第2話 おっぱいと尻の果てしなき闘争

 背後の通路は俺の砲撃により崩落し、しばらく追撃はないように思われた。しかし3人の巨乳、美乳、ちっぱいの美少女が警戒を怠ることはない。


「1人の手の内は分かったが、まだ2人いるからな」


 金髪巨乳が他の2人に注意を促し、赤髪美乳が力強く頷く。


「わかっています、姉様」


「姉様、アクティブ打ってもいいですか?」


 黒髪ちっぱいが金髪巨乳の姉様に聞く。


「先手を取りたい。やってくれ。私とマリーは従神騎のチャージをする」


 赤髪の美乳の名前はマリーと言うらしい。


「なんだ――起動しているのか。さては聞こえているな、答えろ、従神騎」


『会話に加わるタイミングを計っていただけだ。何せ非常事態のようだから邪魔もできんしな』


「なんだ、こいつ、人間みたいな話しぶりだ」


 マリーは美乳をぶるんと震わせて俺の目の前に立ち、訝しげに俺の胸の部分にある紅玉に指をつけた。侵入される感覚。マリーの力が全身をスキャンしていくのが分かる。


「ボディに不都合はない様子。ただ、入った魂が異世界とまだ繋がってる」


「神聖力に溢れた魂を召喚したつもりだったのだが、それが異世界と繋がっているとは女神の神殿故のことか」


 金髪巨乳の姉様は首を傾げた。そう言うからにはつまり、彼女が俺を呼んだ張本人らしい。


すだまの類いですね」


 黒髪ちっぱいツインテールが言った。黒髪ちっぱいは小ささをカバーするためなのか、もう隠れているのは乳輪付近だけみたいなマイクロビキニだ。しかし俺はおっぱいの大小は関係ない。美しければそれでいい。いや、おっぱいは美しさ優先を自負している。


「おい、従神に入っているお前。名前を何という?」


 金髪巨乳のお姉様が俺に聞いてきた。


『――思い出せない』


「中途半端に召喚されているようですね。本体はどうなっているのか」


「動いている限り、我々には関係ないな。では名前をつけてやる。『コール』だ」


了解しましたラーサ


 俺自身とは別のこの身体を管理する自律機構が答えた。


『状況説明を要求する』


 これは自律機構と俺自身の希望が一致した。


「自律機構がある以上、当然か」


 金髪巨乳の姉様はその豊満な胸を俺の胸とぴったり合わせる。巨大なら巨大でフニャフニャの柔らかさかと思ったらそうではない。やはりすさまじい弾力があり、押しつけると反動がある。すばらしいおっぱいだ。


 そして胸の紅玉を通して、概略が伝わってきた。


 この世界は女神によって創造されたこと。人型知的生命体はおっぱいから神聖力を導き出すヒト族とお尻から魔力を引き出すデーモン族に分かれ、長い戦争を戦っていること。膠着した戦線を打開すべく、金髪巨乳の姉様ことビルスを隊長に、赤髪美乳のマリー、黒髪ちっぱいのエリカの神聖魔法戦士のスリーマンセルが大迂回して敵陣深くまで陽動に侵入した。しかしデーモン族の魔法戦士のスリーマンセルに追跡されることになった。敵の攻撃手段が分からず、苦戦していたが、長らくデーモン族の領土内となっていた女神の神殿の遺跡を発見、遺跡内部で、女神が創造したと伝えられる従神の1体を発見し、起動に成功、そして敵が召喚した魔物の一団を焼き払い、通路を崩壊させたというわけだった。


『おっぱいと尻』


「正しく入力できたようだな」

 

 ビルス姉さんは満足げに頷き、その胸を離した。


『何故だ、おっぱいと尻は等しく尊い! 何故争わねばならぬのか!』


「神聖力と魔力の根源が同じ女神のおっぱいと尻故に従神がそう言うのは分かる。しかし我らはおっぱいの力で生きていかなければならない」


 間違っていると俺は思う。しかし長い間おっぱいと尻に別れて戦争してきたこの世界の住人にどうこう言ったところで急に考えを変えるはずがない。


「姉様。時間がありません。敵のスリーマンセルは崩落した通路に突貫するようです」


 ちっぱいエリカ嬢が、ビルス姉さんに警告をする。彼女は索敵が得意なようだ。


「やっかいな術を持ってるな! ひとまず退くぞ。コール、頼む」


『ラーサ』


 ビルスのオーダーで俺の身体はまた変形し、巨大なスクーターの形状になる。赤髪美乳のマリーが俺にまたがり、胸を押しつけるとエネルギーに満ちるのが分かる。


 しかしそれと同時に、その彼女の股間からも力を感じる。


 やはりそうか、と俺は声には出さずに納得する。


 スクーターは浮き上がり、崩落した通路とは別方向に伸びる通路に向けて疾走を始めたのだった。

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