魔王人生

神代寛地

魔王人生 第1章 第1話

この世界は理不尽だ。どれだけ頑張っても一つ選択を間違えるだけで終わってしまう

この世界は嫌いだ。自分から大切なものを奪っていく

この世界はクソだ。「平等」「公平」と言いつつ、弱いものは強いものにやられる


「弱肉強食」と何ら変わりない。


なぜ奪う、なぜ残酷な選択を選ばなければならない。ほんの少しだけ希望があっても良いじゃないか。

人が嫌い、世界が憎い、神も嫌いだ、弱い自分が嫌いだ。例え嫌われようと憎まれようと俺にはどうだって良い。

もうこれ以上、俺から奪わないでくれ。


「もっと強くなって守りたかった、そしてこの世界から―」


それが俺のだ。



――第1話 ”天使の襲来”――


不幸は突然やって来る。

大小あれど、その人の人生を大きく変える


俺は何もかも失った、家族も、友人も、社会的な居場所さえも・・・

最初は悲しかった、でも不思議と今は何も感じない。

そんな俺は今、現在進行形で、不良にボコボコにされてます。


なんでって?


いやこっちが聞きてぇよ


不良は路地で神代 諌大(かみしろ かんた)のポケットから財布を取り出し、中身を見る

「ヒャハハ!こいつ2000円しか持ってねぇぞ笑」

「とりあえず、全部もらっとけ!」


不良は財布に入っていた2000円を取り出し、逃げた


あ~もうめんどくせー

普通に家に帰ってただけなのに、カツアゲされるとか運悪いな・・・

神代は、仰向けに寝そべり、大の字になって空をながめる


「あ~あ、天使とか悪魔とか現れて、さっきの奴らボコってくんねぇかな~」

まぁこんなこと言っても何も起きないし・・・帰るか

神代は起き上がり、殴られた所をさすりながら帰路につく


「あっ!・・・そういえば、冷蔵庫に機能の晩飯の残りあったっけ?」

そう考えていると、徐々に空の雲が厚くなっていく

「雨降りそうだな・・・急いで帰るか、濡れるの嫌だし」

神代は急いで自宅に向かうが・・・


突然、雲が晴れる


神代は足を止め、空を見上げる・・・すると


空から羽の付いた人間、まるで”天使”のような者たちがゆっくりと降りてきた

「何だあれ?新種の鳥か?笑」


だが、そうしている間にも空からどんどん天使のような者が降りてくる

街の人達は、その様子に困惑し、次第に街の防災無線が鳴り響く―


「・・き・・・緊急避難警報。皆さんは各学校の体育館へ避難してください。繰り返します・・・」


街から悲鳴やクラクションが鳴り響く

「何だあれ?撮っとこうぜ笑」

「急いで避難してください!!」


恐怖で泣き始める子どもの声、この状況を動画に収めて拡散しようとする承認欲求モンスターの声、それを止めようとする警察官・・・

いろんな声で瞬く間に街はパニックに陥った。


神代の脳内にふと先程の自分の発言がよぎる


あれっ?

これさっき言った通りになってね?

・・・あんまり口に出すのやめよ


神代は住宅街で走りながら空を見上げる

「・・・ん?あいつら武器持ってね?」

降りてきている天使のような者たちは武装しており、街の人達を次々と何処かに連れ去っていく


そのまま走っていると―


「だっ誰か助けてくれー!」

近くで誰かの助けを求める声が聞こえ、神代は声の方向に向かう


「!?」

声の場所に向かうと、そこには天使のような者たちが数人掛かりでおじいさんの周りを囲んでいた


咄嗟に神代は近くに落ちていた石を拾い、一人の天使にぶつける


ガンッ!


投げた石は装備していた武器で弾かれた

「いきなり石を投げてくる野蛮な方は誰ですかっ!」

天使は少し怒りながら言う


だが神代は言葉を聞かず、そのまま真っ直ぐ一人の天使に殴りかかり、天使は反応出来ず外壁に叩きつけられる

「コスプレかなんか知らねぇけど、ジジイ相手に何やってんだ?」


神代の問いに、もう一人の天使が答えた

「私たちは、天界からやってきた天使兵です!私たちは貴方たちの為を思って保護してるだけですっ!【】のこともあって、動けそうにない御老体の方を優先的に運んでるだけです!!」

天使兵は少し早口になりながら神代に訴えかけるように話した


神代は困惑する


えっ?天界って?【】?

