弁護士

弁護士になってもう何年になるだろうか。


昔は結構稼いだもんだ。


世間的には良くない意見なのだろうが、忙しかった時は楽しかった。


弁護しなくていいならそれまでなのだけれど、その時の俺はヒーロー気分で生き生きしていた。


無罪を勝ち取ったことは何回もある。その時の依頼人の顔は全員覚えている。


みんな涙を流す。そりゃあやってもいない罪を着せられているんだ。


いっそ罪を認めてしまった方がいいのではないかと諦めかける人も多かった。


罪を言い渡されてから刑が下されるので、どうせ裁判に負けてしまうのなら早い方がいいと思う人もいる。


だが冤罪は私が許さない。存在しない罪は着せるわけにはいかない。


冤罪を晴らすのは簡単なことじゃあない。悪魔の証明に証拠があればと何度思ったことか。


だが、それができるのが私なのだ。


弁護士はあくまで弁護士。

正義の味方でも悪の味方でもない。


依頼人の味方。


そういうもんだ。


悪い人の味方をすることだってある。だが公平さを欠いた罪を着せられぬよう、私たちが味方をするのだ。


その人たちの権利を最大限活かし、正義にのっとり裁いてもらう。


こうして安全な国ができる。


今ではすっかり安全になってしまった。


昔ほど腕を振るうことは少なくなった。


今では男女関係の裁判が多いな。

おかげで去年の年収はサラリーマンの平均年収より少ない。


そろそろ副業、いや転職を考えてもいいかもしれない。


私にはトラブルになるような相手はいない。


悲しいもんだ。


低い給料に、孤独。


毎食、体に心配なコンビニ弁当。


今日もレジに商品を置き、店員と顔を合わせる。


毎日見る顔。綺麗な女子大生。おそらく近くの美術大学の生徒。

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