「天高く、地を這う」


「歌が好き」そう言っていた彼女は夢を叶え今は画面のむこう側で歌っている。「いつか僕の作った歌で歌いたい」その願いは叶えられそうにない。書いてる途中の紙を悔しさで握りしめぐしゃぐしゃにする。届かない。どう頑張ったって高く高く飛んでいく彼女には、地を這う僕の歌は絶対に届くことはない。



「歌いたいよ…」次の仕事も歌じゃない。歌いたいのに、とってきてくれる仕事はそれ以外。休む暇もなく、歌うわけでもなく日々が過ぎていく。やっと出来たオフの日。部屋の隅に座り空が近い外を眺める。作りかけだった彼の曲を小さく口ずさむ。もう出来たのかな。歌いながら願う。あの場所に帰りたい。

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