こいつら何言ってんだ?

テロリスト・・・いやそれにしては大胆すぎるし、目立つ格好にしてる理由も分からん・・・


ちょっと試すか――

「お前ら、本当に天使なのか?本当なら一回飛んでみろよ・・・」

マジならこの先考えないとな・・・


天使兵たちは、神代の疑問に呆然としながらも当たり前のように空を飛んだ

「これで満足?私たちは正真正銘の天使よっ!!」

一人の天使は不機嫌そうに言った


神代は少し驚きながらも拳を握り、構え、砂ぼこりが立つ

「っ・・・なるほどね~まぁいいや」

そう言うと神代は天使たちを見る


飛んでいた様子から動きは機械の感じはない。

何なら頭の上に輪っかがある、どう考えてもコスプレ衣装では無いか。

武器も剣と槍、女性が持つには重い上、鎧も着ている・・・


どう考えてもじゃない。


神代は少し考え、構える

「よし!戦るやるか!・・・おいジジイ、そこにいると邪魔だから避難所にでも逃げとけ」

神代がそう言うと、天使兵たちも構え、緊張が走る――

「ありがとう・・・」

おじいさんは何とか立ち上がり、急いでその場から離れた


「・・・・」

正直言うと、めちゃくちゃ怖いし、死にたくはない。

でも、ここで何かしないのは自分から逃げている気がする。

弱ぇ自分になんて戻りたくはない。

ならここで戦って死んだ方が幾分かマシだ。


神代は昔のことを思い出す


俺は幼い頃から弱くていじめられてた。

だから父親から護身っていう名目で戦い方を学んだ。

模擬試合では父親に一度も勝ったことないけど・・・

それから今までずっと努力し続けた、たとえ何があっても続けた。

身体が重く苦しくなろうと、『強くなる』ために・・・!


とは思いつつも、実戦経験は無い、だから油断が”死”に繋がる。

タイマンならいけるか・・・?


「・・・?来ないならこっちから行くよっ!」

天使兵の一人が槍を持って神代に突っ込んでくる――


その刹那、昔の記憶が神代の頭をよぎる

・・・そういや、こんなこと言ってたけ。


神代は天使兵の槍が届く瞬間に槍をいなし、間合いを詰め、天使兵の足を払う。

バランスを崩した天使兵は、神代の蹴りをもろに喰らい、壁に叩きつけられる。

「なっ!?」


もう一人の天使兵は驚き、空を飛び、攻撃をするが神代にひょいと避けられる。

神代はふと思った

いけた・・・いけるぞ・・・!!


すると天使兵の一人が――

「君、本当に人間・・・?天使兵を一瞬で倒すなんて・・・ありえない!」

そう驚きながらも体制を整えるため、天使兵は仲間に増援要請を送る

「こちら第56部隊27番エリューシャ!救援を要請します!隊長にも来ていただきたい!」


神代は誰かに話している天使兵を見ていた

携帯も無線も持ってねぇのにどうやって連絡してんだ?

まぁとりあえず落とすか。


神代は徐ろに道端に落ちている石を拾い、天使兵に向かって投げつける――


「了解!直ちに救援を向かわせます、それまで耐えてください!」

「はい!どうか急――」


ガンッ!!


