魔王人生 第1章 第2話 少女と運命
・・・・・
・・・
・・・あれっ?
俺、何で部屋のベットの上で寝てんだ?
確か自宅の近くまで来たのは覚えてるけど・・・
その後は・・・分かんねぇ、思い出せない・・・
神代はベットから起き上がろうとするが、激痛が走る――
「―っ!!イッ・・・テェ・・・!」
そうだった、大天使と戦って、何とか生き延びたけど・・・
身体傷だらけだったの忘れてた。
動かすのは・・・痛いからやめとこう。
そう思い、神代はしばらく壁を見て放心していた
「・・・・・」
いや待て、あの時、応急処置ができる状況じゃなかった・・・
なぜ今、身体に包帯、絆創膏、湿布、それだけじゃない、水まで用意してる?
・・・家に誰かいるな
でも結構丁寧にやってるな・・・
神代は、自分の身体に施されている処置を見て、明らかに自分自身でやったとは思わなかった
包帯は新しいもので、ゴミ箱には血まみれの包帯が捨てられていた
神代は部屋を出て、身体が痛まないように慎重に動き、一階に降りる――
一階からは蛇口から水を出している音が聞こえた
ジャ~カチャカチャ――
近付くにつれ、その音は食器を洗っている音だった
神代は不思議に思いつつも部屋に静かに入った
声をかけるか・・・?
いや、人が残っていたとは考えにくい、大天使の野郎もほぼ人は保護したと言っていたし・・・なら――
「――誰だっ!!」
神代は大声で怒鳴りつけるように言った
――ガチャン!
「きゃっ!!」
台所で食器を洗っていたのは、金色の髪をした少女だった
神代の大声に驚き、洗っていた食器を落とし割ってしまう
「ごっごめんなさい!居たことに気付かず・・・」
少女は、急いで散らばった欠片を集めて袋に入れ、神代の前に立った――
「ごめんなさい、勝手に家に上がってしまって・・・えっと、初めまして!私の名前は『ナスカ』って言います!たまたま君が倒れていた所を見かけて、酷い怪我だったらか、治療してたの・・・」
なるほどねー、こいつが俺の怪我の応急処置をしてくれたのか~・・・
いやいや待て待て、こいつどう見ても「天使」だろ!何やってんだ?
というか、どうする?・・・戦う?追い出す?
いや、そんなことしたらすぐに天使共にバレる、今俺は満身創痍、到底立ち打ち出来ない。
神代は怪我した所を抑えながら考えていた
「・・・これ、あんたがやったのか?」
神代は自分の体に巻かれている包帯をさすりながら聞いた
「えぇ!君の傷は深いところもあったから、急いで治療したのよ・・・遅かったらどうなっていたか・・・」
ナスカは心配そうに経緯を話した
「そうか・・・ところでさ、さっきから何やってんの?」
いろいろ思うことがあったが、話題を変え、気を紛らわした
「あぁ!君がいつ起きるのか分からなかったから、いつでも食べれるように料理してたの!」
ナスカは嬉しそうに言っていたが――
「いや、人ん家の冷蔵庫漁って、なに勝手に料理してんだ・・・」
神代は呆れながらも椅子に座り込む
「・・・確かに、腹は減った、でもあんたが作った
そうだ、油断はするな・・・相手は「天使」だ。
餌付けして、洗脳するかもしれん。
もしかしたら、食べ物に毒でも盛っている可能性も・・・
・・・おい何だ、その泣き顔は、俺が悪いみたいじゃねぇか。罪悪感で押しつぶされそうだからこっち見るな。
神代の言った言葉に、ナスカは少し泣きそうだった
「・・・っそうだよね!・・・敵対してるから、信用出来ないもんね・・・」
さすがに申し訳ないと思い、神代の方が折れた・・・
食卓には、美味しそうな料理が置いてあり、食欲を刺激するいい匂いもしていた――
うわ~めちゃくちゃ美味そ・・・じゃなくて、まだ安全とは言い切れん。
先に食べてもらおう。
神代はナスカが先に食べるのを待った
「いただきまーす!」
ナスカは食卓に並べられていた、料理に手を取り、美味しそうに食べていた
・・・先に食べてもらったが、特に毒を盛った感じは・・・食べるか
そう思い、食欲に負けた神代は、慎重に口に運んだ――
「――っ!」
