NESIERU/どこでもいる真祖の世界大戦

ネシエル

第1話 始まり

『人類は破滅した。』

 

 それは、ここにいる全ての新兵たちが

 子供の頃から耳にタコができるほど聞かされたこと。

 

 人類の歴史とは切っても切り離せない

 ターニングポイントを一言で表した単語。

 それは、覚えておくべき始まりの言葉。


△▼△▼△▼△

 

 彼女の一挙一動は会場にいる新兵たちが振り向く。

 否、振り向かざるえない。

 老若男女問わず、生徒、教師すらも彼女に目が奪われる。


 コンコンと黒いハイヒールで木製の床を鳴らし、

 伝統的で黒く漆黒色の軍服を着て、

 黒タイツを履いた美しい脚で階段を上がった。


 彼女の持つ緑輝き長く美しい髪。

 その髪はしばしば滑らかで、波打つような質感を持ち、

 反射する光は彼女の髪の美しさを宣伝する。


 無数の勲章を飾り黄色の文様が刻まれ、

 漆黒の軍服は高潔なる彼女の白く、滑らかで張りがある肌に付着している。

 

 そして、


 長く、尖っていて、頭の両側に優雅に突き出ています。

 これらの耳は、彼女の種族を識別する重要な特徴。


 エルフ。


 華麗な美貌、長寿な寿命。

 旧世界では空想上の存在だと吐き捨てた伝承上の存在である彼女は

 教卓の上にマイクの前に立つ。

 


 「ごきげんよう諸君。屠畜場へようこそ、

 歓迎するぞ。豚とも。」


 総勢4000人がいる新兵入隊式で開始早々、大胆不敵に彼女はそう発言した。


 

 この創立100年を迎え、多くの屈強なる兵士を排出した歴史ある士官学校。

 

 血界軍陣士官学校の始業式でこのような暴言を吐いても許されるのは

 このお方は以外はたぶん存在しないだろう。

 

 この学校の創立者の一人にして

 軍のなかで最も高い地位にあるお方。

 

 エリナ・ブランヒルト。


 それが、彼女の名だ。

 

 「あら。私としたことが豚さんを怖らせてしまったらしいね。

 皆!。安心して。リラックス。リラックス。

 さあってぇ!諸君。ご存知かもしれないが

今からおよそ百年前世界に核戦争が勃発した。

 人類のおよそ6割が蒸発し、後に来る核の冬と忌々しい侵略者のせいで人類は絶滅寸前までに追い込まれた。」


 さっきまでは優しいお姉さんのような性格から急にまるで、独裁者のような口調に変化した。

 手を広げ、いつも聞かされた歴史を聞いているにも拘わらず

 情状不安定の性格と

 持ち前の種族特有の美貌が台無しになるほどに不気味な笑顔を絶やさない彼女には

 新兵たちは少なからず恐怖を抱くものがいる。


「嘆き、絶望し、もう終わりだと皆が思ったときに人類の希望。

 血界軍陣が誕生した。

 この危機的な状況でまだ、立ち上がったものがいる限り人類は絶滅しないことを世に知らしめた奇跡なのだ。

 何で素晴らしいのだ。

 そして人類唯一の楽園。

 千年血界が創立された。

 君たちの先輩たちが血と涙を流し、

 この造られし楽園で君たちはまるで、養殖場にいる豚のように育てられた。

 そして、次の君たちの番だ。

 貴様らの育てたその血とその肉をもろとも人類に捧げよ」


その宣言と共に入隊式が始まった。


 


△▼△▼△▼△


 時を遡って入隊式の数年前の9月27日。


北半球の旧世界において秋と呼ばれた季節。

 

蒸し暑いと悩んだ夏とは大きく変わって涼しくなった。

 この季節には美しい紅葉に包まれた自然や涼しい気候。

 

新鮮な収穫物の味覚、様々な祭りや行事、秋冬ファッションの楽しみ、静謐な雰囲気を楽しめるだろう。


 ここは、千年血界。

 今からおよそ百年前に起こった核戦争によって数多の国家が滅び、

後に到来された核の冬の驚異に対抗するため建てられた巨大なシェルター。

 

