魔王人生 第1章 第8話 無音の戦場(サイレント・フィールド)
風鐘との一戦から1週間程経ち、再び神代は姿を現す
「ん~・・・この辺りかな?」
そう言うと神代は刀を鞘からの抜き、その場で立ち尽くし、目を瞑り、何かを探す
一週間で何とか集中して探せる範囲を広げたとはいえ、まだまだ不安定・・・
戦いながら探すのは、流石に精神削るな・・・
― 気配察知 ―
「・・・ここでも、分かんねぇか・・・」
神代が『気配察知』で周りを確認していると――
「――っ!?」
何だ・・・西の方から物凄い速さでこっちに近づいて来る・・・!
神代は身体の向きを西へ変え、刀を振ると――
「――しゃあああっ!」
キンッ!!!
神代は飛んできた銃弾を刀で弾き、
「・・・ようやく来たか!」
まずは弾が飛んできた西から攻める!!
―
神代は隙かさず「
一方その頃、風鐘は次の弾を装弾し神代に狙いを定めていた
「次は・・・外さない」
風鐘が放つ射撃は音を立てずに神代の膝に目掛けて飛んでいく
「っ!?」
今度は・・・北西ぐらいから来るっ!
「くっ―おらぁぁっ!!!」
ガキィン!!!!
「!?」
風鐘は神代がまた銃弾を弾いたことに驚くも、気を抜かず装弾していた
「・・・・」
・・・どうして狙うところが分かるの?
悔しい・・・負け・・・ない!!
風鐘は近くに置いていた別の銃に切り替えて、即座に撃ち直す――
――ドガァァン!!!!
撃った銃弾を神代は躱し、流れ弾は建物に直撃した
「・・・っ」
外した・・・だったら・・・
風鐘は持っていた銃をその場に置き、インカムを使い何かを唱える
「・・・システム・・・起動」
―
風鐘がそう唱えた瞬間。
北東・北西・東南・南西の方角から眩い光を放ち熱線が神代を襲う――
―
――ドォォォンッ!!!
神代は円を描くように斬り、熱線をギリギリで弾く
「っぶねぇ・・・いきなりビームとか殺す気かよ!?」
神代は愚痴をこぼしながらも、飛んでくる銃弾を避け、風鐘の居場所を探っていた
一方その頃、天使たちの拠点では、風鐘と神代が戦っている様子をモニターを観ながらウリエルとガブリエル、狐嶺は談話をしていた
「風鐘様も・・・なかなかヒートアップしてるっスねぇ~」
ガブリエルは軍事費用や研究費用などをパソコンの中にある書類に打ち込みながら話していた
「風鐘様が撃ち込んだ数は約四発、どれも弾かれ避けられました・・・今まで外したことがないからこそ、以前やる気になっているんでしょう・・・そもそも熱線を弾く芸当ができるのは『神器』のおかげ、本当であれば、あの一撃で終わっていたわ」
ウリエルは紅茶を飲みながら、風鐘の様子を観て話す
「・・・隣失礼~」
ウリエルの隣に狐嶺がお昼ごはんを持って座り込んだ
「今日は非番ですか?」
「まぁねぇ~・・・正直言うと彼との戦いからまだ完全に調子が戻ってないのよ~」
そう話しながら、お昼ご飯の味噌汁をすする
「ぷはぁ~・・・生ぎがえる~」
ご飯を堪能している狐嶺にウリエルは話を差し込む
「・・・狐嶺様は、この戦いどちらに分があると思いますか?」
ウリエルの話に耳をピクリを動かし、神代を観ながら答える
「そうね・・・今の感じだと7対3ってところかなぁ~」
狐嶺の言葉をその場にいた天使たちは聞き、どよめく中、ウリエルは腕を組み考えていた
「・・・・」
風鐘様が「7」、あの少年が「3」であれば、理解できるし納得する。
だが万が一、逆だった場合・・・考えたくはないですね
気まずい雰囲気が漂う中、ガブリエルが話を切り出した