神代が投げた石が天使に命中し、天使は住宅に落ちる

「悪ぃが今までの憂さ晴らしに付き合ってもらうぞッ!」



― 天使の拠点 ―

「エリューシャ?・・・第56部隊27番エリューシャからの連絡が途絶えました!」

先程まで連絡を取っていた天使兵の一人が慌てた様子で指揮官”大天使”ウリエルに伝える

「わかりました、第56部隊隊長を含む5人の天使兵と万が一に備えて、大天使ミカエルとラファエルにもそちらへ向かうように伝えてください。」


「「!?」」


その場に居た天使兵たちは大天使2人が向かうことに驚き、ウリエルに聞く

「お待ち下さい、ウリエル様!相手は人間です、天使兵隊長だけでも十分では・・・?」

それに対しウリエルは答える

「確かに、一理あります・・・ですが、忘れてはいませんよね?今回我々がこの世界にやってきた理由を」


「・・・・」

周囲の者たちは黙り込むがウリエルは話を続けた

「今回の【作戦】その1、この世界に住む人々全員を『災害』から保護し所定の場所に集め、生活の補助と監視をする・・・」


ウリエルは手元にあった資料を見ながら話を続ける

「その2、天啓の通り、他種族と共に協力し、【神災しんさい】を倒す・・・」

持っている資料の中から一枚だけ取り出し、机に置く

「その3、【神災】に認定された【魔王】及び、その適合者を見つける・・・これが我々がここに来た任務です・・・今戦っている人が、もしあの【魔王】なのであれば、相応の対処をしなければ我々が負けます。」


天使兵たちはウリエルの話を聞き、落ち着きを取り戻し、元の作業に戻る

「了解しました!直ちにミカエル様とラファエル様にも救援に向かうよう伝達いたします!」

そう言い、天使兵は急いで司令室から別の部屋へ向かった


「・・・ウ~リちゃん!ミカちゃんとラファちゃんだけで良かったんですか?」

ウリエルの後ろから元気な声が聞こえた

「公務中に、その呼び方はやめてください、ベル様・・・」

ウリエルは呆れた声で答える


― ナール・レスト・ベル ―

天使と人間のハーフ、彼女の居た世界では王女様だった方、最高神様が彼女を救い、今は我々に協力してくださっている方・・・ですが――


「も~硬いですよ~もっとリラックスしてください!」


――このように少し緊張感が無いのが少しダメですね・・・


ウリエルは大きなため息を吐き、切り替える

「ミカエルとラファエルだけで十分です、ミカエルは武人なので状況をでしょう、ラファエルは回復魔法も使えますので、戦って相手が怪我をしても問題ありません。」

そう言うとウリエルは作業に戻る

「っ!・・・そうですね!ウリちゃんの判断であれば大丈夫ですね~!」

「だからその呼び方・・・はぁ、もう大丈夫です・・・」



― 一方その頃 ―

神代は要請を受けた天使兵達を次々と倒していた

「ハァ・・・ハァ・・・っ!」

ここまでなんとか倒してきたが流石に体力的に限界だ、最後の一人は隊長とか言ってたな・・・めんどくせ~


「まさかここまでやるとは・・・あなたの実力を少し見誤っていたわ」


天使兵の隊長は褒め称えているが神代の耳には届いていない

・・・どうする?一度この場を離れるか?

いや無理だな、疲弊してる中で背を向ければ間違いなくやられる、だからと言って挑んでも勝機はねぇ・・・なら――


神代は隊長に向かって走り、間合いを詰めに行った


「!?いきなり詰めてきますか!その判断は悪くない・・・だがっ!」

神代は攻撃するも軽く避けられ反撃を喰らいその場に転ぶ

「うっ!」


「甘いな、ここまでは運良く勝てていただけだ、諦めろ。」

天使兵隊長は倒れ込んでいる神代に向かって言う


一撃が重すぎる・・・

やっぱりさっきの奴とは全然違う・・!

全く立ち上がれない・・急いで立ち上がらないと次が・・・!


天使兵隊長は、神代に攻撃するも、間一髪で神代は攻撃を避け、よろけながら体勢を立ち直す

「ハァ・・・くっ!・・・このクッソ天使が・・・」

つい口が悪くなったが仕方ない、もう結構ギリギリだ・・・

骨が折れてないだけでも奇跡だ、逃げるか?


・・・いや無理か、後ろからやられるな

だがどうする?このままじゃ埒が明かない・・・だったら――


神代はを握り、攻撃を待った

「カウンター狙いか・・・良いだろう、正面から攻撃してやるッ!」

天使兵隊長は、嬉々とした様子でスピードを上げ、まっすぐ神代に向かって突撃する


かかったな脳筋めッ!

