大災害プロジェクト!
ALT・オイラにソース・Aksya
第1章 運命の歯車編
第1話 日本政府の陰謀
注意! この小説はフィクションです。実在の人物、団体及び政府……特に実在の政府とは一切関係がありません。また、政治的な批判を行う目的で書かれているわけでもありません。あらかじめご了承ください。
□■□■
「日本政府の陰謀なんだよ!」
拳が木製の机に振り下ろされ、大きな音を発した。しかしそれは辺りのどんちゃん騒ぎに吸い込まれて消えていく。3人組は目を丸くしながら、目の前の青少年の言葉を反芻した。
「ニッ?」
「ポン?」
「セーフ?」
いかにも『荒くれ者』といった格好をした3人は、一様に首を傾げた。
「新種のモンスターか?」
「んな訳ねぇだろ! 俺の話ちゃんと聞いてた!?」
そんな言葉を受けた男達は顔を見合せ、興味なさげに手元の安酒を呷る。
「だから! 俺異世界から来たの! 地球の日本ってとこ! 分かる!?」
「何言ってんだ? 異世界なんてある訳ないだろ」
「ラノベの読みすぎだバカ」
「なんでラノベ知ってんだよ!? 中世ナーロッパだろここ!?」
笑い声と怒声が木霊するここは冒険者の酒場。王都の冒険者のほとんどが毎日来ては依頼を確認し、冒険に向かい、帰ってくる場所。学校ほどの広さがあり、従業員も数え切れないくらいいる。
「そもそも異世界があるってんならどうやってこっちの世界に来たんだよ」
「だから日本政府の陰謀なんだよそれが! 政府が口減らしのために国民を異世界に転移させてんの!」
「はっ! 陰謀論者め」
「なんだテメェやんのか!?」
鼻で笑われ、陰謀論者の烙印まで押されちゃあ、青少年も黙っていない。いくら心優しい彼でも許せないことはあるのだ。煽ってきた男には睨みを利かせつつ、他の2人に話を続ける。
「だから、俺以外にも転生者がいるはずなんだよ。だから俺みたいなことを言ってるやつがいたら俺に紹介してほしいんだ」
「それやって俺らにメリットあんの?」
「人助けが出来る」
「興味ねぇ~」
「俺に絡まれなくなる」
「それはアリだな」
「なんでだよ!? 寂しいだろ!?」
「自分から振っといて寂しくなるなテメェ!」
顔色をコロコロと変えながらテンション高めに話す青少年は、異世界からの来訪者であった。元は地球という星に住んでいたらしい。だが、そんなことを話しても大抵の人は取り合ってくれない。それは同じ冒険者である彼らも同じであった。
「そもそも、俺はまだお前が異世界人だって信じてないからな」
「ほーん。だったらお前ら、名前言ってみろよ」
「セブンス」
「ドイナー」
「ゴダルカン」
「俺の名前はヒラタ イヨウ! な、違和感あるだろ?」
「「「ないけど……?」」」
「なんでだよ!?」
こいつら正気じゃねぇ! とヒラタは地団駄を踏んだ。話の分からない奴らだ。これ以上は時間の無駄かもしれない。ヒラタは見切りをつけることにした。
「とにかく、俺みたいな転生者に出会ったらよろしく言っといてくれよ! じゃあな!」
「……なんだったんだあいつ?」
「さぁ?」
そんな言葉を背中で受け止めながら、ヒラタは冒険者ギルドを去った。時刻は夜。そろそろ宿に戻らなくてはならない。その前に、テイマーギルドに寄って相棒を回収しなくてはならない。
冒険者ギルドは冒険者という職業の人間がたむろするギルド。しかし冒険者ギルドに入り浸る人々は、皆が同じ趣味同じ思想を持つ訳ではない。もっと同じ趣味思想を持った人間とお近づきになりたい。そう考えた人々は、冒険者ギルド以外にもギルドを作った。戦士ギルド、魔術ギルド、裏社会ギルド、ダンシングギルドなどなど、多種多様だ。その中でもヒラタが所属するテイマーギルドはトップクラスに不人気なギルド。そもそもモンスターテイマー自体が不人気だから仕方ないのもあるが……。
「という訳で帰ったぞー!」
