「離れていく音」


「モテモテだね」彼は今日も一年の女の子から告白されていた。今月で何人目だろうか。「堂々と付き合いたい」ごめん、ダメだよ。だって、私アイドルグループの正規メンバーになったんだもん。恋愛してるなんてバレたら、終わりなの。素知らぬ顔ですれ違う廊下。離れていく足音に私のこころは揺れ動く。



「どうしたの?」ドラマの撮影中、彼女の目が遠くを追いかける。彼女とは五度目の共演だ。「何でもない」彼女は目を伏せ撮影に戻る。目線の先にいるのは一組のカップルだろうか。男の方は初めての共演時に彼女のスマホ写真でみかけた気がする。そうか、君なのか。彼女の中に消えない痕をつけたのは―。

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