第14話 突入!乱入!タンタラ洞窟
次の日の休みの朝。私たちは寮舎の大広間に集合していた。
カナが出発前の確認をとる。
「みんな揃ったわね。メグメグ、体調はどう?
タンタラ洞窟の最奥にいるボス相手に私たちは太刀打ちできないから、あなたが攻略の要になるのよ。」
任せて、バッチリよ、と私はウィンクにてへぺろを加えて返事をする。
「リリィ、道中のザコはあなたの敵じゃないわ。
恐怖を跳ねのけて前線に出てくれると助かる。」
はい、善処いたします……、とか細い声のリリエラ。
「フルル、火炎札の準備はいい?
道中は長いから文字通りあなたの援護が生命線になるわ。」
そう、フランのことをカナはフルルと呼ぶ。
そのフルルは任せなさい、火炎札を50枚刷ってきたのよ!と大見得を切る。
「そして私は僧侶だけど、十分な回復魔法は使えないわ。持っていく治癒アイテムの数も限られている。
敵に致命傷を与えてくるものはいないけれど、くれぐれも無理しないでね。
囲まれないようにお互い仲間から離れないでいきましょう。」
しかるあとに円陣を組み、手を合わせると気合の入った掛け声を出す私たち。
そうしてタンタラ洞窟へと出発したのだった。
タンタラ洞窟までは2時間以上の道のりだった。
だが途中まで道が整備されていて歩きやすかったのと、楽しく話しながら進んでいたのもあって、体感ではずっと早く洞窟に到着することができた。
入口を前にしてカナが突入前に確認、とみんなを呼び止める。
「メグメグ、ボスに勝てるのはあなただけよ。お願いね。」
え?ええ、はい、と私。
「リリィ、勇気を出して前に出てちょうだい。
あなたなら問題ない敵ばかりよ。」
は、はい……頑張ります……、とリリエラ。
何だか出発前にも聞いたんですが。
大事なことなので、ってやつでしょうか。
カナは当然のようにフランにも声をかけ、自分のことと陣形の取り方についても確認する。
フランもリリエラもしっかり真面目顔を崩さない。
いらぬことに気が行ってしまっているのは私だけなのでしょうか。
まぁ注意事項を確認したのは随分前だし、突入直前にそれを再認識するのは悪くはないか。
うむ、たしかに少し気が引き締まった思いだ。
行きましょう、というカナの声に続いて、私たちはランタンを手にタンタラ洞窟へと入って行った。
タンタラ洞窟はところどころに光る苔が蔓延っており、試しにランタンの火を隠して歩いてみたところ、全く不自由のないほど明るかった。
といっても洞窟の闇に慣れているのが洞窟の魔物、というのは最近座学で教わったばかり。
戦闘において光が原因で後れをとる訳にはいかない。私たちはランタンの火を落とさずに進む。
「それにしても、ダンジョンをオカリナだけで攻略するのなんて初めてですね……。
ちょっと心細いような、ちょっとドキドキするような……。」
「まぁ、生徒だけでダンジョン攻略なんて上級生に引率してもらってのときくらいだったしね。
あのときはカナが例の暴走で大変だったわね。」
「私モンスターは一匹も倒せなかったけど、味方の上級生なら1人伸しちゃったのよね。」
武勇伝のように自信たっぷりに語るカナ。
どうか恥じてくれ。
そうこう話に花が咲く中、前方に生き物の気配がした。
モンスターだ。
陣を敷いて!と檄を飛ばすカナ。
何もできない私は後ろ、棍棒を構えたカナは前に。
火炎札を構えたフランはその間。
そしてあわあわ混乱したリリエラは私のさらに後ろに隠れた。
リリエラさん……。
敵は中央に、鶏ほどの大きさの甲虫であるスカラベが1匹。そしてぷるんつでさんざ見慣れた相手、スライムをその両脇に携えた3匹パーティだった。
先手必勝とばかりにフランの火炎札がそれぞれのスライムに飛ぶ。
魔法使い本来の威力が乗らないのが惜しいが、それでもスライム相手ならそこそこの火力が期待できるようだ。
炎を食らった2匹のスライムはあっという間に弾け飛んだ。亡骸を残すことなくマナに還っていく。
残ったスカラベは手近なカナにぴょっこりと飛びかかってきた。
カナは棍棒でスカラベのジャンプを受けとめ、棍棒の勢いそのまま力いっぱい地面に叩きつけた。
足を痛めたのか蠢きながらその場で細かく動くスカラベ。
そこへ数発の炎弾が打ち込まれる。リリエラの魔法だ。
格闘家の魔法ゆえ大した威力はないだろうが、虫にも炎はよく利くとやはり座学でうんぬんかんぬん。
座学、やっぱりバカにできないね。私なるべく勉強します。うん、なるべく。
当のスカラベは炎の影響で硬い殻ごと縮み上がっていき、しばし悶えていたが、やがて事切れマナに還っていった。
「やった……。」
放心状態でポツリと呟くフラン。
「やりました!メグちゃん、フランちゃん、カナちゃん!」
こちらはリリエラ。顔が少し上気している。
「勝ったわね……。これが勝利の味、悪くないわ。」
カナも感慨深い顔だ。
「おめでとう!危なげなく勝てたじゃない!みんなすごい!!」
称賛の声を贈る私。
そしてみんなで手を取り合って円になりくるくる回る。
やったやったといいながら、それはもう回る回る。
テンションが上がっているから止め時がわからない私たち。
やがてみんなで仲良く気持ち悪くなり、思い思い吐き気と戦う羽目になったという、記念すべきオカリナ単独でのモンスター初討伐なのであった。
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