「行方」


「お兄さん、また行くの?」車に乗って出かけようとする彼に声をかける。「すぐ帰ってくるから心配するな」浮かべる笑顔は痛々しい。年の離れた姉の旦那さん。二年前交通事故で私は両親と姉を失った。どうしたら辛そうな彼を慰められるのかな。どこにも行くあてのなかった私をあの日彼が救ってくれた。



二年前ここで妻は亡くなった。小さな花を置き、呟く。「あと何年かな?」妻のお腹には命が宿っていた。施設育ちの俺に家族が出来る。その夢は儚く消えた。「お兄さん」一人の不安に涙を流す妻の妹。「大人になるまで俺が面倒みる」俺達が見れなかった夢を彼女と彼女の好きになった人に叶えてもらおう。

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