ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~

龍翠

プロローグ


 魔法少女。悪の組織と敵対する正義の味方、とかいうわけのわからない存在。どこかの異世界の住人から魔力を分け与えられ、変身して、日夜人知れず悪の組織と戦う正義の味方。

 不愉快だ。本当に不愉快だ。そもそもとして、悪の組織と言われる筋合いなんてない。総帥の崇高な夢に集まったあたしたちを悪の組織など、不愉快極まる。

 だから、今ここで、決着をつける!

 あたしの目の前には、ピンク色を基調した衣服に身を包むガキがいる。フリルなどがついた、一般的にかわいらしいと言える服だ。小さな杖をあたしに向けて、荒い息を整えている。

 魔法少女マジカルエナ。あたしの、宿敵……!


「いつまであたしの邪魔をするつもり? マジカルエナ」

「あなたたちが、悪いことをやめるまでです!」

「はっ! こんなくそったれな世界、総帥が支配し、浄化するべきよ!」

「なんですか浄化って! そんな、えっちな服を着させちゃう総帥なんて信じられません!」

「はあ!? あたしの服のどこがエッチと……」


 自分の体を見下ろす。体のラインがしっかり分かるぴっちりとしたスーツに黒いマント。体のラインが分かる、ということはつまり……。


「…………。どこがエッチだっていうの!」

「あー! 今一瞬、そうかもって思ったでしょ! 思いましたよね!」

「やかましい! アホな妄想と共にくたばりなさい!」

「あ、アホじゃないもん!」


 お互いに魔力を集め、そしてそのまま放つ。魔力のレーザーがあたしたちの間でぶつかり、小規模な爆発を起こした。

 吹き飛ばされながらも体勢を整えて、再びマジカルエナとぶつかる。魔力をこめた拳での殴り合いだ。

 魔力を借り受けただけのまがい物に、本当の魔力の使い方というものを教えてやる……!


「せやあああ!」

「てやあああ!」


 お互いの体に拳がめり込み、痛みで浮遊の魔法が途切れてしまう。それはあいつも同じだったみたいで、お互いに地面に落下した。


「ちっ……!」


 すぐに立ち上がり、構える。マジカルエナも同じように構えを取った、が……。どうにも、周囲を気にしているようだ。


「なめられたものね……。あたしなんて眼中にないっていうの?」


 あたしがそう言うと、エナははっと我に返ってあたしを見据えた。けれどやはり、周囲が、というより側の屋敷が気になっているようだ。


「ちょっと有名な幽霊屋敷だっただけです……。さあ、決着を……」


 エナの言葉が、途中で止まった。

 がちゃりと、ドアが開く音がした。側の屋敷へと視線を向ける。今気付いたけど、どうやらここは大きな屋敷の庭らしい。

 ゆっくり開かれたドアから、そっと一つの人影が顔を出して。


「……っ!?」


 あたしと、そしてエナも息をのんだ。

 なにあれ。なにあいつ。本当になにこれ……!?

 ドアから出てきたのは、少女。エナと同い年ぐらいだと思う。その少女は真っ黒なローブにフードを目深に被るという、いかにも怪しい出で立ちだ。

 けれど、その魔力がおかしい。とんでもない魔力を持ってる。とんでもない、というか、あたしたちの頂点、総帥よりも遙か上。

 エナの魔力が一とするなら、総帥の魔力は十かもう少し上だろう。

 目の前の少女はと言えば、多分百かそれより上。まさしく桁違い。なにこれ怖い。

 まさかエナの仲間か、切り札か……!

