山奥の幽霊【怪談】

Grisly

山奥の幽霊

私が、ある山奥の、

友達の家に泊まった時の話です。


余り人のよりつく場所ではありませんが、

星が綺麗で、自然豊かな生活ができるので、

大成功し、都会の乾燥を避け、

友達はそこに移り住んでいました。


昔話に花が咲き、一通り遊んだ後。




夜中、眠りにつこうとすると、

布団の下の方から、

いわゆる落武者のような、

何やら、みすぼらしい着物を着た、

髪の長い男が出て来た。


彼は私の足を掴み、

1時間くらい、

ぎゅーっと締め付け、帰って行ったのです。


決して痛くはありませんでしたが。

私は、言いようの無い恐怖を感じました。




次の日、その事を友達に話すと、

不思議そうな顔をされました。


彼はもう、5年間もその家に住んでいますが、

そんな経験をした事がないそうです。


しかも、ここが古戦場であった等と言う

話もなく、その正体すら謎のまま。


しかし、そのような物が見えた以上、

いつ被害が出るとも限らない。

放っておくわけにもいかない。




そこで、霊媒師を呼び出しました。


彼は、何やら怪しい儀式をした後、

私達の質問に答えてくれました。


「ここは古戦場でもない。

 したがって、貴方が見たものは落武者や、

 そう言う類のものではないのです。」


「やはり違うらしい。

 しかし、

 私は言いようの無い恐怖を感じました。


 彼の正体は一体。」


「良いですか。

 戦国時代にせよ、江戸時代にせよ

 最も過酷だったのは武士では無い。


 確かに彼等は、凄まじい戦いを繰り広げ、

 死んでいったかもしれないが、


 歴史に名を残し、存在を知られ、

 供養もきちんとしてもらえるのです。




 しかし、大部分の農民や、それ以外の人達。

 

 言われの無い差別に苦しみ、

 飢饉や、生活苦、重税に追われ、

 斬り捨てられても文句は言えない。


 彼等は決して歴史に残らないが、

 恨みが強いとしたら

 そちらの方なのですよ。


 まぁ、だからと言って

 それをどうこうすることもできないし、

 それ以外の生活を知らない者達。

 

 基本的には、

 そこまで腹を立てることもない。

 大した害は無いのでしょうがね。」



私は分かってしまいました。

なので、

私の友達には見えず、私だけに見えたのです。


そして、それこそが

言いようの無い恐怖の正体…



 


 

 


 



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