・・・うん、普通に美味し――
神代の脳裏に、父親や母親、妹と楽しく食卓を囲む様子が思い浮かぶ
・・・・・あぁそうだったな
昔はこんな感じで、親父と母さん、
誰かと一緒に食べるのなんて、7年ぶりだな~・・・
神代は静かにご飯を食べていたが、目の前が涙で溢れ、見えなくなるほど泣いていた
「・・・あれっ?泣きたくねぇのに・・・っ」
ナスカは何も言わず、神代のそばに寄り添い頭を撫でていた――
しばらく時間が経ち、食べ終わった神代とナスカはリビングで座って話していた
「・・・えぇっと、さっきのは見なかったことに、あんたのことを信用した訳では無ぇが・・・まぁ他の天使共よりは信用できる・・・そんな感じだ」
素直ではない神代に対して、ナスカは少し微笑んでいた
「何ニヤついてんだ・・・とりあえず、あんたは捕虜ってことで、いろいろ聞かせてもらう・・・【作戦】ってなんだ?」
神代はナスカにツッコミを入れながらも話を聞いた
「ごめんなさい、私は細かい内容は聞かされてないの・・・でも3つ、大まかな内容は聞いているわ!」
神代はナスカを見ながら考えていた
細かい内容は知らない・・・か、まぁ戦えそうには見えねぇし、多分非戦闘員なんだろうな。
「1つ目は、この世界に住む人々全員を『災害』から保護し所定の場所に集め、生活の補助と監視をする!2つ目は他種族と共に協力し、【
「普通、答えるか?・・・まぁいいや」
神代は少し呆れながらも質問を続けた
「【神災】ってなんだ?聞いたことも見たこともねぇぞ?」
「君の世界にも、「災害」っていうものがあるでしょ?私達の世界では、その「災害」を3つに分類していたの――
― 人災 ―
― 災厄 ―
― 災禍 ―
でも、数百年前に4つに分けられたの、それが【神災】・・・他とは違って「人災」は自然や人が引き起こしたものを指していて、「災厄」はこの世界には「魔物」が居ないから、実感がわかないと思うけど、「魔物」が引き起こしたことを指すの、「災禍」はその「魔物」の中でも上位種や変異種、特定の者たちを指しているの・・・」
ナスカは「災害」ことを話していたが、手が震えていた
「そして、【神災】・・・「災害」の中でも天と地ほどの差がある存在、4体のモノたちのことを指すわ・・・」
「その4体は?」
― 慈愛の悪魔 ―
― 千神王 ―
― 千神族 ―
「――そして、最近認定された、史上最強の魔王『カガーマ』で4体になるの、最後に言った人物を、天使たち全員が捜しているわ」
その後もナスカは、俺の知らないことを丁寧に話してくれた。
どうやら、その魔王はかなり前にここ、「地球」で魔力が確認されたらしい。
その時も天使共はこの世界に降りたが見当たらず、断念したらしい。
だけど神託があったらしい、『魔王は代わり、人に力を託す、そして神災が起こる』ということを言われたそうだ。それを軸に今回の【作戦】を立て、『魔王』の力を持つ可能性がある人間を捜しているそう・・・
「――なるほどね~、じゃあ【作戦】の本当の目的はその『魔王』の力を持つ人間を見つけること・・・か」
神代はナスカの話を少しずつ理解し、状況を把握し始めた
「でも、結局強引に進めて、戦り合ったけどな笑・・・これで見つかるか?」
「見つかるわ、ただ戦う理由もあるけどね・・・」
するとナスカは正座をし、話し始めた
「この世界で「能力」を持って生まれた人はごく僅か、持っていても「魔力」は微弱、もしくは持たないことがほとんどなの・・・君たちがよく言う『超能力者』みたいな人よ、でも「魔力」を取り込むことは出来ない・・・・」
そう言うとナスカは神代に問題を出す
「じゃあ問題です!「魔力」を持たない人にも「魔力」を持たせるには2つやり方があります!どうすれば良いでしょうか?」
「・・・えっ!?」
いきなりかよ・・・
2つある・・・アニメや漫画でいうと、ポーション的なものや魔導書?みたいなもの使ったりとか?
そういえば、ゲームであったな、食事や睡眠で「魔力」を回復する・・・的な
・・・いや分かんねぇよ!
