つめきり

奇怪人

つめきり

 パチン


 パチン


 パチン



 真っ暗な部屋で爪を切る音



 パチン


 パチン


 パチン



 真夜中、目が覚めるとリビングで人の気配

 旦那は横で気持ちよさそうに寝ていて起きそうにはない。



 パチン


 パチン


 パチン


 なんだろうと覗きに行くと

 外から差し込む街灯の光の中、電灯もつけずに小さな人影がうずくまっている



「あおい、なにしてるの?」

 娘に声をける


「あ、まま、あした、あおいちゃん、ほいくえんでつめのおしらべがあるから、つめきってもらってたの」


 そう言って、まっくらな部屋の中、私に答える娘。


「きってもらってたの?」

「ふぁー、ままーねむいの、だっこ!」

 立ち上がり抱きついてくる娘


「あ、うん。ねんねしようね。」

「おふとんまでだっこー」

 娘は眠そうだ。というか、だきついてきて間もなく寝息を立て始めてしまった。


 指先で娘の指を触るときれいに切りそろえてあった

 自分で切ったの?

 ?が飛び交い


 薄暗がりの娘が座っていたところを見やると、去年死んだ祖母の形見のニッパー型の爪切りと、つめがのっているであろう紙が置いてある




 3歳児がこのつめきりで?


 悪寒に襲われたわたしは、娘を抱きかかえたままと一目散に寝室に逃げ込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る