冒険者ギルドから歩くこと数分、王都の路地裏の隅にテイマーギルドはある。傾いた看板、消えかかった文字、穴だらけの扉、閑古鳥の鳴く酒場。何もかもが退廃的。
「遅いペン! どこで油売ってたペンか!?」
「油は売ってねぇよ! 今後のために必要な宣伝活動を野良の冒険者に片っ端からしてただけだよ!」
真ん丸で人の頭ほどの大きさのペンペン言ってる怪鳥が現れた。彼はヒラタの相棒のペン太。フクロウみたいな見た目で、白っぽい羽毛で覆われてる。抱き締めて寝ると暖かいが、これでも氷の攻撃を主体に戦うナイスガイである。
「あ、おかえりヒラタっち。収穫あった~?」
「いやぁ、それが全然なかったっすよ。やっぱ冒険者の情報網クソっすね」
そして彼女がテイマーギルドの受付嬢兼ギルドマスターのルーンさんである。なんと彼女はたった1人でテイマーギルドの事務やら管理やらをしているすごい人なのだ。
「あんまりそういうこと言うもんじゃないよ。こういうのは回り回って自分の利益に……なったら人生は楽なんだけどね~」
「いやぁ、ならなかったからルーンさんはこうして1人なんですもんね~」
「しばくぞ~」
テイマーギルドにはヒラタと、ヒラタのテイムモンスターのペン太しかいない。所属している人はもう少しばかり存在するのだが、普段からこの場所を頻繁に利用し、顔を出すのは本当に彼らだけなのだ。
「ヒラタっちはこれから宿?」
「そうっす。いやぁ、冒険者って辛いっすね~。宿代と飯代で1日の稼ぎが消えちまう」
「はっはっは。冒険者なんかになったのが運の尽きだよ。それが嫌ならマトモな職に就くんだね」
「戸籍がないから就職出来ないんだよ!」
ヒラタは俗に言う、異世界転生というヤツをしたっぽい。転生というより憑依の方が正しいかもしれないが。とにかく、彼はある日自室でカップ麺を啜っていたら魔法陣に吸い込まれて、目覚めると高校生くらいの肉体になっていたのだ。しかも体は細マッチョで、髪は燃えるような赤毛だ。赤毛組合があれば絶対に組員になれていたくらい赤毛だ。違和感しかない。そして当然そんな訳だから国籍がない。だから職に就けないのだ!
「ま、そりゃそうだよね~。冒険者になる人の大半が元奴隷だったり蛮族だったり出生不明だったりするし」
「そもそもなんでこの世界、就職に国籍が必要なんだよ。中世ナーロッパだろ。面倒な制度作りやがってよぉ。無能な働き者ってやつかぁ?」
「う~ん、ヒラタっちあんまSNSとかしない方が良いかもね!」
「それ弟にも言われたことある」
彼がこの世界に来て約2ヶ月、修行と冒険者稼業の傍らヒラタと同じような境遇の異世界転生者を探している。しかし全く成果はナシ。もしかしたら転生者は自分しかいないのかもしれないと最近思っている。
「はぁ。なんかルーンさんと話してると疲れるよ」
「あはは……こっちのセリフなんだけど?」
「よし帰るぞペン太!」
こうしてヒラタ達は普段泊まっている宿に帰る。銅貨5枚ほどを払って簡素なベッドにありつき、また明日を迎える。こんな生活がいつまで続くのかと憂鬱になることもあるが、それでも今日を生き抜くために必要なことなのだ。
そして翌日。
「ヒラタっち~、じゃじゃ~ん。イイモノ持ってきたよ~ん」
受付嬢のルーンさんが持ってきたのは……。
「オークの巣穴の攻略……? Bランク依頼じゃんこれ」
「そそ。まだDランクなお子ちゃまヒラタっちは普通なら受けられないんだけど、ウチの権限を使えばヒラタっちでも受けられるよ。どう?」
「どうってそんなの……受けるに決まってんじゃあないっすかぁ! 報酬が銀貨10枚っすよ! うっひょ~、バチクソテンション上がってきた」
オークの巣穴の攻略。それ自体は何の変哲もない依頼だった。だがそれが後に、ヒラタ イヨウの運命を大きく変えることになるとは、まだ誰も気づいていない……!
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