千年血界の創立者である始祖が核戦争後との襲来でも僅かに生き残った生存者を連れて

 北太平洋の海底で作ったのがこの千年血界。


俺の名はアルバート。

 現在17歳。

 この千年血界の住民の一人で、黒い目とメンズカットの黒髪の少年。

 今は千年血界第二階層に存在するボアス町に住んでいる。


△▼△▼△▼△



 

秋の寒い夜の帰り道。

 アルバートは冷たいアスファルトの道を進み、

 自身の家を目指した。


 秋と言ってもこの千年血界には季節という概念はない。

 

 人類最後の箱庭をテーマで作られた。

 かつて、地球に存在していた季節を疑似的に再現したものに過ぎない。


 これを知ったときアルバートは人類の英知の結晶かと関心しながら、

かつて、真祖によって町が焼かれて廃墟となった街を歩んでいく。

 

 真祖。

 核戦争で崩壊寸前となった旧世界に突如として現れ

 生き残った人類たちを襲い始めた謎の生物。


 見た目は人間と同じにも拘わらず、

 その身には絶大な力を保有し、核戦争後の疲弊した人類の前に現れた彼らは

 人類を絶滅寸前まで追いつけた。


 この街も過去に血界を破った真祖によって崩壊し、

 現在でも修復されずに放置した家が残されてある。


 それでも、数年前よりもマシであるという。


 周りの家は放置され廃墟となりものの中から、

 アルバートはその中でまだ比較的にマシの分類に入る教会に入った。


 フェンスは開けて、ゆっくりとドアの前に行き。

持っている鍵で開けた。

 

「ただいま。」


 そう言いながら、靴を脱くと、

 買ってきたばかりの薬を机に置いてから

 手を洗い、その後は薬を出しておぼんに乗せて階段を昇った。


ここは、キュウヘイ孤児院。


 今からおよそ100年前、核戦争や真祖の襲撃もあり

 多くの子供が孤児になった。

 

 それが、やがて深刻な社会問題となり、

 千年血界の政府はこれを解決するために孤児院を作り、

 育児のために補助金を出すことに決定した。


 そして、百年たった今も孤児が存在し

 このキュウヘイ孤児院も政府がかつて運営していたものだ。

 

 アルバートはかつてここの管理者であった父が亡った後、

 ここの管理者となった。



 この孤児院は昔、教会として利用されたが

 老朽化や様々な問題によって廃墟となり

 政府が孤児院としてリフォームした。

 

 教会の一番右側の部屋の前に行き。


 アルバートは左手でおぼんを器用にもって、

 空いた右腕を使いドアをドンドンと鳴らした。

 

「はい。」


 ドアにノックして入ってもいいですよ。

 と確認を取れたらアルバートは中に入ることができた。


 階段を上がり右の部屋の扉を開けると

 そこには、銀髪の美少女。

魅力的な長いロングヘアが彼女の特徴であり、

 髪は換気のために開けた窓から来る風でなびくたびに彼女の美しさを引き立てる。

 瞳の色はブルーダイヤモンドのような輝きを放ち、

 その深い青は見る者を引き込む魅力を発する。

 まさに美の象徴であり、

 その優雅さと美しさは、まるで夢幻的な世界から抜け出してきたようです。

 

 彼女の名はアルベラ。

 年はアルバートの2つ下。

 アルバートの血の繋がった妹だ。

 

「お帰り、兄さん。

 今日はどうッ!ゴホゴホ」


「おいィ、あんまりしゃべるな。

 体に障るとあれほど。」


「ごめんなさい。兄さん」


 薬を開けて粉状の薬を妹に飲ませ、

 水で飲みこんだ。


「ありがとう。兄さん。」


「いいよ。じゃあご飯をつくっていくから。

 ちゃんと寝るんだぞ。」


 布団を掛けなおし、

 アルバートは部屋を出た。


 △▼△▼△▼△


俺はアルベラの部屋から出て、

 一階の階段のすぐそばにある台所でコメを解きながら、妹の容態を心配した。

 

