社会不適合者の俺に恋愛なんて……嘘です、やっぱりしてみたいです
ナイン
第1話 入学式をバックレたせいで……
入学式をサボった上に、その後まるまる一週間の不登校をかました。
そのせいで現在、俺こと
「本当に風邪と腹痛、あとは……突き指が重なったんですか?」
目の前のゆるふわパーマを掛けたフワフワ系の女教師、名前は……なんだっけ?
まあ、なんでもいっか。
ゆるふわ教師は俺を怪しむような目で見つめている。
「ホントデスヨー」
バレバレな嘘をついてる自覚があるせいで、棒読みになってしまった。
いや、だって小学校と中学合わせての約五年間、保健室に特別登校してたんだぜ俺?
そんな俺がいきなりクラスにちゃんと登校出来る訳ねえだろ。
そりゃ億劫になって一週間も休んじまうよ。
「嘘はダメですよ、色即くん! あと手!」
俺がポケットに手を突っ込んでるのが気に入らないのか、注意された。
朝から説教とか不機嫌すぎだろ、この女。
「先生って、今日生理?」
「は!?」
おっと、余計に怒らせてしまったようだ。
そんぐらいで怒んなよ、沸点低過ぎだろ。
「貴方は怒られてる自覚あるんですか!? 大体さっきから、その失礼な態度はなんなんですか!」
朝から呼び出されたら誰だって失礼な態度になるだろ。社会人のクセにそんなのも分かんねのかよ、このアホ教師は。
いや、教師なんてずっと学校しか経験してこなかった人種か。
前言撤回、社会人じゃなくて社会人モドキだわ教師って。
「もういい、やっぱ全日制なんて俺には無理だったんだよ。十月から通信に転入するから、退学するわ」
もう話す事も無いので、職員室から出て行こうとしたが、ゆるふわ女教師が凄い勢いで目の前に回り込んできた。
おいおい、他の先生も見てんだろ。恥ずかしいわこの女。
「待って下さい、色即くん! 何でいきなり退学になるんですか!? 5日休んだ程度なら全然挽回できますから!」
違う違う、単位じゃない。俺にとって問題なのはクラスと言う悪しき旧体制だ。
学生が勉強するのは理解出来るが、今の時代全部リモート授業で良いだろ。なんでクラス登校が必要なんだ?
協調性を養う為?
集団行動を慣らす為?
実に下らない。そんなのは将来サラリーマンになる奴に必要な事であって、カードやらオモチャを転売して、そこそこ稼いでる俺には必要ない。
「はい、理由は言いましたよ。後日、親が退学手続きしに来るんでよろしく」
そもそも母親の全日制推しに屈したのが間違いだった。
なーにが、『アンタを通信制に行かせたら余計に社会不適合者になっちゃうでしょ』だ。家からリモートで授業を受けるだけで良いとか、やっぱ通信制最高だろ。
兎に角、もうこの学校とはおさらばしてやる!
「そんな悲しいこと言わないで下さい……」
女教師は悲しそうに言いながら帰ろうとする俺の掴む。
それを俺は乱雑に腕を振って引き離す。
「じゃあ全日制のメリットを教えてくれよ。魅力だと思えるメリットがあったら退学を見送ってやる」
そう言ってやると、目をキラキラさせながら語りだした。
「友情、恋愛、思い出、いわゆる青春ってやつです! 通信制だと青春濃度が低いって聞きますよ?」
当たり前だろ、通信なんて行くやつは俺みたいな訳ありが多い。
青春なんてのは、はなっから諦めてんだよ。
「友情は漫画で摂取可能。恋愛はSNSを使えば今の時代どうとでもなる。思い出はオンラインゲームで作ってるからモーマンタイ」
はい論破。
「本当にそう思ってます? SNSを使った恋愛はそんな簡単じゃないですよ?」
ムカつくなコイツ。反撃の一手を思いついたとばかりにニヤつきだしたぞ。
「…………18歳以上になればマッチングアプリだってあるし、余裕だろ」
「あれって恋愛強者のツールですよ? 青春を捨てようとしてる色即くんに使いこなせるとは、先生には到底思えないですね〜」
このアマ、ここぞとばかりに恋愛面を攻め立ててくるな。
日本が法治国家じゃなかったら、俺の右ストレートが炸裂してる所だ。
「青春と共に恋愛のイロハをこの学校で学ぶ、色即くんにとって結構なメリットだと思いますよ?」
クソッ、確かにメリットだ。
俺だって健全な男子。恋愛と言うより、セックスは死ぬまでにしてみたい。
このゆるふわ教師の言う通り、経験値を積まなかったら、将来マッチングアプリをハードモードでプレイする羽目になりそうだ。
俺は大きく溜息をついて、敗北宣言をする。
「…………クラスに行ってきます」
大人しくクラスに向かおうとしたら、背中越しに地獄へと突き落とされる。
「はい、素直で宜しい。それと色即くんには、ホームルームで自己紹介して貰いますからね」
やっぱ今からホームカミングしていいかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます