開拓者による、戦女神育成日記。

アルテマダッシュモーター

プロローグ

 ――いつだったかははっきりと覚えていない。ある時、世界中に謎の洞穴が出現し、中から異形の怪物が大量に溢れ出した。

 怪物達は街を我が物顔で蹂躙し、見慣れた街の風景も、命も、文字通り何もかもを奪い尽くして行った。

 この際の犠牲者は世界で総勢約5億人とも言われ、後に「第一次迷宮災害」と呼ばれることになる。


 それからというもの、世界中で軍を用いた謎の洞穴の調査が行われた。日本では自衛隊や一部の特殊部隊が派遣され調査を行った。

 分かったことは、洞穴の内部で怪物を撃破すると「ステータス」、「スキル」、「魔法」といった物の他に武器やポーション、怪物の体内にある「魔石」などと言ったものがランダムで手に入るということ。


 更に、ステータスには「職業」が付随しており、「剣士」であれば、「剣術」、「魔道士」であれば「火属性魔法」や「水属性魔法」と言ったように職業に関連した様々なスキルを手に入れることが出来る。


 これらの情報が判明すると、国は洞穴の呼称を「ダンジョン」と制定し早々に一般人を立ち入り禁止にしてしまった。

 だが既に一部の一般人はダンジョンに入りステータスを獲得してしまっていたため、その他の人間が権利の独占だと言って猛烈に反発した。一部では暴動にまで発展する始末となった。


 事態を重く見た国は考えを変え、「迷宮法」なる新しい法律を急遽制定。ダンジョン入場を資格制とする事でどうにか事なきを得た。あの時の総理大臣の土気色の顔は今でも忘れられない。


 それから現在に至るまで様々な発見があった訳だが、これ以上は長くなってしまうため一旦止めにするとしよう。

 ここからは、今俺が何をしているのかを話していこうと思う。


 ――おっと、自己紹介を忘れる所だった。俺の名は神田彰人かんだあきひと。ミニ○駆やクラッ○ュギアなどの魔改造が大好きなだけの何処にでもいる普通の高校2年生だ。成績は中の下、顔はブサイクでは無いがイケメンでも無い。唯一の特徴と言えば「開拓コース」と言う科目に入っていること位なものだろう。


 ダンジョンが出現してから学校にも変化があり、実戦経験を積み本格的に「探索者」を目指す者が集う「探索コース」、生産職などの非戦闘職の者がダンジョン内に眠る「魔鉱石」と呼ばれる希少鉱石の加工、産出を行うための技術やマッピングデータの地図書き起こしなどを学ぶ「開拓コース」、この2つの配置が義務付けられた。


 その中でも俺は開拓職となっているため、必然的に「開拓コース」行きとなる訳だ。

 …それでも授業は大して変わり映えせず、あいも変わらずつまらないものばかりだが。これなら自作ビークルにジェットエンジンを搭載する実験でもしていた方が幾らかマシというものだ。


 ――――キーンコーンカーンコーン…


 ――お、もう今日の授業が終わったらしい。課題提出は面倒だがやらなければより面倒なことになる。…まあの作業ついでにやればいいだろう。大したことでは無いな。


 俺は早々に荷物を纏め、帰る――振りをし、周囲に人目が無いことを確認すると制服のポケットからアンテナが付いた携帯型の端末を取り出し、地面へと向けボタンを押す。


 すると地面に黒く渦を巻いた穴が空く。俺はその中へと一切躊躇することなく飛び込んだ。


 穴を通り抜け、地面に着地するとが広がる。


 眼前にそびえ立つ、要塞の如き巨大建造物。その麓では大量の歯車がガシャガシャと喧しい音を立てながら回転している。その近くではベルトコンベアが稼働し大量の魔鉱石や魔石が流れていくのが見える。俺はそれを見上げ、満足気に頷く。


「我ながら素晴らしい拠点だ。」


 ――そう、何を隠そうここは俺がダンジョン内部に一から造り上げた活動兼生活拠点なのだ。

 ダンジョン入場には資格が必要?勝手にダンジョンを改造するのは犯罪?――知ったことか。俺の夢を実現するためならそんなものは些細なことだ。

 ――何より、バレなければ犯罪では無いのだ。


「さて、今日は何処を掘り抜いてやろうか?」


 俺は黒く鈍い輝きを放つ大きなツルハシを担ぎながら笑みを浮かべた。


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