神代は考えるも、答えは出てこず諦めて聞いた――
「正解は、『「魔力」を持つ人が相手に触れ、流す』のと『魔法や「魔力」を帯びた武器で攻撃を受ける』でした~!」
ナスカは楽しそうに答えた
「・・・いや分かるか・・・でもその話が本当なら、俺は大天使から魔法の攻撃受けたぞ?」
神代は大天使ラファエルの魔法「アクアスプラッシュ」と「水圧重撃弾」の攻撃を受けており、大天使ミカエルの武器『
「だって君、ずっと魔力が出ているよ?」
「えっ?マジ!?」
神代は驚きと喜びが混ざって困惑していたが、話を続けた
「ということは、漫画やアニメの魔法とかいろいろ使えるのか・・・!?」
「・・・・?良くわからないけど、使えるわ!」
神代は興奮し、ナスカは漫画やアニメを理解出来ず呆然としていた
魔法や能力が使えるのはかなり良い、大天使の野郎にリベンジできる。
・・・でも使い方が分からん、そもそも能力持ってんのか?
漫画とかゲームと同じ感じならできなくもない気がするが・・・
「魔法はともかく、能力は・・・どうやりゃ分かんだ?」
神代の頭の中でいろんな情報が回っていたが、冷静にナスカに「能力」について聞いた
「話は長くなるけど、能力にも分類があるの!――
― 能力 ―
― 特殊能力 ―
― 超能力 ―
――この3つがあって、「能力」は、一般的な能力のことを指すの、何か条件があるわけでもなく、強力な訳でもないのが「能力」、「特殊能力」は、能力と違い、条件があって、その条件を満たすと使えたり、効果が上がるの、最後の「超能力」は、条件なしで強力な力を使えるの、でも扱いが難しいっていうのは聞いたことあるわ・・・」
神代はナスカの話を聞き、疑問を抱く――
「でも、どうやって自分に能力があるのが分かるんだ?説明される訳ではねぇしよ」
「そうね・・・無意識と言ったほうがいいかしら?私達は生まれて、歩いたり、話したり、見たり聞いたりすることができるように、能力は本能的に分かるの」
ナスカは魔力を使って説明した
「君が剣を持って物を斬れるのは、その剣の「斬る」性質を理解してるからなの、能力が発現すると、まるで最初から扱えたかのようにできるの!でも、だからといって上手く扱えるわけじゃないわ、練習を重ねてようやく上手く扱えるようになる・・・それが能力なのよ!」
神代はナスカの話を聞き、少し引っ掛かる事があった
「・・・やけに詳しいな、研究者でもやってたか?」
「昔から本を読むのが好きで、よく調べてたの!」
神代は少し疑問を抱くも話は進んだ――
――数時間後
神代は「能力」についてのことを理解し、これからナスカに魔力を流してもらい、「能力」を開花させることとなった
「これから君に、魔力を流すけど、無理やり流すから身体がかなり熱くなるけど・・・大丈夫?」
ナスカは心配そうに神代に聞いた
「・・・?まぁ別に大丈夫だけど」
何だ?そんなにやばいのか?でもこれしかもう方法は無いし良いか・・・
神代は特に気にせず、集中する――
「いくよー!」
ナスカの合図と同時に、身体がかなり熱くなる
まるで、自分が給湯器のように、身体の内側が沸騰している感覚があった――
ヤべぇ・・・のぼせる感覚が・・・
熱すぎる・・・意識が・・・
神代の意識は段々と遠のいていくが
「っ!?」
突然、熱かった身体が冷め、神代の内側から力が漲る―
一方その頃、大天使達は、会議をしていた
「今回の【作戦】は順調に向かっていますッス。ただちょっと問題が・・」
「何があったんですか?ガブリエル」
そう言うのは、大天使ガブリエル、書記を担当し、研究や情報収集などをしている、大天使の中では、一番の知恵者である
「先日、ミカエルとラファエルが戦った一人の少年がいたッスが行方知れずとなっていて、【作戦】に支障が――」
そうガブリエルが言ようとしたその時――
「「「!?」」」
その場にいた大天使達が、何かに気付く
「これは・・・!?」
「っ!もしかしてあの少年が・・?」
ミカエルとラファエルは一目散にその気配に気づく
記録 某日 神代諌大の魔力覚醒を確認。
―神代の自宅―
「・・・これで能力が使えるのか?」
神代は少し戸惑うも、力が漲っている感覚がある、その様子にナスカは――
「凄い・・君の魔力は底が知れないね・・!」
どうやら、普通ではない感じだ。
うん・・・俺には一切分かんねぇ・・・
あいつはかなり驚いてるが・・・感極まってないで今の状況を教えろよ・・・
「どうかな?能力は分かる?」
「あー・・・なんとなく分かる気がする」
神代の頭に文字が浮かぶ―――
― エターナル ―
―
―・・・ぞ・・し・・―
―・・か・・・・・ん―
―・・せ・・―
これは・・・
そういうこと・・・・
神代は能力をみて、少し考える
「どうだった?何か分かった?」
ナスカは興味心身で神代に聞く
「どうやら何個か能力があるっぽいわ
― エターナル ―
―
― 武神 ―
― 剣神 ―
この四つのやつが俺の能力っぽい」
そう神代は答えるとナスカはまた驚く
「「エターナル」に、「
・・・・えっ?
