第6話 ダンジョン配信 1/3

「え、あれって……!?」

「おぉおおおおおおおお!?!?!?」

「そ、そ、そ、SO吉だぁあああああ!?!?!?」

「す、すげェエエエエエェエエエエ!?!?!?!?」

「ほ、ほ、本物だぁあああああああああああ!?!?」


 いつものようにゲートの近くにたどり着くと、大勢の魔法師たちが俺のそばに集まってきた。一応サングラスをかけていたのだが、どうやらバレてしまったみたいだ。


「きょ、今日はどんな配信をするんだ???」

「ふぁ、ファンです!! サインください!!!!」

「つ、つ、付き合ってください!!!!」

「ちゅ、ちゅーしてぇ……!!!!」


 集まってくる魔法師たちを、適当にあしらう。

 ここまで人気になれたこと自体は嬉しいが、それでもこんなに人気になってしまうと……仕事に支障が出てしまうな。大勢の魔法師たちのせいで、ゲートまでなかなか辿り着けない。


 人気者になると、背負うものが大きくなる。

 そんな話は聞いたことがあったが、これは……なかなかしんどいな。大勢が迫ってくるせいで、ゲートまでの道のりがあまりにも遠い。かつてだったら、こんなことは絶対になかったのに。


 結局、俺がゲートに辿り着けたのは、それから10分後のことだった。知らない人に勝手にキスされたり、服にラクガキをされたりしながらたどり着いたので……今度からは、もっとキチンと変装をしよう。そんな決意を胸に、俺はゲートに侵入した。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「みなさん、こんにちは〜」


(SO吉の配信の時間だーーーーー!!!!)

(おぉおお!! これが伝説のSO吉ちゃんねる!!)

(初見です。伝説を浴びに来ました)

(もう同接10万人!? さすがです!!)


(よっ!! SO吉、待ってました!!)

(いえぇえええ!! お前の配信を待ってたんだよ!!)

(SO吉、今日も頼むぜ!!)

(SO吉最強!! SO吉最強!!)


 いつものように、配信を開始した。

 その瞬間、同接が一気に10万人を突破した。

 特に告知もしていないゲリラ的な配信だっていうのに、俺も……成長したな。改めてそう思う。


(でも、今日はどうしてゲリラ配信なんだ?)

(そうそう、いつもは予告するのに)

(まぁ、たまにゲリラ配信もあるけどな)

(↑それはそう)


「あ、えっと……普通に予告を忘れてただけです」


(ちょwwwwww)

(って、そんな理由かーいwwwwwwwww)

(まぁ、そんな感じだとは思ってたけどなwwww)

(……ったく、おもしれー男wwwwwww)


 普通に告知を忘れていた。ただそれだけだ。

 それ以上でも、それ以下でもない。

 ……なんだか、少し恥ずかしいな。


「それはともかく、今日は……5層まで挑みます!!」


(へぇ、いつもに比べたら、結構潜るじゃん)

(↑普段は潜っても、3層だもんな)

(初見ですけど、そんなに浅い層をメインにしているんですか? 普通の魔法師の方々って、50層以上をメインにしていますよね?)

(↑それがSO吉なんだよ。上層の厄介者を討伐する、それがこのチャンネルの醍醐味の1つだからな)


(それにしても、どうして5層まで挑むんだ?)

(↑決まってるだろ。5層に出現したんだろ)

(そっか。なんかヤバい魔物が、5層に出現したんだな)

(して、今回討伐する魔物は?)


「そうなんですよ。こんな魔物が出現したんですよ」


 そういって俺は、配信画面に動画を写した。

 おどろおどろしい魔物が、画面上に出現する。

 

「このヒュドラ? って魔物を討伐しなきゃいけないんですよ」


 9つの首を持つ、紫色の鱗を持つ大蛇。

 その牙は鋭く、9つの口から滴る毒は緑色で、地面に垂れると同時にシュワッと地面を溶かしている。さらに9つの頭の全てに、黄金色の王冠がかぶさっていた。


 正直、俺はあまり、この魔物を恐ろしく感じない。

 ただデカいだけで、首が9つのあるだけのヘビだ。

 毒が強力との話だが、どうせ大したことないだろう。


(え、これ……ただのヒュドラじゃねェぞ!?!?)

(頭に王冠……キングヒュドラじゃねェか!?!?)

(↑マジ? SS級のヒュドラよりもずっと強力な毒を司るっていう、ヒュドラ系統の中でもトップクラスの魔物じゃねェかよ!?!?)

(え、それがマジなら……勝ち目ないんじゃねェ???)


(今度こそ…… SO吉の終わりか……?)

(↑お前、初見? SO吉のこと、何も知らないんだな)

(そうそう。SO吉古参からすれば、何の脅威もないよ)

(初見連中は黙って見てな。おもしれーもの見れるから)


 阿鼻叫喚の視聴者たちに、落ち着いた視聴者たち。

 その反応はキッパリと、2つに分かれている。

 まぁ、事実……俺も脅威は抱いていないのだがな。


 どれだけ脅威を形容されても、恐怖は皆無だ。

 これまでに何度も、俺はそれを打ち倒してきたから。

 どんな魔物が出現しても、拳で打ち砕いてきたから。


「まぁ、何でもいいですよ。さっさと倒しましょう」


(って、全然日和ってねェな……)

(さすがはSO吉だ。肝が違うな)

(頑張れよ!! SO吉!!)

(期待しているぜ!!)


 あっけらんと言い、ダンジョンの深層へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る