0010_女子校パラドクス
■アマネ
君、ちょっとクイズをしてみよう。
■シン
なんです、藪から棒に。
■アマネ
いいや、壁から釘だ。
■シン
で、どんなクイズなんですか?
■アマネ
では、ちょっと状況設定をしよう。
舞台は女子校だ。
主人公の女の子は、入学式を終えたばかりで緊張している。
■アマネ
教室を見回してみれば、当然だが同級生達は皆女性ばかり。
そこで主人公の女の子は、ぼんやりとこう思った。
当たり前だけど皆女性ばかりだな、と。
■シン
ふむふむ。
■アマネ
さて、その状況を論理式で表してみるとこうなる。
主人公が述べている皆と云うのは、自分の周りに居る皆だから、取り敢えず自分は含まれていない。
私以外の生徒に対して、女性である、と述べているので、
「私以外の生徒→女性」
となる。
■アマネ
「→」は「ならば」と云う程度の意味だ。
この記号の左にあるものを「前件」と呼び、右にあるものを「後件」と呼ぶ。
「前件→後件」と云う形だな。
■シン
……まあ、確かに、
「私以外の生徒→女性」
と云う形になりますかね。
■アマネ
さて、逆命題や裏命題は、元命題と真偽が一致するとは限らないと云う話は知っていたかな。
■シン
はい、一応。
■アマネ
では確認してみよう。
逆命題は、→の左右を入れ替えたようなものの事で、今回で云えば、
「女性→私以外の生徒」
となる。
これは正しいかな?
■シン
いえ、私自身だって女性なんだから、女性と云えば私以外、とは云えないですね。
■アマネ
うむ。
では、裏命題はどうだろう。
これは、→の左右とも、否定して述べたものになる。
■アマネ
従って、「私以外の生徒でない生徒→女性でない」となる。
私以外の生徒でない生徒と云うのはつまり私の事なので、
「私→女性でない」
となる。
これは正しいかな?
■シン
いえ、これもおかしいですね。
私だって女性なのだから。
■アマネ
うむ。
こんなように、元命題とその逆や裏は、真偽が一致するとは限らない。
さて、もう一つあるのだが、判るかな?
■シン
対偶命題ですよね。
これは、元命題と真偽が必ず一致したはずです。
■アマネ
うむ。
では、この命題の対偶命題を考えてみよう。
対偶とは、逆と裏を同時に行ったようなものなので、左右を入れ替え、更に否定する。
■アマネ
すると、
「私以外の生徒→女性」
と云う命題の対偶は、
「女性でない→私」
となるな。
■シン
はい。
……あれっ?
■アマネ
さて、この命題は正しいかな?
■シン
いえ……女性でないなら私だと云ってますけど、私だって女性なのだから、間違ってますね。
■アマネ
ところで、対偶命題と元命題は、真偽が一致するはずじゃなかったかな?
■シン
そう、ですね……。
学校では、そう習いました。
■アマネ
なんとこの命題、元命題と対偶命題の真偽が一致しない、珍しい例なのだよ。
どうだ、驚天動地であろう。
■シン
……ええ?
本当ですか?
■アマネ
ほう、私が嘘を吐いているとしたら、どこかに間違いがあると云うことだろうが、じゃあどこに間違いがある?
■アマネ
舞台は女子校で、登場人物は全員女性だ。
主人公の私も女性だが、自分以外の生徒について言及しているので、
「私以外の生徒→女性」
と云う命題は真のはずだ。
■アマネ
そしてその対偶命題は、
「女性でない→私」
であるが、
これはしかし変ではないかな?
何故なら私だって女性なのだから。
■シン
ええと……。
■アマネ
まあ、ちょっと考えてみてくれたまえ。
さて、一体どうなっているのかな?
※ゲーム本編で正しい答を入力すると先が読めます
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