朝の猛り
「……」
暖かい感覚がどこかにある。
下半身に何か蠢くようなものが。
腹を針が貫くような鋭い感覚があって、少しの辛さを感じた。
まるで何かが張り詰めているような、出たくても出られない感覚。
「……ニーニャ?」
起きると、彼女が俺のものを咥えていた。寝る直前にしていたのと同じように、俺の下履きをずり下ろして。
「何をして……」
「──んっ、おはようございます、主人様。今朝はお早いのですね……申し訳ありません。主人様のここが、どうしてもお辛そうになっていたので一度慰めようと──」
俺はその言葉に彼女の腕をとった。
「わっ──!」
そのまま強引に抱き寄せる。
「あっ、あの」
「ニーニャ……」
彼女が、俺が辛そうにしていたと説明するときに、静かに太ももに触れた手の仕草が。
筋を舐める彼女の舌使いが。
全部が、俺の脳髄を塗りつぶした。
「主人様──」
「ニーニャ、抱きたい」
俺は、ボロ布を着た彼女のローブをめくって、簡単に露わになる彼女の秘部に目が引き寄せられていた。
久しぶりに見る場所だ。挿れたときの感覚も知っている。とても心地がいい。
今入れたら、すごく気持ちがいいはずだ。男として満たされる。男して受け入れられる感覚なのだ。
「……良いですよ」
「ごめん」
俺は数日ぶりに彼女を犯した。
「ああっ」
声が思わず漏れてしまう。それほどに彼女のそこは気持ちが良かった。
ぬるぬる、ぐちょぐちょで、とにかく小さな何かがまとわりつくようで、俺が中に入れたままだと脈動している。
寝起きの頭をがんと殴りつけるような強烈な快感が、俺の下半身にぶつけられた。自分の目の色が変わるのを実感する。
まるで肉越しに誰かが握っているようだ。挿れたときの快感は格別で、抽送をすれば下半身がもぎ取られる感覚に陥る。
「はっ、はっ……!」
「ふっ、んっ……」
獣のように落ち着きもなく、彼女の肩やうなじに唇を寄せた。
気遣いも何もなく、耳や頬にキスをして、ただただ男として求める。
いつの間にか脱ぎ払われた理性がどうにか追いついてこようとするが、彼女の美しさを前にして完全に失われてしまった。
朝に突然なことをされて我を失ったのだろうか。寝ぼけていて理性のたがが緩んでいたのだろうか。
──どっちでもいい。ニーニャが魅力的すぎるのが悪いのだ。そうだ、彼女のせいだ。
「ニーニャ、ニーニャ」
「ん……っ」
腰をぶつけて、彼女に直上的に思いを寄せる。
押し付けるだけの接吻をして、息をする合間も与えずに蹂躙した。
その度に陰茎に歓喜しそうな快楽が押し寄せる。もう既に一度射精しているのに収まらない。
最後まで、最後の一滴まで注ぎ込みたい。
「したい、したいっ」
「主人様……っ」
ニーニャが少し苦しそうにしている。それさえも今の俺には興奮に火をくべるだけだった。
そんな顔をしないでくれ。もっといじめたくなってしまう。
「ひゃぁ……!」
「ん、ちゅる、ちゅり、ちゅる」
「主人様、主人様……!」
ニーニャは恥ずかしそうに身を捩らせていた。
彼女の脇を貪る。腰を振って、肉の快楽を求めて、手を握って心の充足を求める。
繋がりたい、彼女をもっと知りたい。心の奥深くまで触れたい。
「んん……!」
「ニーニャ、好きだ」
バカみたいな甘言を垂れる。彼女の耳に囁いて、これで喜んでくれるかなと思った。
バカだ。
「好きだ、可愛い、何度でも出したい」
「んっ……良いですよ。何度でも、お受けします」
「ニーニャっ……!」
お受けする、という言葉につれない感じを覚えて、目の前が真っ白になった。
射精した。何度も何度も吐精した。それでも俺は彼女を何度も求めた。
この子を俺のものにしたい。自分から求めて欲しい。求めたい。
ぎゅぅぅ、と締まる。その刺激に、俺の悲鳴をあげた。
「あっ……あぁっ……」
幾たびにも分けて射精する。これじゃ足りない、もっとだ。もっと寄越せ。
「うぐっ、あっ、あっ……」
「……主人様」
「俺は……何を」
少々収まりがついて、だんだんと冷静になってくる。
──俺は何をした?
彼女をもう抱かないと決めたんじゃなかったのか?
どうしてこんなことをしている?
よしんばするにしても、なんでこんな独りよがりなやり方になっている?
始まってから一度も彼女を気遣っていない。
それどころか自分のことしか見ていなかった。
自分が気持ちよくなることしか。
自分が満たされることしか。
「俺は、俺は……」
「っ、主人様──」
強引に、唇を塞がれる。
ニーニャだ。またニーニャが俺を埋めてくれた。
それでも今度の心の穴は埋まらない。
「……」
「主人様、私を見て」
「っ……」
「……シて」
「……」
その言葉に、もう一度俺の理性はかき消えた。
「あっ、あっ……」
「っ……ニーニャ、ごめん……っ」
彼女の臀部に腰を打ちつける。自動的に抽送が行われる。俺の下半身にはとめどもなく動くたびに快楽が送られる。
彼女の心地のいい太ももに自分の鼠蹊部を押し付けた。柔らかな彼女の柔肉は何度も何度も震えている。
「あっ、主人様、主人様……!」
「ニーニャ、すまん……」
「っ……!」
せめて負担をかけまいとスムーズに挿入していると、彼女の膝が俺の腰を捉えて、そのままぐりぐりと押しつけられた。
俺の下腹部に、彼女のふっくらとした性器が押し付けられる。密着するように中が締まって、俺はもう一度射精した。
「あぁっ、あぁっ」
「主人様、もっと、もっとです」
「ニーニャ、もう……」
「嫌です。もっとしてください」
彼女はなぜか、涙を抱えていた。
「……ごめん」
その顔を見て止めることは許されないなと思い至る。
俺の方も、押し付けられたそこの感触に本能が抑えきれない。
「女性をベッドに押し倒しておいて、ごめんなんて言ってはいけません……!」
「……すまん」
「言い方の問題じゃありません!」
「……じゃあ、何て言えばいいんだ」
俺たちは腰を打ちつけながら会話していた。
今度はニーニャの方も腰を振って、俺のことを搾り取ろうとしてきた。
勝手に動かれて、俺の陰茎に作為的な快楽が注がれる。
それに腰が砕けそうだった。
「あぁっ……」
「ありがとうもダメです……! 気持ちいいか聞くのもダメです!」
「あぁっ、じゃあ、どう言えば……」
情けない声で、快感に耐えながら、桃色に塗りつぶされそうな頭で問いかける。
「──嬉しい、と気持ちいい以外に言っちゃダメです」
「っ……」
彼女が俺の頬を両手で潰して、目を背けられないように見つめてきた。
その瞳にやっぱり目を奪われる。ああ、俺はニーニャが好きなんだ……
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