 そう思ってエナをちらりと見れば。


「あわ、あわわ、あわわわわ」


 うん。違うわこれ。むしろエナの方が怯えている。

 それも仕方ないと思う。だって、ここまで魔力に違いがあると、あたしたちの攻撃なんて通用しないだろうし、その逆にあっちの攻撃は一撃で致命傷もあり得る。それほどまでに格が違う。

 どうしよう。すごく怖くなってきた。

 動けずにそのまま待っていると、その少女は目を何度か瞬かせ、やがて言った。


「おきゃくさま」


 少しだけ、嬉しそうだった。


「あんない。どうぞ」


 そう言って、少女が屋敷の中に入っていく。あたしはエナと目を合わせ、


「あー……。行こうか……?」

「はい……。正直、逆らいたくありません……」

「はっ。魔法少女様が情けないわね。……あたしもよ……」


 一時休戦して、少女の後を追うことになった。だって、何が逆鱗に触れるか分からないから。

 ドアを通って、屋敷の中に入る。そこはキッチンになっているようだった。少女はそのキッチンの奥、次のドアの前でこちらを待ってる。首を傾げて、まだ? とでも言いたげに。


「こわい」

「こわい」


 エナと意見が合致した。まったくもって嬉しくない。

 いや、でも落ち着くべきだ。確かにあたしではあの化け物にはどうやっても勝てないだろうけど、あたしたちの総帥なら可能性がある。

 確かに相手の魔力量は総帥の十倍。でもこれぐらいの差なら、扱う魔法と戦術によっては十分に勝ちの目がある。だからこそ総帥は魔法少女を警戒しているのだから。

 あたしがするべきは、この少女の弱点の見つけることだ。ここで果てるとしても、それは成し遂げなければならない。

 だから、一先ずは少女に従う。キッチンを抜けて、エナと共に少女の側まで行くと、少女はドアを開けた。


 そこに広がっているのは、とても広い大広間。広間の中央には大きな円形のテーブルがあって。

 化け物がいた。

 ここまで案内した少女はまだまともな方だったと、今なら思う。それぐらいにやばい化け物がいた。それも複数。


「おお! 戻ったか、クロ! む? そやつらは何者じゃ? 新入りかの?」


 そう言ったのは、小さな角と尻尾がある少女。赤いパーカーを着ていて、クロと呼ばれた少女よりは普通の衣服だ。ただし魔力量は、おそらくクロよりもさらに十倍以上。もう意味が分からない。


「新入りさんですか? でも、なんだか魔女らしくないような……?」


 そう言ったのは、明るい金髪をポニーテールにした少女。こちらはまだまともな魔力量。もっとも、クロの魔力がまともだとするなら、だけど。

 でも。とびきりの化け物がいる。もちろん角と尻尾がある少女も化け物だけど、それよりも遙かに格上だと分かる理解不能の存在。


「ん……? おかえり、クロ。小夜ももうすぐ帰ってくるよ」


 黒いローブに銀髪の少女。静かに本を読んでいるため目立たないけど、魔力量はこの中で一番多い。多分、この場にいる全員の魔力を足してもまだ足りない、それほどの魔力。

 これは、あれだ。だめなやつだ。

 見た目だけはみんな可愛らしいのが少し憎たらしい。どの子も外見年齢は十歳ほど。見た目通りとは思えないけど。


「じこしょうかい。する」


 クロがそう言うと、そうだったと三人が口々に言った。


「まずはわしじゃの! 竜人族のドラコじゃ! 終極の魔女とはわしのことよ!」


 角と尻尾がある少女がそう名乗った。竜人族、というのは聞いたことはないけど、ある意味で見た目通りだなと思う。


「私はエリーゼです。錬金術と魔法を組み合わせた技術の研究をしています。錬金の魔女と呼ばれています。よろしくお願いします」


 そう言って丁寧に頭を下げたのは、金髪をポニーテールにした少女。この中では一番まともだと思う。癒やし枠ね。私を一瞬で殺せることに目をつむれば。

 そして、最後の一人。


「ん……。私は、リオ。隠遁の魔女。よろしく」


 黒いローブの少女の名乗り。一番情報量が少ないけど、あまり触れたくない。その存在を忘れたい。

 ちなみに、エナはといえば。


「あばばばばば」


 体を震わせて半泣きになっていた。仲間ね。あたしも泣きたい。


「そんなところで突っ立っていても仕方なかろう! ほれ、座れ座れ!」


 ドラコに促されて、あたしとエナは椅子に座る。二人並んで。正直、頼りないとはいえ、見知った相手から離れたくない。多分それはエナも同じことを思っているはず。自然と隣に座ったから。