神代は落ちていたミラーの破片を使い、天使兵隊長の目に光を当てる――

「なっ!」

神代は突き出した槍の持ち手を掴み、みねうちをかます

「がはっ・・・!」


しかし天使兵隊長は倒れず、神代は数発またみねうちをかました

「~っ!よしっ・・・!流石にここに居続けたらまずいな、一旦離れ――」


神代がその場を離れようとしたとき、二人の天使が現れる


「えらく派手にやったね~もしかしてこれ全部君がやったの?」

「皆さん大丈夫でしょうか・・・ミカちゃんも少しは皆さんの心配をしてください!」


神代の目の前には少し小柄の赤髪で緋眼の少女と長身の長い青髪で碧眼の女の人が空から降りてくる

何だ?赤髪のチビと青髪のでけぇ女・・・緊張感がない、というかヤバい


神代がそう思ったときにはミカエルは神代の後ろで倒れている天使兵の近くにいた

「大丈夫?動けそうかい?」

「・・・は・・い・・ミカエル様・・」


「!?」

いつ移動した?

俺・・・見てたよな?でも気づいたら後ろにいた、こいつは・・・


神代は動揺しつつもミカエルたちに問いただす

「・・・お前ら他の天使兵とはかなり違うな、名前は・・?」


ミカエルは笑顔で答える

「良いだろう!私は、大天使が一人、ミカエルである!ほらラファエルも・・・」

「えぇ!えっと、私は、大天使が一人、ラファエルです・・・よろしくお願いします・・・」


あれ?ちょっと思ってたのと違うな・・・

なんかこう、「頭が高いぞ人間」とか言うのかと思ってたけど、礼儀はあるんだ・・・

そう考えていると――


「少年の名前はなんだい?」


ミカエルは神代の名前を聞く

「それで素直に答えるバカがどこにいると思ってんだ?ばーか」

ミカエルは眉間にシワを寄せながらも丁寧に返す

「・・・まぁ答えても答えなくてもいいよ!後で調べますし!そ・れ・で・ここにいる天使兵達を倒したのは君かな?」


「・・・そうって言ったら?」


「それはすごいよ!だって隊長は人間が十人束になって勝てる強さだからね、君一人で倒したのであれば、天使兵からしたら脅威になるかな~、まぁ倒したのは観てたけどね笑」


「!?」

こいつ・・・

空中から観てたな、戦いに集中してたから気付かなかった・・・

とりあえず――

「大天使様がわざわざこんな所になんの用だ?観光か?笑」


ミカエルの眉間にまたシワが寄る

「っ・・・まぁ簡単に説明するとね、神様からの天啓が来たんだ!その天啓を元に私達はある【作戦】を立ててこの世界に来たんだよ」


「【作戦】・・・?」

そういやさっきの天使も言ってたな、【作戦】がどうのこうのって・・・


「【作戦】の細かい内容は教えられないけど、私達は、ある人物を探しているの!かつて史上最悪そして最強の魔王と言われた者をね!」


【魔王】?漫画とかでは、天使とは真逆の存在だぞ?なんで探してるんだ?


神代はそのことについて疑問に思いつつも質問する

「【魔王】なんてこの世界にいるわけがない、てか居たらすぐに分かるだろ笑」

そんなヤバい【魔王】がいればとっくにこの世界は地獄のようになってるはずだ


神代の煽りに堪忍袋(かんにんぶくろ)の緒が切れ、ミカエルはキレ始める

「ゴルァ!こいつ・・・こっちは丁寧に返してるのに態度が悪いぞ!ましては――」


キレているミカエルをラファエルが抑え込む・・・

「すいません!ミカちゃんは少し短気なところがあるので・・・すいません!」

ラファエルはめちゃくちゃ謝りながら暴れるミカエルを抑える


姉妹みたいだと思っていたらラファエルが変わりに答える

「君の言う通り、その【魔王】がの話です・・・私達は前にもこの世界に来ていましたが、見当たらず、と考えを変えてて今回このような形になりました・・・

その生まれ変わった人物を探すために動いています・・・」


このラファエルとかいうやつの方が良いな、あのチb・・じゃなくて、ミカエルはダメだ話にならん

「で?その【魔王】の生まれ変わりの見分けはつくのか?この世界には何人いると思ってんだ?」

この世界には約七十二億人の人がいる、その中から一人の生まれ変わりを見つけるのは、不可能だ――



ラファエルがなにか言いたそうにしている

「あのっ・・・実は、もうこの世界で保護されてないのは、君だけなんです・・・」


・・・は?

