第6話 空手形だろうと頑張ってツッコむしかない
『そ、それはどういうこと?』
「男は女とセックスってことをして子孫を作るんでしょう。そして男はそれが大好きだと伝承にあるんだけど、私が相手じゃダメ?」
エリカ嬢はマイクロビキニを少しずらして、ちいさな膨らみの先っぽの淡い桜色をほんのちょっとだけ俺に見せた。ちょっと吊り目だが顔立ちは整っているし、黒髪で小悪魔っぽい外見の細身のエリカは、俺の世界にいれば絶対に凄い人気者になるはずだ。記憶が無いのでそう思うだけだが。
『いやいや、めちゃくちゃ嬉しいよ。エリカ嬢、すごいかわいいし! でも、俺の身体を召喚することなんてできるの?』
「そんなこと、私だってしてみたいわよ」
マリーさんがエリカ嬢の髪を引っ張る。彼女は万人受けする美女で、おっぱいのバランスも素晴らしい。グラビアアイドルみたいだ。
ビルス姉さんは厳しい目を2人に向け、険しい声を作った。
「そんなことをしたら子どもができるんだぞ。分かっているのか」
「子どもを授かるのは女神の教えに適ってます! しかも数百年ぶりに誕生する新たな人間ですよ。素晴らしいではないですか」
「だが、死ぬぞ」
その意味は俺には分からない。子どもを産むと死ぬということだろうか。
「それが自然な姿だと女神の教えにあります。神聖魔法戦士我らがそれを率先することで新しい世界ができると信じます」
マリーさんが俺の耳元で囁く。
「絶対、君の身体を召喚してみせるから、そのときはエリカより先にエッチしてね! 絶対に妊娠してみせるから」
もう信じられないパワーワード連発だが、このリビドーをどこにやれば良いのだろう。とてもこの神像のボディでセックスができるはずもない。もしこのリビドーを出せば、きっとあの最初の一撃級の砲撃に――ああ、あれってそういうことだったのか、と今更納得する俺。
「神聖王のお心次第だな。神託を受けることになるだろうが――まあ、誰か1人が生きて帰れば良いか」
ビルス姉さんがふっと笑う。
「お許しが得られて、生きて帰ったのが私だったら、私を相手にしておくれよ」
ビルス姉さんの温かさが彼女の股間から伝わってくる。
彼女たちは死ぬ気で前線をかき回すつもりだが、俺をその神聖王とやらのところに送り届けたいのもマストであるらしい。どっちかを優先しないとどっちもダメになりそうだが、まだ冷静に計画を練ってもいない。そのうち方向が定まるだろう。その前になんとかしたいが。
「そんなわけでデーモン族とのコンタクトは禁ずる」
思考が読まれているのは召喚したのがビルス姉さんだからだろうか。読まれていないと思いたい。そんなプレイはいやだ。一応、応えておく。
『ま、向こうが接触してきたらどうするかは分からんが』
「えーっ! 助けてくれないの? 従神のボディでもキスならしてあげられるよ! 大概の従神には唇ついているもんね!」
エリカ嬢は性的な好奇心が旺盛のようだ。
そして俺がフェイスガードの奥をシステム上で確認すると人間と同型の口が造作されていることが分かった。何のためについているかは知らないが、確かにキスはできそうだ。エリカ嬢とのキスを想像すると――また暴走しそうだ。
『助けるさ、助けるけどね』
「そろそろ地上だよ。回り込まれている気配はない。大丈夫」
エリカ嬢が言うとおり、地下空洞と裂け目がなくなり、天井が低くなってきた。進路先の天井に傾斜をもった地下通路がぽっかりと空き、更に先に続いているのがわかった。頭部のライトで先を照らしながら進むと、遠くに光が見えた。外は昼間の時間帯らしい。
さて、外はどんな世界なのか。俺の知っている世界とは違うことだけは分かる。
まずは追っ手を完全に振り切るのが彼女たちの目標だろう。この世界のことは少しずつ、不審がられないように聞くしかない。下手に聞くとデーモン族に寝返るのかと思われてしまいかねないからだ。
俺は光に向かって滑空を続け、ツッコんでいく。
「チューしたら元気出る?」
エリカ嬢が突然言いだし、俺は答えた。
『エネルギーが暴発しそうだけどね』
「キス禁止です! 絶対禁止! 危険すぎ!」
無情にもビルス姉さんはエリカ嬢にそう命じたのだった。
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