第30話

「明智さん、こんにちは!」


「……」


「今日の授業は国語の予定なんだけど、その前に雑談でもしよっか」


「……」


「いきなりなんだけど、明智さんって好きな食べ物はなに?」


「……」


「いきなり聞かれるといっぱいあって答えにくいよね」


「……」


「俺はね、ポテトサラダなんだよ」


「……」


「でもこれが意外と作るのが難しくって……」


「……」


「いろいろ試してみたけど、結局買ったやつの方が美味しいの」


「……」


「自分で作ったのってボソボソしてたりベチャベチャしてたり……」


「……」


「いや、味は美味しいんだよ。上手にできてはいるんだけど、滑らかさが足りなくってさ」


「……」


「どうすれば良いのか全然わかんないのよ」


「……」


「そこでこの前、ちょっと高くて良いジャガイモ買ったんだよね」


「……」


「それで作ったポテトサラダ、めっちゃ美味しかったんだよ」


「……」


「でもさ、それでもコンビニとかで買ったやつの方が美味しいの、悔しいことに」


「……」


「結構高いジャガイモだったのになあ……」


「……」


「だから!俺は今日の授業をしっかりと教えて、それで手に入れたバイト代で、もっと良いジャガイモを手に入れることに決めたんだ」


「……」


「ということで、明智さん。俺のポテトサラダのために今日も頑張ろう!」


「……は……つ……」


「ん?」


「はちみつ……」


「蜂蜜?」


「うちでは……入れてます……」


「ハチミツ~~~~!!」


 これが、俺が初めて彼女の声を聞いた時のことだった。

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