いやいや冗談にも程がある、まだ天使達が侵略しに来て一時間しか経ってない、これは多分・・・そう、動揺を狙った嘘だ!


・・・あれっ?

神代は、周りが静かな事に気付く、先程までの悲鳴やクラクションなどの音がしていない

辺り一帯が静寂に包まれている・・・


「っ・・・!マジかよ・・・本当に俺しか居ないのか・・・」


驚きのあまり冷や汗をかく神代、そしてミカエルは神代に二つの選択を迫る

「ん~~ばぁっ・・・とりあえず少年、君には二つの選択肢がある。一つは、降参し我々と共に来てもらい、協力する。もう一つは、私達と戦うという選択肢だ!」


・・・・

神代は神妙な顔つきで考える・・・


「大天使」相手だ、今戦ったとしても勝てる見込みはほぼゼロに近い

でも降参し、「仲良く協力しようね~」みたいな幻想は絶対に有り得ない

なぜなら、俺たちは「」、相手は「使」、実力は圧倒的に天使の方が上、魔法みたいなのも使えるそれは脅威そのもの、必ず平等、公平では無くなる・・・


なら選択肢はただ一つ・・・でも今ここでは決断するのは・・・

そうだな、一か八か交渉してみるか・・・

「今決めるのは流石に無理だ、明後日、山の近くにある運動場で決めたい」


神代の提案をミカエル達は意外にもあっさり承諾した

「良いわ!なら明後日まで天使兵達にあなたを襲わないように伝達しておくから!」

「良い返事をお待ちしております・・では・・」

そう言い残して、ミカエル達は倒れた天使兵を連れて、撤退していった・・・



― 数時間後 ―



「大天使達との交渉は、上手くいった・・・でもどうするか・・・」

何とか自宅に戻ってきた神代だが、明後日までにしなくてはならないことを考える


「まぁ普通に考えて降参は無いな、戦う一択だけど武器がねぇ・・・」

そもそもこの世界で、真剣や暗器などの武器は簡単に手に入るものではない、銃刀法違反で捕まるからな、なら木剣はどうか・・・無理だ、折れる。

「真剣相手に切れない木剣じゃ効果は無いからな~・・・でも打撃はイケるのでは?

とりあえず木剣はいるな、あとは――」


神代はその日の内に必要なものを決め、次の日には必要な物を全てを集め、大天使との約束の日が来た・・・



― 約束の日 ―


運動場で待つ大天使達と離れた所で見る人々と他の天使達

「一体これから何が始まんの?」

「知らね~でもなんか話するらしいよ」


ざわつく人々、他の天使達もざわつく中――

運動場で待つミカエルが何かに気が付く

「・・・っ!ご到着かな?」


そう言うと端から神代が歩いてきた


・・・どう見ても戦う気満々じゃん!まぁ君ならその選択肢しかないよね~

ミカエルはそう思い、神代へ近付く

「いや~久しぶり!一昨日ぶりだね!考えはまとまったかな?」

ミカエルはその場を少し和ませるように話す


「・・・・・」


しかし、神代から返答は返って来ない

「・・・そう、なら構えなさい!これからあなたを見極めます!」


ミカエルは抜剣し構えるが神代は構えなかった

「どうして構えないの?今更怖気づいたのかな~笑」

ミカエルは神代を煽るように言うと――


「・・・もし俺がお前たちに勝ったら頼みたいことがある、もし負けたら、お前たちの言うとおりにしてやるよ!負けたらな!」

そう言うと神代は抜剣し構える


この戦いは、大天使達からしたらただのエキシビジョンマッチ、だけど俺からしたらこの戦いは殺し合いだ――


「見届人は、私大天使ウリエルが行います・・・それでは・・・始めッ!」


ウリエルの開始の言葉と同時に、神代が先に動く

先に動いた神代は、ミカエルに猛攻撃を仕掛る、ミカエルは神代の攻撃に対し防御に徹する、一方的に攻撃を仕掛ていた神代は一度距離を離す――


「ハァハァ・・」

やっぱり完全に体力は回復していないこの戦いは、消耗戦に持っていかれると確定で「負け」だから短期戦で決めないと勝ち目は・・・無い!


