第32話 畏怖城の残光6-⑶
「記者さんと、船頭さん……なぜそのような方たちが、私を助けに?」
「詳しいいきさつは話すと長くなりますが、亡くなった佐井さんが握っていた暗号を解読した時、地図を奪った猿渡龍男があなたのお父さんと黄金を狙っていることに気づいたのです」
「どうして父のことを……」
「大土間さんという方が教えてくれたのです。この島にあなたのお父さんがいて、危険が迫っていると」
「大土間さんのことまで……」
「その様子からすると、まだ大土間さんとは会っていないのですね?」
「はい。この島に来ているのですか?」
「そのようです。このままでは猿渡がお父さんを見つけ、人質に取る可能性があります。我々と一緒にお父さんのいる教会に行ってくれませんか」
「……わかりました。私も猿渡と対決せずに父に会えればそれが一番だと思っています」
「もし会えたら、どうするおつもりです?」
「……説得したいです。黄金のお守りなど止めて私と本土に戻って欲しいと」
「僕たちも同意見です。船で一緒に帰りましょう。できればお父さんも乗せて」
小梢の同意を得てほっとした流介は「ところでこの危険な洞穴によく、辿りつけましたね」と尋ねた。
「危険ですか?どのあたりが?」
「あの錆びついた鎖とか……この狭い隙間とか」
「私、子供の頃から崖をよじ登ったり洞穴に潜りこんだりして遊んでいましたから、むしろ来易かったですわ。この奥の場所も、上に根が通っていたらしい穴があるので息苦しくないですし」
小梢はこともなげに言うと、高さ六尺ほどの空間の天井を指さした。天井の一点には直径十寸ほどの穴があり、はるか上に切り取られたように丸い青空が覗いていた。
※
流介と天馬が岩の下から這いだし身体の土埃を払っていると、間を置かず小梢が滑らかな身のこなしでするりと這いだし「ああ、やっと安心してここを抜けられた」と笑みを浮かべた。
「ずっと奥の空間にいたのですか」
「時々、行ったり来たりはしてましたが、常に誰かいるのではとの不安におびえていました」
「まだです。洞穴の外に敵が待ち構えているかもしれません。警戒を怠らないでください」
流介たちが斜面を上がり、外への開口部が見えそうな場所まで戻ったその時だった。
黒い人影が外からの光を背に行く手を遮るように立っているのが見えた。
「やっとみつけたぞ、江島小梢。……いや笠羽小梢」
「猿渡……さん」
あと少しというところで流介たちの前に立ちはだかったのは、猿渡龍男だった。
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