第130話:魔法(魔導具)は偉大だ
「こちらが港の建設にご協力くださる職人さんです」
町に到着してすぐ、ゼブラ氏の自宅を訪ねた。
そう、この人、家を持ったんだ。
というか町長から直々に家を贈呈されている。
屋敷というほどじゃないが、夫婦二人暮らしにしてはデカすぎる家だ。
母屋の他に離れもある。
まぁ商いが軌道に乗れば従業員をたくさん雇うだろうし、これぐらいでもいいのかな?
実際、既に何人か住み込みで雇っているそうだし。
「結構大勢でやるんだね」
「これでも少ない方ですよ。来ていただいたのは専門の方だけなので、あとはこちらの町で人を募集するつもりです」
大工職人は二十人ほど。実際に港や大きな倉庫の建設経験のある人ばかりを集めたそうだ。
「それで、木材のほうは?」
「あぁ、大丈夫。ただ数がどうかなぁと思って。さすがに専門家じゃないから、どのくらい必要かさっぱりわからなくてさ」
「そうですか。オゼさん、わかりますかね?」
「んぁ、そうだなぁ。どのくれぇ必要かってのは、さすがに具体的にはわからねえな。まぁ必要最小限の施設を建てて、足りなければまた仕入れてもらうしかないか」
「だそうです」
そっかぁ。一応樫の丸太を一万五千本、松の方は一万八千本まで用意はしたんだけど。
ま、足りなくなったらまた成長させればいいか。
「丸太、さっそく出す? どこに置けばいいかな」
「町外れに作業場をお借りしました。いったんここで丸太の加工をして、海岸の方に作業用の小屋と寝泊まりする家を建てますので」
「了解」
大工さんと一緒に作業場へと移動して、樫と松の丸太を一本ずつ出した。
「この二種類の木を集めたんだけど、いいかな? 防水効果が高そうな木だったしさ」
「おぉ、立派じゃねえか。これで問題ねぇ」
「よかった。じゃ、邪魔にならない程度に出していくよ」
丸太をカットして板材とかにするんだろう。
ギコギコと切るスペースもいるし、とりあえず五十本ぐらいにしとこっと。
「丸太はまだまだあるんで」
「ありがとよ。とりあえずこんぐらいありゃ、あっちに作業場作って、寝床も建てられるさ」
けど板にカットするのに、結構時間がかかるだろうなぁ。
そういうの考えると、機械って偉大だよ。
「私もお手伝いできればいいのですが、さすがに均一なサイズに切るのは難しいですし」
「……いやいやルーシェさんや。普通、木は剣で斬る物じゃないですよ」
「え? そ、そうなんですか?」
そうなんですよ。
ここで見ていても仕方ないな。
木材の加工だけで何日かかるか……。
港の完成まで数年はかかるだ……ん?
お、おかしい。
丸太の向こう側に積まれて行ってるのは、板?
え?
「やっぱり専門の職人は違うわねぇ。凄い勢いで丸太が切られていくわよ」
「え?」
「まぁ本当ですね」
「え?」
丸太の前に立つ職人の手には、鎌のようなものが握られている。
鎌と違うのは、刃の両端に持ち手があるってこと。
なんかテレビで見たことある気はするけど、その刃を丸太に当てて横に移動するだけで、なぜか皮がぜーんぶペロっと捲れている。
いやなんで?
刃を当てた部分の皮が剥げるだけならわかる。
なんぜぐるっと一周、360度の皮が剥けるんだよ!
丸太をカットしている大工の手には、ノコギリが握られて――いや待って。あのノコギリ、刃がギザギザじゃない。包丁とか、むしろ剣じゃね?
その刃を丸太に当てて、これまたすぅーっと横移動するだけでスパっと……え?
「はっはっは。驚いてるようだな。ありゃ魔導具さ。作業効率をよくするためのな。風の魔法が付与されてんだよ」
「へ、へぇ。凄いですね」
こっちの世界じゃ、魔法が偉大……だった。
これなら思ったより早く港も完成しそうだ。
『船が停泊できる海岸ねぇ』
アスたちが神殿見学に飽きて戻ってきたところで、海へと移動した。
港をどこに作るか、実はまだ決めていないという。
というのも、クラーケンがいるからだ。
クラーケンの許可なしに、勝手に作る訳にはいかない――と町長も言って、でもクラーケンに話しをするのはちょっと怖い。
だから俺たちに仲介役を頼んだってわけ。
「サンゴ礁は傷つけたくないし、そもそもこの辺りは浅瀬も多いだろ? 船が座礁するといけないしさ」
『あら、サンゴ礁のこと、気にかけてくれてるんだね。嬉しいじゃないのさぁ』
だってサンゴを傷つけたら、クラーケンの怒りを買って船が沈没させられるじゃん。
「町から近い方がいいけど、ちょっとぐらいなら離れたっていいんだ。この辺りの土は堅いし、馬車も走らせられるしさ」
『そうだねぇ、少し北に行くけどいい場所があるよ。海岸からすぐの所から深くなってるし、座礁もしにくいと思うね。けどその辺りにシーサーペントが出るから、気を付けなきゃねぇ』
シーサーペントって、海竜みたいなモンスターだっけ?
「クラちゃんさま、そのシーサーペントというのは、退治してもよろしいのですか?」
『ただのモンスターだし、別にいいわよ』
「ではユタカさん。退治しましょう!」
「食べられるのかしら?」
「海のお魚みたいな味だといいですねぇ」
君らそんなにモンスター肉が食べたいんですか!?
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本日・・・本日、
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といっても関東あたりだと一昨日から書店に並んでいたりしていますが。
そして地方では今日もまだ並ばなかったりしますが。
web版から削ったり追加したりと改稿もされておりますので
ぜひぜひ、お楽しみください><
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