神代は距離を詰め、木刀で攻撃する・・・が防がれる


木刀の替えはあと二つ・・・なら――

神代は壊れかけの木刀を投げ、隠していたクナイのようなものをミカエルに投げる


ヒュッ!ヒュッ!


「!?」

ミカエルは驚くが、ギリギリでクナイを弾く

「まさか飛び道具を出すとは思わなかったわ!」

神代は隙かさず、残りのクナイを投げるが、ミカエルに鮮やかに弾かれる


くそっ・・・まぁ当たらないのは想定通りだがここまで当たらないか・・・

すると神代は背中に隠してたチャクラもどきを取り出し、ミカエルに投げる――


ヒュン!と音を立てミカエルに向かうがやはりこれも弾かれる・・・


「今度は不思議な形をした飛び道具・・・面白いね!」


何楽しんでるんだ?あのチビ、こっちは命がけなんだぞ!

毎日地獄のような日々、生きるだけでも精一杯、誰も助けてくれない・・・

そして今は、命がけでテメェと戦ってる!

「ハァ・・・っ・・お前のようなやつがいるから・・・」


息を切らしながら応戦する神代、一方ミカエルは息一つ切らしていない、どれだけ詰めても傷一つ付かない、絶望的な戦局の中、神代の攻撃が止まる


「ゴホッゴホッ・・ハァ・・・っ・・・クソっ!」


もう体力も残っていない、木刀での攻撃は届かない、飛び道具も効かない

だったら――

神代は持っていた木刀を折り、ミカエルに投げつける


「そんな攻撃じゃ私には当たらないよ!」

ミカエルは木刀を斬り落とす、その瞬間――

神代はミカエルの懐まで詰め寄り、剣撃ではなく打撃に切り替え、武術で攻め始める


「「!?」」


驚いたミカエルは体勢を崩し、神代の攻撃を直で受ける

「っ!」

ミカエルは少し飛ばされるもすぐに体勢を整え、構え直す


まさか、距離を詰めて来るとは思わなかったわ、斬ったときに、視界が剣で遮られるその瞬間を狙って来るとは少し油断し過ぎたかなぁ~・・・

「君!いや神代諌大くん、私は君の実力を・・・」


ミカエルが喋っていると神代は間合いを詰める


「って!話を聞きなさい!」

ミカエルは空を飛び、急いで身をかわす

「もう一度言うけど、私は君の実力を見誤っていたわ、そして君自身の気持ちも剣を交えてなんとなくわかったわ・・・だからこそ、これからあなたを本気で倒します」


ミカエルは神代に本気を宣言した、近くで見ていたラファエルが運動場に降り武器を構え、ミカエルの後方に立った

「大天使が人間相手に二人がかりで倒すのは、今までなかったわ!光栄に思いなさい!」

「・・本当は戦いたくないんですが・・・諌大くんの誠意に答えます!」

ミカエルとラファエルはそう言い、構え直す一方――


いや二対一は卑怯だろ・・・

むしろさっきよりも最悪な状況になった・・・


神代は傷を抑えながら様子を伺っていた

ミカエルは基本物理的な攻撃が多い、まだ対処はできる、ただラファエルは例外、この天使たちは「魔法」を使える、俺が漫画やアニメでみた様な魔法でも現実では対処できかねる、ほぼ何でもありな魔法を使われたら、勝ち目は無い・・・!


