バスツアージャック事件

KPenguin5 (筆吟🐧)

第1話 バスツアー行かない?

「ねぇねぇ。聞いて~。紫音。今日すごいことがあったのよ~。」

今日は珍しくまだ早い時間なのに、QueenのママとももちゃんがBarKINGに来ている。

2人とも何かすごく上機嫌だ。何かいいことがあったらしい。

普段から、感情の起伏が激しいママなのできっと今回も大したことないんだろうなぁと思いながら、僕が聞いてみた。

「どうしたの?ママ。上機嫌じゃん。何かいいことあったの?」

「迅君。すごいんだから!昼間にね、モモちゃんと商店街の福引ひいたのよ。そうしたら、ジャ、ジャーン!見てみて!!熱海一泊旅行当たったの!!し・か・も!!ペア二組なのよ~!!」

ママがパンフレットをカバンから取り出して、まるで表彰状を見せびらかすように掲げた。

「え!すごいじゃん!熱海旅行一泊!いいなぁ。」

「でね、でね。紫音と迅君を招待しちゃいまーす!!私とももちゃんと4人で参加しましょ~」

ママが僕と紫音をにこにこしながら交互に見た。

「熱海旅行かぁ。なんか楽しそうだな。迅、どうする?」

「うん。俺は行ってもいいよ。楽しそうだし、温泉に旅館の食事か!いいじゃん。」

そういえば温泉旅行なんてのは何年ぶりだろうか。旅行と言えば、スキーとかのレジャーが最近では主流だったから、久しぶりすぎてワクワクしてきた。

「きゃー、やったぁ。決まりぃ!やだぁ。何着ていこうかしらぁ。あ、そうそう。ランジェリーも新調しなっくっちゃ。」

「ママ、お部屋は私と寝るのよ。何を期待しているの?ほら、紫音君も迅君も引いちゃってるじゃない。」

「えー、モモちゃんの意地悪ぅ。仕方ないわねぇ。でも、私と寝たかったらいつでも部屋を変わるわよ。紫音。」

ママの艶っぽい視線を避けるように紫音が苦笑いをしていった。

「あぁ、俺たちは2人でいいよ。なぁ、迅。」

「うん、俺も紫音と寝るから。」

ん、なんか少し不安になってきたな。


Queenは、ここBarKINGと同じ雑居ビルの中に入っているゲイバーだ。

ママはとても面倒見が良く、お客さんの相談にもよく乗っているらしい。ガタイもよくて気前もいい。この道に入る前は工事現場で現場監督なんかもしていたらしい。なかなかの経歴の持ち主だ。


そして、もう一人のモモちゃんはママとは正反対の華奢な感じだ。

ゲイだといわれないと、女性なのかと思ってしまうほどの美貌の持ち主。

なので、Queenのナンバーワンを常に保っている。

性格も温厚でとても可愛らしい人だと思っている。

でも、実はわかれた奥様がいて、そちらには娘さんもいるって話だ。


QueenとKingは同じビルということもあって、ママもモモちゃんもよくKINGに呑みに来る。KINGの常連さんだ。


「あ、そろそろお店開けなきゃ。じゃ、旅行は再来週の土曜日出発で一泊だから。楽しみに待っているわよ~。じゃぁね。」

ママとモモちゃんが掌をひらひらとさせながら帰っていった。


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