「ち・な・み・に・・・それってどっちが「7」で「3」なんスか?」
「・・・・はぁ」
皆の士気に関わる話だったから、聞かなかったのに、言ったよ・・・あの子は
どうして、こう肝心な時に言うかな・・・
ほんっと、あの・・・もう・・・
ウリエルはため息をつき、心の中で文句を言いながらも狐嶺の方に顔を向ける
「・・・神代くんが「7」、風鐘が「3」ってところだね」
天使たちは更にザワつき作業の手が止まってしまった
そんな最中、ガブリエルはさらに理由も聞いた
「なかなか予想外っスね~!何でなんスか?」
「ん~そうね・・・簡単に言えば、情報不足って所、神代くんは不確定要素が多い、私達が知っている情報は、あくまで噂でしか無い、そういうわけで「7」ってかんじかな・・・じゃあ改めて、私達が彼に対して知ってる情報はな~んだ?」
その場にいた天使たちとウリエルは考えるもガブリエルは即答した
「え~っと、能力は、「
「そう・・・私達は彼に関する情報を戦った中だけでしか知らない」
「・・・・」
天使たちのザワつきが収まり、その場の空気は静まり返る
静まり返った中、最初に喋ったのはウリエルだった
「・・・確かに、私達は神代諌大のことについてあまり知らない、能力に関してもあまり分析が進んでおりませんし、家族に関する情報も曖昧なものが多く、「謎」としか言えません」
狐嶺はお昼ごはんを食べ終わり、足を組みながら話す
「ぷはっ~・・・そうね、唯一能力でも分かっているのは、「
狐嶺は淡々と話をし、例え話をし始める
「そ・う・ね~ウリエル~ここに虫がいるわ、どうしようかしら?」
「・・・そうですね、森に返します」
真剣な眼差しで答えるウリエル
狐嶺は顔に手を当てて、耐えようにも耐えきれず、笑みが口角に浮かぶ
「・・・ごめん、聞いた私が間違いだったわ・・・笑」
「例えを少し変えるわ、自分に向かって飛んでくる虫、どんな虫かは分からない・・・ガブリエルはどうする?」
ガブリエルはその話を聞き、作業しながら答える
「そうっスね~・・・とりあえず「叩く」っスね」
「ちなみに叩いた虫は、スズメバチよ、どんな虫か知らない状態で叩けば、何が起こるか分からない、もしかしたら毒虫かも知れないし、刺すかも知れないわ・・・」
「えぇ・・・後から教えられても・・・」
ガブリエルは少し理不尽な話題に呆れた顔で作業に戻った
「――とまぁ、こんな感じで、情報を知らないとガブリエルみたいな対応になってしまうのよ、まだこれは単純な話、「勝負」「試合」「戦争」はわざと相手に嘘の情報を掴ませて騙すっていうやり方もあるわ、神代くんの場合は、「能力」のことを知っていてもうまく出来ないのか、それとも知らないのか・・・」
・・・なんか引っかかるところがある気がするんだよね~
狐嶺は心の中で疑念を抱きながらもモニター越しに映る神代を見ていた
「・・・まぁそこはいつか本人に聞こうかな」
一方その頃、戦場の方では――
――ドガァァァンッ!!!!
一進一退状態の戦闘が続いており、一息つく暇もなく銃撃が飛んでくる
「クソッ!位置を割り出そうにも、四方八方から撃ちすぎだろっ!!」
ドォォン!!!
バゴォォンッ!!!!
神代は銃撃を躱しながらも気配察知で風鐘の位置を探す
「フゥゥぅぅ―・・・・」
なんとなくだが分かったことがある。
銃弾に僅かだが魔力が感じられたこと、何もない所から突然魔力を発してそこから銃弾が飛んでくるということ、その魔力を追うと銃弾が曲がって俺に向かってることも分かった・・・
つまり・・・何だ???
