「夏祭りの思い出」


夏祭り。楽しすぎてお母さんを見失う。キョロキョロとまわりを確かめた。どこにもいない。涙で前がうるんで見える。「大丈夫」一緒に来てた裏の家に住む年上の男の子が手を握ってくれた。「ほら、こっち」汗ばんだ手は私より冷たいけど、なんだか心強い。見つけた。「お母さん!」先に彼が泣き出した。



「そんな事まで覚えてなくていいのに」困りながら笑ってしまう。「だって大事な思い出だもん」昔、お祭りで彼女と俺は迷子になり泣いた。忘れてくれていいのに。「忘れないよ」あの日景品でもらったおもちゃの指輪をあげた。あの時のものではないけれど同じ青い石のついたそれが彼女の指で小さく光る。

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