神代はその日、考えるのをやめた――
翌朝、その能力を使いこなすべく、神代は能力を使ってみることになった
「えっと、この・・・「
神代はナスカに「
「この能力は、多分だけど身体強化の能力だと思うの、私が昔見た本にもそれらしいことが書いてあったわ!」
ナスカは楽しそうに答えた
「でも普通の身体強化にしては、強化の仕方がおかしかったらしいわ・・・なぜかしら?」
ナスカは闇の衣(ダークフォース)の身体強化に疑問を抱いていた
もちろん神代は、そのことは気にせず、淡々と能力を使おうとしていた
「能力って使う時、どうやってんの?」
漫画やアニメでは、技名を叫んだりしているが果たしてどうなんだろうか・・?
「それはね・・・その能力の名前を言うのが一般的なの!魔法や魔術とかも、詠唱したりして発現するの、それが能力に置き換わった感じかな?」
ナスカは少し曖昧な感じで答える
そうか・・・コイツらの世界ではそういうのは当たり前なのか。
なんか恥ずかしいな、でも言わないと能力使えないしな・・・
「・・・・・・・闇の衣(ダークフォース)―」
神代が能力の名前を言うと、身体に黒い模様が浮ぶ――
「―っ!何だこれ?」
「上手くいったみたいだねっ!」
ナスカは拍手しながら能力が発現したことを喜ぶ
「・・・凄く身体が軽い、速く動けそうな感じだな」
軽く木でも叩いてみるか・・・
そう考え、試しに木を叩くと――
バキッ!メキメキッ――ドォンッ!
なんと、軽く小突いた木が折れ、神代とナスカは驚き、開いた口が塞がらなかった
「いや、身体強化ってレベルじゃないぞ!叩いた手も痛くないし・・・」
ナスカの想定を超えるほど、身体強化されており考え直す、神代は能力を一度、解除すると
「っ!?」
っ何だ!?身体が・・千切れる・・・痛さが・・痛ぇ・・痛すぎる!!
「っ・・・ぐあぁ!」
「っ!どうしたの!?まだ傷が痛むの?」
ナスカは、急いで神代の元に寄り添い、担いで部屋に戻る――
「身体強化の能力なのに、使っただけで身体が痛むほどなんて・・・」
どうやらナスカ曰く、身体強化で身体がボロボロになるのは普通ありえないそうだ。
能力自体に「条件」があるのか、元々の能力がそういうものなのか、判断はできていない。
「・・・身体強化って元々の身体機能にプラスで力を与えているのか?」
神代が身体強化の原理についてナスカに聞くと
「えぇ、基本的に【身体機能+別の力】が身体強化の特徴だけど・・・」
ナスカは不思議そうに神代の疑問に対して答えた
「――っ!」
そういうことか、「
そう考える神代はナスカに「
「そもそも、身体強化ではあるけど「別の力」を足している訳では無く、元々の身体機能、いわゆる身体能力を強制的に上げているんじゃないか?それなら身体が痛くなる理由にも納得がいく」
「確かに・・・!」
仮説ではあったが、ナスカは神代の話を聞いて、納得する
「・・・もう一度やるぞ!」
神代は、「
―
名前を言うと、先程と同じように、身体に黒い模様が浮かぶ
「ここまでは、できるようになったけど、身体強化の上げ具合を変えられないかな・・・」
そう言い、神代は頭の中で、力を抑えるイメージをしてみると――
「ん~・・・ん?」
何だ?頭の中になんか意味分からん数値が出てきたぞ?・・・80?
神代は自分の頭の中に浮かんだ数値をみて、一つの答えが出てくる
「もしかして、この数値で身体強化の強化具合を調整していたのか?」
そう考えているとナスカが何かを思い出して、凄い勢いで神代に向かう――
「――思い出したよっ!
―
この能力は、元々の身体機能、身体能力、魔力を生物の限界100%まで強制的に上げ、さらに力を任意で、上げることができる「超能力」ただ、元々の身体機能や能力、魔力を無理矢理、引き出すため、身体が耐えられない可能性がある、この能力は、負の感情に反応して、力が増すとも言われている
「・・・そんな能力だったのか・・・早く言ってくれ――」
神代は少し考え事をしながら、能力を解き、再び激痛に襲われた――
第3話に続く――
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