ラブコメの主人公は俺じゃない?
タカユキ
第1話青春のページをめくるとき
早く学校終わらないかな? 何も面白味のない学校生活に嫌気を催していた。教室の窓からは、陽の光が差し込む。それも自分には、退屈な日常に過ぎない。
早く漫画読みたい…現実世界から逃避したいと思う今日この頃。
自分の部屋には積まれた未読の漫画が、きっと俺に早く読んでくれとせがんでいるんだ。
そして別世界に連れて行ってくれる。
高校に入ったら、凄い楽しいんだろうと、期待に胸を弾ませていたが、進学校ということもあり、勉強に邁進せざるを得なかった。
教室の黒板には、複雑な公式が書かれていて、それを見る生徒達の表情は、緊張で張り詰めいていた。
周りは、とんでもない奴らばかりで、自分も頑張らなければと、必死に食らいついた。
中学の頃は周りを見る余裕があった。でも高校では、そんな余裕は、与えてくれなかった。
誘いも全て断り、ひたすらに勉強をした。
夜遅くまで灯りをつけて、無音の中部屋でページを捲る音がして、時折りため息が漏れる。
その甲斐あって学校の成績は、かなり上位になれた。
そして高校2年目…余裕が出来て今は、遊べる余裕も出来た。
となると…授業が身に入らない。勉強の反動とは恐ろしいものである。
学校のチャイムが鳴った。
よし! 授業終わった〜長い苦痛からの解放。俺は早速、帰る準備を始めた。
すぐに帰ろうかと思ったが、授業の疲労感で、椅子が俺を手放してくれなかった。
5分ほどだろうか? ぼけ〜としていた。周りの生徒の話し声が聞こえてくる。
少しリラックス出来たので、立ち上がり廊下を出た。
その時俺に声を掛けてきた子がいた。彼女は人混みをかき分けるように、俺の前に立った。
「先輩! 待ってました。私この学校に受かりました。先輩が教えてくれたお陰です。」
頭を下げて、微笑みを浮かべて彼女が言う。
二階堂陽菜、中学時代の俺の後輩だった。長いストレートの髪に、くりっとした瞳は引き込まれそうなほど、澄んでいて美しい。
彼女が立つ姿が、まるで放課後の風景に溶け込む、漫画のヒロインの様だった。
「おう、俺のおかげだな。って努力した自分の力だよ。本当頑張ったね。」
腕を組んで、少し得意げに言ったけれど、結局は彼女の頑張りが占めてると思う。
「はい! 先輩と一緒の高校行きたかったので、それはもう頑張りました。なので、ご褒美下さい、先輩。」
蒼穹学園高等学校、都市部に位置し、私立の進学校だ。
偏差値は70と高く、学問の追求だけでなく、生徒一人一人の個性と才能を大切にする教育方針で知られている。
放課後には、科学から芸術まで多彩なクラブ活動が活発に行われ、生徒たちは自分の興味に合わせて活動に参加している。
年に一度の学園祭もあり、生徒や教師、地域社会が一体となって盛り上がる。
一緒の高校? はは〜ん…さては、俺に負けたくないって事か。なんて負けず嫌いな子だ。
彼女の目は期待に満ちていた。
「ご褒美? 分かった、後で何か奢ってあげるよ。じゃあ俺は、これで。」
俺は手を上げて、挨拶をそこそこに、切り上げようとした。
彼女がふと、俺の制服を掴む。
「ごめんなさい、先輩。服掴んだりして、その…あの…一緒に帰りませんか? 途中までは帰り道同じですよね?」
彼女の表情が申し訳なさそうな、それでいて、照れ臭い感じがあった。彼女の手が制服を掴む様子は、この場に留めようとさせている様でいて、それが幼さを感じさせた。
…そうだな。色々話したい事あるだろうし、そうするか。少し考えて、彼女の提案に同した。
「良いよ。そうだ、陽菜って漫画読む? 俺勉強飽きて、最近漫画にハマっちゃってさ。」
彼女に視線を合わせて俺は尋ねた。
「漫画読みます! けど最近は、勉強しまくってたので、読む暇がなくて…面白い漫画とか是非教えて下さい。」
彼女が両手を振り上げて頬を染めて言う。その仕草が愛らしくて、俺も頬を染めてる気がしてきた。
「ありすぎて難しい質問だね、フフ。」
俺は、人差し指で鼻を指すって、どの作品をあげるか悩んだ。
「なら後で教えて下さいね? 今言わなくても大丈夫です先輩。それより先輩、私胸が大きくなったと思いません?」
突然の彼女の発言に驚いて俺は、咽せた。
いきなり何を言い出すんだ、この子は?
そりゃ…ね? 嫌でも目につきますよ。
「大丈夫ですか、先輩?」
陽菜が背中を摩って、心配そうに言う。
「大丈夫? 咽せただけ。」
手を制して彼女に伝えた。
「ごめんなさい、私のせいかな? ってことは〜めっちゃ動揺しましたね? 先輩可愛い。」
彼女が俺の鼻に人差し指で、軽く叩いた。
俺は周りに聞かれてないか、首を左右に振った。
ひそひそと女子2人が話していたのを見つけた。俺たちの事話してないよな?
誤解されたか、不安に駆られた。
「そりゃ、いきなり変なこと言うから、驚いたんだよ。可愛いって、言われても…カッコいいなら嬉しいけど。」
「カッコいいです、先輩は。可愛さも兼ねてますけどね。」
…さりげなく褒められたな。やれやれ。無言で進み、俺と陽菜は、学校の校門を出た。
「先輩無視ですか? 良くありませんね?」
隣で歩いていた彼女が、立ち止まって言う。
いや、そう言う訳じゃないんだ。ちょっと対応に困ったというか、でも…お礼ぐらい言わなきゃだな。
「えっ? ありがとう、褒めてくれて。」
笑顔で言う。
「…ふぁ? 突然そんな…お礼言われるなんて思わなかったです。やりますね、先輩の笑顔にちょっとびっくりしました。」
びっくり? そんな不気味な笑顔だった?
でも彼女の様子は…両手を顔に当てて、照れてる様に見える。
「それってどう言う意味? 不気味だったかなちょっと。」
自信なく聞いた。
「とってもチャーミングで、スポットライトが当たった、俳優見たいな笑顔です。」
陽菜…それはめっちゃ大袈裟だぞ。自信貰えるけど。
「ちょっとオーバーじゃない?」
「私にはそう見えるから言ったんです。オーバーだとは思いません。先輩自信持ってください。むしろ過小表現かもしれません。」
ええマジか?
「良し自信持つよ。」
あんまり笑顔に自信持てないのは、思い出し笑いばかりで、誰かに対して、笑顔を振り向けたことが少ないからだ。
「ふふ、先輩って意外に単純?」
「おい、それはないだろ〜その意気です先輩。みたいに行ってくれないと。」
「ふふ、そうですね。その意気です先輩。言ったので、勉強また教えて下さい。」
「なんだよ〜結局それ狙いか?」
俺は何故か残念がるよりも、陽菜とのやり取りを楽しんでいた。
「バレちゃいましたか。そうです、それ狙いです。」
微笑み戯けながら彼女が言った。
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