「おちゃ。だす。まってて」


 クロがとことことキッチンへと戻っていく。そうして私たちはこの化け物が集う広間に取り残された。


「まさかこんな、化け物たちがいる部屋に残されるとは思わなかったわ……。あんたは大丈夫なの?」


 エナにだけ聞こえるように小声で聞いてみる。するとエナはすぐに反応した。


「こわいよぉ……かえりたいよぉ……」


 だめだ。言動が年相応になってる。勇猛果敢にあたしたちと戦っていた魔法少女の姿とは思えない。でも情けないとも思えない。あたしも今すぐ帰りたい。

 エナと二人で縮こまっていると、ドラコという少女が苦笑したのが分かった。


「ううむ……。別に取って食いはしないんじゃがな。ほれ、化け物と呼ばれても、わしらは怒ってないじゃろ?」


 聞こえていたらしい。血の気が引く、というのはこういう感覚なのか。


「聞きたいこととかありませんか? この世界はどこなのか、とか。私たちは何者なのか、とか」


 エリーゼという少女が優しく語りかけてくるように話してくる。この子はやはり一番の癒やし枠だと思う。明らかにこちらに気を遣ってくれているのが分かるし、少しだけ気持ちも軽くなる。

 エナも同じだったみたいで、少し気持ちを落ち着けたらしい。ちらとあたしを見て、そして口を開いた。


「あの……。わたしは、エナといいます。この世界、というのは、どういうことですか?」

「む? まさか異世界だと気付いておらぬのか?」

「異世界……?」


 異世界。なるほど、この少女たちは異世界の存在らしい。いや、なるほどとそんな簡単に思えないけど。こんな化け物が普通にいる世界なんて怖すぎる。でも今は、異世界の魔女だから強いと思っていた方が気が楽だ。