頭が回らなくなってきたな・・・多分だが、アイツの技術で俺を狙って来ている
ホーミングはあり得ない、銃弾を避けれてるからな
「―――ハァああ!!」
―
神代が放った斬撃波は、数百メートル以上飛び、何かを斬り飛ばした
――キンッ!
「・・・ん?何か当たったぞ?」
まぐれではあったが、飛んでいた銃弾を斬り飛ばしていた、神代にとっては嬉しい誤算ではあったが風鐘の闘争心に火を着けるキッカケとなってしまった
「・・・・っ」
もう偶然じゃない・・・飛んでくる方角が分かってる。
ウリエルからも「制限」をかけられてない・・・・・なら――
風鐘は魔力を高め、手を前に出した
―
―
―
―
―
神代は、急激に魔力が高まる方角に身体の向きをすぐさま変え、構えに入りそのまま技を放つ――
―
「これが・・・私の・・・
―
風鐘の放った砲撃の直線には瓦礫すらも残らず、一瞬で直線上のものを消し飛ばし
咄嗟に防御した神代だが、あまりの威力と衝撃で山を二つ越えた街まで吹き飛ばされる
・・・だが
風鐘が「超電磁魔力集束波動砲」を放つ数分前、ウリエルと狐嶺は風鐘と神代の戦いを観ながら話を続けていた
「―――とまぁこんな感じで神代くんとは戦ってたのよ・・・」
「結構ギリギリの戦いだったんですね・・・っ!!」
ウリエルが咄嗟にモニターを見ると風鐘が術式を解放していた
「・・・まさか・・・「
ウリエルは席を立ち上がり驚いていた
「風鐘も火が着いたって感じかな~・・・」
あの「
神代くん・・・多分君は負けず嫌いなんだと思うよ、すごく頑張ってる。
たとえ、腕が上がらなくても、足が重くとも、怪我をしても、君は這ってでも立ち向かう・・・そのぐらいの意志をあの時、感じた。
でも相手が悪すぎる。
だからいつも負けている。
戦う前は、意地っ張りな少年だと思っていたけど、戦った後から視点が変わったわ。
今見ると、苦しそうに見える――
モニターで風鐘が「
そして数秒後――
「――なっ!?」
その場にいた天使たち、ウリエル、ガブリエル、そして風鐘は驚愕していた
なんと神代は軽傷で済んでいた
咄嗟に防御した時、「
それだけではなく「
狐嶺は映像に映る神代を見ながら思いを巡らせていた
――少し、君と戦うのが怖いわ。
一方その頃、神代は息を切らしながら「
「ハァ・・・ハァ・・・ゲホッゲホッ!・・・めちゃくちゃ・・・だろ」
マジで死ぬかと思った・・・
「・・・!?」
神代は先ほどと同じ急激な魔力に気付き、走り出す――
―
二発目の「
今度は、「受ける」のではなく「避ける」選択を取り、神代はジグザグに走り続けた
「・・・・っ」
これで、二発目・・・あと三発――
風鐘は蓄積魔力弾倉を装填し直し、スコープで神代を追う
神代は建物を飛び周り、建物の影に入ったりと動き続けていた
「フゥッ――!!」
風鐘は神代を何とか目で追うも、どんどん速くなり、目で追えなくなるほどだった
「・・・っ!」
神代が高速で動き続ける中、風鐘は三発目を撃つ
―
今度の「
「っ・・・ダメ」
風鐘は銃を「魔術式SVLK―14S」に変え、装填し直す
一方その頃、ウリエルと狐嶺はこの戦いを観ながら話していた
「これで、三発目・・・もう後が無くなってきたわね」
狐嶺は風鐘を観ながら腕を組んでいた
「風鐘様の「
ウリエルは唖然とした顔で話していた
「
「風鐘は、まだ何個か奥の手を持ってるけど使わないのね~」
「・・・そういえば風鐘様は研究室で何か作ってましたね」
ウリエルはそう言いながらその時を思い出す――
――少し前
ウリエルは資料を見ながら研究室にノックし入る
「・・・入りますよ」
ウリエルの見る先には風鐘が大きな機械を弄っていた
「これは・・・形からして衛星ですか?」
「・・・・ん」
風鐘は作業を一度止め、休憩を取った
「・・・あともう少しで・・・できる」
「風鐘様にはいつも助かってますよ、私達は機械のことに詳しくありませんから」
風鐘は他の天使たちが修理している様子を観て微笑む
「・・・昔じゃ・・・あり得なかった・・・光景・・・私もいろいろと助かってる・・・」
「ふふっお役に立ててよかったです・・・私はそろそろ他の所にも行ってきますね」
ウリエルは立ち上がろうとすると風鐘がつぶやいた
「・・・負けないから」
ウリエルは衛星を見ながら研究室を出た――
――――そして現在に戻る
ドォォォォンッ!!!!
