第50話 ステータスにはいつもの数字


「さぁ!今期もやってまいりました、プリカ養成所闘技大会!!

 実況・解説は養成所の天使こと私、メルが担当させていただきます!


 みなさん、どうか私の美声に酔いしれないでくださいねー?」



 引っ込めー、とどこからか野次が入るが当人に気にする様子はない。



「さぁさぁ、今日も気になる手合せが目白押しの目白押し!

 映えある大会のMVPはいったい誰の手に輝くのでしょうか?!


 本日のために腕を磨いてきたみなさま方の健闘、心からお祈りしておりまーす!

 それでは大会の始まりでーす!パレード入場どうぞー!」



 きびきびと揃った動きの行進が校庭のトラックに入っていく。

 荘厳なトランペットに合わせ、生徒がそれぞれの位置に整列すると大会開始の宣言が読まれる。




 闘技大会。




 これはプリカ養成所で開かれる半年に一度の恒例行事で、生徒のそれぞれが磨いた実力を腕試しするまたとない機会なのであった。


 この大会は事前の申し入れが通れば上のクラスとも対戦が可能で、私たちも普段戦えないそよ風組以外との対戦が控えていた。



 チルカ先生が、出番を待つ私たちに声をかけてくれる。



「おはようございます。オカリナのみなさん。



 事前にお伝えした通り、今日はあなたたちの昇級試験でもあるんです。

 そよ風組との試合が一戦、一般クラスとの試合が二戦組まれているんですね。


 その試合の内容が精査されることで、あなたたちは晴れてそよ風組を卒業することになることもあるでしょう。」



 ぱぁぁっ、と笑顔の広がるオカリナ。

 そこへチルカ先生はコホンと咳払いする。



「但し油断は禁物です。


 そよ風組を卒業して一般クラスに編入するには、そよ風組トップのギリギリの実力では困るのです。

 その程度で編入すれば一般クラスで再び落ちこぼれとなりかねませんからね。



 そよ風組には圧倒的な力を見せつけ、一般クラスにもできれば勝利をもぎ取ってほしいんです。


 ……でもきっと大丈夫。あなたたちには期待してるんですよ。」



 プレッシャーがかかる。でも嫌な圧力ではなかった。

 私たちは顔を見合わせ、頷く。これまでの実力が発揮できる良い機会なのだ。



「やってやりましょう……!


 玉虫色のドラゴンからのドーピングアイテムでまた私たちは一回り強くなりました。モグラ相手に経験も積んでいます。


 もう私たちは駆け出しの冒険者なんかじゃありません。一般クラスに編入し、より高い目標を掲げましょう!」


 えいえいおー、と気合を入れる私たち。



 そこへタロンが現れ、割って入る。



「盛り上がってるところ悪いんだけど……。」



「何よ、タロン。手短にね。」



「実はおいら、そろそろお別れになると思うんだ。」




 天界での一騒動がある。お別れという言葉に慌てる私。


「どうして?!魂晶が馴染まなかったの?

 寿命は残りどれくらいなの!?」



 手をわたわたさせて否定するタロン。



「違う違う、魂晶はうまく行っているよ。その節はありがとう。


 ……お別れというのは、君たちへのサポートを終わりにするということさ。」



 命に別状がないようで胸を撫で下ろす私。

 しかし今度は私たちへの手助けを終わらせるという話に動揺する。



「そんな……私、まだまだタロンなしじゃやっていけないよ。

 もう終わりなの?タロンに会えなくなるのもつらい……。」



「つらいのはおいらもさ。

 でもカロス様は最初メグが一人じゃ何もできないからおいらをサポートにつけたんだ。



 ……でも他にも駆け出しのパーティがわんさといる中、今のオカリナだけにおいらのサポートが必要なのかな?



 おいら、メグがボスじゃない強敵、巨大モグラを打ち倒したとき思ったね。

 メグが強くなったな、ということ。

 そしてお別れが近いんだなっていうことを……。」



 タロンは私たちの方を向く。



「これでも引き伸ばしにしたほうさ。

 オカリナの一般クラス転入をもって、おいらはオカリナから手を引かせてもらうよ。



 だからみんな、おいらのためだと思って今日はしっかり戦い抜いてくれ!

 おいらカロス様にオカリナの華々しい活躍を報告するんだ!!」



 みんな揃って無言になる。

 めいめいタロンとの思い出を振り返っているのだ。



 やがてカナから口を開く。



「全く、厄介払いのためにも、今日の試合に負けられなくなったわね。」

 素直じゃないのが持味、カナ。



「私たちの勇姿、ちゃんと天界で語り継ぐのよ。」

 こちらはしっかり者、フラン。



「最後の食事も豪勢にパーティにしましょうね。タロンちゃんにはもったいなかったですかね?」

 てへへと笑う優しいリリエラ。



「タロン、たまにはこっちに顔を見せに来てね。土産話が持ちきれないほど、私たち活躍しておくから!」

 そして私もタロンとお別れしたくない気持ちを抑えて言う。



 思えばこちらに転生してから長かったような短かったような。

 たくさんのボスやモンスターと対峙してきた。

 なんとか乗り越えてこられたのはみんなのおかげだったな。



 やがて私たちの出番が来たようで、開始位置につくように係の人が促してくる。



 行こうとすると、最後にと、タロンが私を呼び止めステータス画面をみせてよと頼んでくる。



 そんなのいつみても同じだよ、と微笑む私。

 これも最後の記念だ。


 ステータス画面を開いてみる。



 1、1、1、1……。


 私のステータスは今も変わらず赤点模様の1ばかりだった。



〜〜〜おしまい〜〜〜

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そのボス、私に任せませんか? 〜異世界に転生したはいいが、ザコモンスターにすら勝てない私。でもちょっと待って下さい!私、ボスにだけは無双できるんです〜 @maizin

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