗り越えていくことへの決意だった。高校という新たな舞台の上で、学は自分だけの色を塗り続けていく。

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