 『アルベラ大丈夫だろうか……』


 細い腕、常人離れの美貌をしているが

 その体は脆く崩れやすい。

 

 アルベラは幼い頃から貧弱だった。

 昔から体が弱く、熱で寝込んでしまったことも珍しくなかった。

 

 

 

 だけど、最近薬を飲ませても一向に治らず、

 このまま、この子が苦しむどころを見るだけなのかと思う

 腸が煮え返る思いでいっぱいだ。


 体が弱いせいで学校にも行けず、

 自由に運動もできない。


 軽い運動はできるが全力で走ると寝込んでしまうほど体が弱く

 今まで、俺が学校に行っている間に妹の世話をした親父が亡くなってので、

 俺は学校をやめて妹の世話をしている。


 

 アルベラは俺の唯一血の繋がった家族だ。

 血は家族の証とは思えないもののそれでも、

 過去や生まれを共有してくれることに

 俺は嬉しく思う。

 

 もちろん。

 血を繋がっていないとは言え、家族同然に思う人がいる。


 

「ただいま。アル兄ぃ。ご飯まだぁー。」


「……ただいま。」


ドアを空き、全力全身で走る元気で生意気な少年と

 物静かでくらい娘。


 ランドセルをソファに投げ捨て、

 アルバートに駆け寄る赤い髪のツンツン頭の少年。

 アンダー。


 一方、物静かで階段を上りアンダーとは対照的な少女の名は美咲。


どちらも親父に拾われてこの孤児院に住んだ孤児。

アルバートにとっては血が繋がったアルベラと同じ大切な家族だ。


「あと、1時間だ。

 ほらぁ早く、今日の宿題を終らせてご飯を食べるぞ。」


 


 △▼△▼△▼△


夕食はもやしと自家栽培の野菜の炒めと僅かなご飯。

今日は飽きないように味を変えたり、

肉も入れているからうちの家族には大人気のメニューだ。


「アル兄。

 今度、魔術を教えてよ。」


 ご飯を食べながら野菜と肉の炒めを存分に食うアンダーは俺に魔術の練習をお願いしてきた。

 今まで、何度もこんなことがあったが、瞑想もちゃんとできていないアンダーにはまだ難しい。


 「言ったとおりにまじめに瞑想をすればって

 アル兄さまはいつも言っているじゃん。」


 「うるせぇ!な。だってわからないもん。

 瞑想をすれば本当に魔力を練られるのか。」


 「真面目にやらずに楽しようとするから、

 いつまでたってもできないのよ。

 このバカ。」


「こら二人とも」

 

生意気で短気なアンダー。


物静かだか起こると怖い美咲


そして、優しいアルベラ。


 三人とのやり取りを見て、微笑む。


俺たちは傷を負ったもの同士

傷の舐めあいでこの孤児院にいる。

悲しみもさみしさも家族で共有できるからこそ

 ここは、とても居心地がよい。



『ここにお父さんが居れば』


 俺たちの親父は軍人だった。

正確に言えば元軍人だった。


 前線で多く戦績を上げて人類に多大なる貢献してきた偉大な人物。

 

 だか、戦場で重度の精神的なダメージを受けて戦えなくなり

 退役後は孤児院を運営したが、

 数年前、親父が死んでしまい以後は俺がこの孤児院を運営している。


 父が死んでしまったことで政府からの補助金が途切れてしまい、

 家計は現在火の車だ。



「兄さん?」


「アル兄。」


「アル兄さま」


「あぁ、大丈夫だよ。

 ぼーっとしただけ。

 じゃんじゃん食え。」

 


 明日は久しぶりの副業だ。

 俺の将来は別としてアンダーと美咲。

そして、アルベラの未来のために頑張らないといけない。

 

その後ご飯を食べて、お風呂にはいったら

皆、自分の部屋に行き俺たちは眠りについた。

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