 あたしたちが暗躍していた裏にこんな化け物がいたなんて思いたくないから。

 ふと、リオと名乗った少女があたしをじっと見つめていることに気が付いた。


「な、なにかしら」

「…………」


 リオはあたしと、そしてエナをしばらく見つめて、なるほどと頷いた。


「ドラコ。エリーゼ。この子たちはこの世界の住人」

「なんじゃと!?」

「ええ!?」


 え、なに。そんなに驚くことなの? ドラコもエリーゼも、信じられないような目であたしたちに視線を向けてきてるし。


「びっくり」


 その声に振り返れば、クロがお盆を持ってわずかに目を丸くしていた。


「とつぜんへんい。わたしだけ。ちがった。うれしい」

「突然変異……? あたしたちみたいなのは結構いるわよ。エナみたいな魔法少女は知らないけど」

「まほうしょうじょ……!」


 クロは持っていたお盆をテーブルに置くと、エナの元へと駆け寄った。そうしてからじっとエナを見つめ始める。じっと。じいっと。


「あ、あの……えと……」


 助けなくてもいいか。おもしろそうだし。

 ふと気付けば、目の前にお茶の入ったコップが置かれていた。見るとお盆の上にあったコップがふわふわと浮いて、それぞれの人の前に移動している。

 多分、この中の誰かがやっているんだろうけど……。どうやっているのか全く分からない。何かの能力でもあるのかしら。


「じこしょうかい。する。わたし。クロ。まじょ。みならい」

「う、うん……。わたしは、大久保咲、です。魔法少女やってます……」

「まほうしょうじょ。あさのテレビみたい?」

「う、うん。変身して、戦ったり……」

「おー……」


 どうなることかと思ったけど、どうやらエナはクロという子と打ち解けたらしい。あたしはまだ慣れないけど、これでいきなり敵対するなんてことはないでしょう。

 いや、ある、かも……? エナが、こいつは敵、なんて言ったら……。やめてそれすごく怖いどうしよう。

 やはり何か弱点を、と思ったところで。


「たっだいまー!」


 あたしたちが入ってきたドア、つまりキッチンのドアとは反対側にあるドアから、また一人、少女が元気な声と共に入ってきた。

 ただ、今までと明らかに違う。服装はよくある濃紺のセーラー服で、おそらく十代半ばが少し下ぐらい。魔力の気配も一切感じないので、間違いなく一般人だ。


「あれ? 知らない子がいる! クロ、ちゃんと説明とかした? 大丈夫?」

「せつめい。してない。わすれてた。たいへん」

「大丈夫大丈夫。今から説明しようね」

「がんばる。ありがと、おねえちゃん」

「いえいえー」


 お姉ちゃん。つまりはこのクロという少女の姉らしい。血の繋がりがあるかまでは分からないけど、それでもクロが姉と慕う人物だ。

 この子を人質とかにできれば、あるいは……。

 そう思った瞬間に、背筋が冷たくなった。あたしの本能が今すぐ逃げろと警鐘を鳴らしている。今すぐ死ぬかもしれない、という恐怖があたしの心臓をわしづかみにしている。

 小さくつばを飲み込み、視線を動かす。リオとドラコの二人が無表情であたしを見つめていた。


「警告する」


 小さく、リオの声が耳に届く。多分、エナには聞こえていない。どうやってか、あたしの耳に直接声を届けているらしい。


「あなたたちがどういった組織なのか知らないし興味もない。けれど、もしもこの場にいる誰かに手を出したなら、その時は許さない。誰一人として、逃がさない。絶対に」

「リオと同意見じゃ。その時はこの場にいる全員が敵に回ると心せよ」


 なるほど……。逆に言えば、おとなしくしていればここで殺されることはないらしい。それなら、何もしないでおこう。あたしだって無駄に死にたいわけじゃない。


「ここ。わたしのまほう。みんなのおうち。つくった。すごい。すごい?」

「え? えっと……えっと……」


 クロが説明をしようとしているのは分かるけど、意味までは分からない。そう思っていたらエナと視線が合った。間違いなく助けを求められてるけど、あたしにも分からないからどうしようもない。

 そっとセーラー服の少女へと視線を投げる。すぐに気付いたみたいで、苦笑して言った。


「それじゃ、私が代わりに説明するね。まず私は、小夜といいます。クロの実のお姉ちゃんです。ちゃんと血の繋がりがあるよ。魔法は使えないけど」


 それを前置きにしてから、この場所のことを語ってくれた。

 この屋敷にはクロの魔法がかけられているらしい。異世界から自分と同じぐらいの背格好の魔女を召喚する魔法だそうだ。だからここには小さい子しかいないらしい。


「どうしてそんな限定的なのよ」

「ああ、うん。この魔法ってクロが友達欲しさに作った魔法だからね。だから召喚の条件がクロと似た背格好になってるらしいよ。実年齢は人によって違うみたいだけど」


 つまり、外見年齢がクロに近い魔女を呼び出す、という魔法らしい。

 あのクロという子があたしたちを見て少し嬉しそうにしていたのは、新しい友達ができる、ということからだったのかも。そう思うと健気なような……、いや、この恐怖のどん底に突き落とされたことを考えるとそんなことないか。