風鐘の四発目の「
「よぉしッ!!あともう少しでアイツに届く――」
神代は「
「―ぅぉぉぉおおッ!!!!!」
神代は神器を上に構え、斬撃を放つ――
―
風鐘はギリギリで斬撃を避け、拳銃の銃口を神代に向ける―
「私のッ・・・勝ちッ!」
―
風鐘が最後の一発「
「
「―――ぐっ!!?」
まさか・・・あの拳銃でぶっ放して来るとは・・・!
・・・左で受けたけど折れたな。
飛ばされる・・・
・・・・・
あぁ・・・また負けるのか
・・・このままで・・・いいのか?
いいわけねぇだろ。
「・・・ってやるよ」
神代は近くの建物に着地し、折れた左腕と右腕を無理やり交わし魔力を急激に高める―――
「っ!?」
風鐘はそれに気付き、「空間転移」を使おうとすると神代から眩い光が飛ぶ
神代は交わした腕を捻りながら手に溜めた魔力を直線上に放った――
―
神代が放った「エターナル・ブラスター」は「
ドガァァァンッ!!!!!!
その頃、天使の拠点では神代が放つ「エターナル・ブラスター」をモニター越しではあったが、異質な魔力を放っており、天使たちはザワついていた
「大きな魔力反応を感知しました!強い衝撃が来ます!!」
神代は「エターナル・ブラスター」を放ち、その砲撃は空高くまで飛んでいた
ドォォォォンッ!!!!
映像の音と同時に拠点に衝撃が来て、映像が乱れ電気も点滅していた
「―――っ!状況は!!?」
ウリエルは天使兵に神代と風鐘の状況を聞いた
「衛星で確認します!・・・魔力反応は一つだけです・・・」
そう天使兵が言うと、狐嶺の近くにゲートが開いていた
するとそこから出てきたのは先程まで現場にいた風鐘だった
「っ!?」
倒れる風鐘を狐嶺が受け止めた
「あの砲撃からよく逃れたね・・・急いで医療部隊に連絡をしてちょうだい」
「っ・・・良かった」
ウリエルは安堵し、応急処置を風鐘に行った
一方その頃、「エターナル・ブラスター」を放った神代はその場に仰向けで倒れていた
「ハァ・・・ハァ・・・ギリギリ・・・だった」
正直、アイツが「レールガン」みたいなやつを撃ち始めてから限界が近かった。
まさか「エターナル・ブラスター」があそこまで威力があるとは思わなかったな・・・
「・・・最初から使えば何とかなった気がする・・・」
神代は小言を言いながらもゆっくりと立ち上がり、歩いて自宅の方に向かった
「・・・・もう次で終わりにするか」
そうボソッと言い、折れた左腕を抱えながら歩く神代の後ろ姿は、少し孤独に見えた
――第9話に続く
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