宇宙の輝き

@runa79

第1話 

「…また雪か」


生まれた時から住み続けるこの街の色は、一年中変わる事はない。


冷たく凍るような雪景色。


太陽と抜けるような青空を見たのは、一体何年前だったか。


いや何年ではなく、何十年もかもしれないが。


忘れるほど遠い過去になってしまった太陽に思いを馳せながら、首に巻いていた黒いマフラーを口元まで上げた。


『またお前黒かよ』


『なんか雪とのコントラストでお前、パンダみたいだな』


「……あともう少しだ」


サクサクと雪を踏む音だけに集中し、もう人気がなくなった道を一人歩いていく。


歩く速度は気にしなくていい、着くのが遅くなっても、早くやっても、咎める者は誰もいないのだから。


分かっていたのだが、もう本当に一人なんだ。

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