「まあ、だから」


 小夜と名乗った少女が、じっとあたしを見つめてきた。


「あなたはかなり例外なんだけど……。どこの人?」

「あたしは……」

「いわゆる悪の組織の幹部さんです」


 あたしよりも先に答えたのはエナだ。あたしを睨み付けて、吐き捨てるように言った。


「世界征服なんてもくろんでいて、わたしはそれを止めるために戦ってました」

「え? えっと……。別の世界で?」

「いえ、この地球で」

「あたしたちはそのクロっていう子の魔法とは無関係に落ちただけよ」

「ええ……。そんなこと現実にあるの?」

「あたしからすれば、異世界出身とかいうその子たちの方が非現実的なんだけど」

「それを言われたら何も言い返せなくなるね!」


 小夜がけらけらと楽しげに笑う。少しお調子者のような気もするが、明るい子は話しやすくて好ましい。あのクロという子は少し独特で、会話しづらいから。


「でもまさか世界征服をしようとする組織があるなんて……。えっと、何かした方がいい?」

「い、いえ! 大丈夫です! わたしが頑張ります!」


 意外なことに、エナが小夜の申し出を断った。クロを経由してこの場にいる魔女に言えば、あたしたちの組織を壊滅させることは簡単だと思うのに。

 もしかしたら。この子も、ある可能性に思い至ったのかもしれない。あたしと同じように。


「そっか。じゃあ私からはこれ以上は何も言わないでおくよ。でもここに来たのも何かの縁だし、よければ今後も遊びに来てね。クロも喜ぶから」


 エナと一緒にクロを見ると、クロはほんの少し頬を上気させて、何度も頷いていた。あまり感情に起伏がない子なのかと思ったけど、どうやら表情にあまり出ないだけでちゃんとあるらしい。

 エナは照れくさそうにはにかみながら頷いたけど、あたしは反応を返せなかった。

 ことりと、小さな音。見るとお茶の入ったコップの側にクッキーの入った小皿が置かれている。人の気配はしなかったけど、あの魔女の仕業かしらね。


「ありがと」


 小さくお礼を言って、クッキーに手を伸ばそうとして。


「ぱけぱけ」


 そんな声に視線を上げれば、まん丸な白い球体が浮かんでいた。目と口と小さな手がくっついている。いわゆる、幽霊、おばけ、みたいな。

 ああ、そういえば、エナは最初ここを幽霊屋敷と言っていたっけ。どうやら何かの比喩とかでもなく、事実だったみたい。

 とりあえず決めた。あたしは二度とここには近寄らない。絶対にだ。あまりにも怖すぎる。




 そうして、夕方。クロの見送りを受けて屋敷を出たあたしとエナは、人気の無い道路を歩いていた。もう戦おうとは思えない。戦意なんてかけらもない。無駄すぎる。


「ちょっと、不思議だったんです」


 黙々と歩いていたらエナが口を開いた。


「そっちの組織の皆さん、最近明らかに犯罪行為が減りましたよね。むしろ普通に働き始めてる人もいるって聞いてます」

「そうね」


 事実だ。つい一ヶ月ほど前まではあたしみたいな過激派がほとんどだったのに、今ではかなり数を少なくしてる。それは、総帥の意向だ。今の過激派は反発してるだけ。

 どうして総帥は変わってしまったのかと思っていたけれど。


「総帥さん、絶対にあの子たちに会ってますよね……」

「そう、ね……」


 あたしたちの組織の総帥は、間違いなくあのクロと、そしてそれ以上の化け物と会っている。だからこそ過激な行動を控えるようになったのだろう。おそらくもう、諦めたのだと思う。

 当然だ。あたしもあんな化け物を敵に回したくない。世界の変革なんてどうでもいい。勝ち目がなさすぎる。


「今後はどうするんですか?」


 そう聞かれて、あたしはため息をついて答えた。


「仕事、探さないと……」

「世知辛いってやつですね」

「あんたはどうするのよ、魔法少女」

「わたしはまだ小学生なので!」

「若さが憎い……!」


 まだいくらでもやり直しができるものね。羨ましい限りだ。あたしは……まあ、どうとでもなるか。うん。どうとでもしよう。


「ま、あんたとは二度と会うことはないだろうけど、せいぜいがんばりなさい」

「あはは……。そちらも、がんばってください。応援しています」

「ものすごく不思議な感じね、これ」

「そうですね」


 朝は敵対していたのに、どうしてこうなったのやら。人生、何があるのか分からないものね。




 その後、総帥に聞いてみたところ、案の定あの屋敷の魔女と出会い、そして殺されかけたらしい。一瞬で負けた、とのことだった。

 うん。やはりもう、あいつらには関わらないようにしよう。


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