― アクアスプラッシュ ―


するとラファエルの頭上から謎の水の塊が現れる、その瞬間

神代の顔スレスレを細い水が通り過ぎる――


「!?っあっぶねえ!」

ギリ反応できなかった、しかもあの攻撃コンクリートの壁を貫いた、体に当たれば間違いなく致命傷になる、多分水圧カッターに近いのか?当たったらダメだ、避け――


ラファエルから水圧カッターが飛んでくる

「―っ!ぐっ!」

最初は避けていたが左手、右脚を貫かれた神代はその場に倒れ込む


「ごめんなさい!・・でもこれしか諌大くんを止められないと思って・・・」

ラファエルは、必死に謝っている


・・・はっ、これほぼ殺し合いだぞ、相手に情けなんてかけんじゃねぇ・・・

謝るな、攻撃を止めるな・・・止めないでくれ、戦えないじゃねぇか・・・


「っ・・・ハァハァ・・イッテぇ・・」

神代はフラつきながらも立ち上がり構え叫ぶ――

「・・こいやッ!!クソ大天使共ッ!!!」


ラファエルは目を逸らし、攻撃を再開し、ミカエルも攻撃を続けた


―数分後―


もう何回殴られた?何回ふっ飛ばされた?分からねぇ・・・

痛みも感じない、音もあまり聞こえない、視界がぼやける、・・・これ死ぬな。


ドガッ!!


神代はミカエルの打撃を喰らい続け、ラファエルの魔法も受け続けていた、身体はボロボロもうまともに立つのもままならないほど攻撃を受けた

ではなく一方的な暴力だった・・・


「・・・もうやめてよ・・・っ」

ラファエルは泣いていた、ミカエルも気力のない攻撃を神代にしていた


「君はもう立つな・・これ以上やるのは私でも気が引ける・・」

ミカエルがそう言うも神代は立ち上がる


ウリエルはその戦いを上空から見ていた

見届人だがこれはもう戦いではない。

止めるという選択もあるがそれは彼が覚悟を決めてここに来た意味が無い・・・

もう見ていた人々も目を逸してる、他の天使達もだ。


ウリエルはそう思いつつこの戦いを見届けていた、そして終わりが近付く―


「・・・ラファエル、彼にとどめを刺して」

ミカエルは、そう言うがラファエルは断る


「・・・やれよ、クソ天使・・・お前らはっ・・・そんなこともっ・・・できない・・のか?笑」

神代はラファエルを煽り立てる


― 水撃重圧弾すいあつじゅうげきだん ―


ドンッ!


大きな音と同時に神代に直撃し彼の姿がなかった

ラファエルはものすごく動揺し、座り込む

「・・・そんな!威力は下げたのにっ!」

ミカエルは違和感を感じ、急いで撃ち抜いた所に向かうと、そこには神代の靴が残っていた

なんと、神代はラファエルの魔法の威力を利用し、その場から逃げていた―


「っ!?・・・アハハッ!最後の最後まで諦めの悪い人間だよ!最初から勝つ気なんて無かったんだ!彼は死ななければ負けた事にならない、負けそうなら、意地も捨てて逃げることもできるんだよ!彼はいろんな意味で「」だよ!笑」

ミカエルはそう言うと


「天使兵達!彼を捕えなさい!今しかチャンスはありません!」

ウリエルは隙かさず天使兵達に命令を下す


神代はラファエルの魔法を利用し、場外に出ていた

よしっ逃げれた!あとは何とか他の天使兵を振り切って家に戻ろう、応急処置ができるように、病院から薬や包帯や消毒をありったけ取ってきたんだ!まだ終わってねぇ

とにかく今は逃げることに最優先っ!


神代は全力で逃げる、天使兵も遅れて彼の跡を追う―


ダメだ!全く振り切れない、このままじゃ本当に捕まる・・・!

神代が逃げていると後ろから突然何者かに背中を斬りつけられるがそれでも止まらず逃げ続けた


「ぐぅっ!!がぁあぁあ!!!」



― 数十分後 ―


神代は物陰に隠れて天使兵が去るのを待っていた

何とか逃げ切った、もう日が落ちてアイツらも目視で追えずら、撤退していった・・


撤退していく天使兵を見送り、無意識的に自宅に向かっていた


もう限界だ、痛い・・何も聞こえない、目もぼやけてほぼ見えなくなってきた・・・

多分自宅の近く・・あれ?俺何してたんだっけ?・・・


「・・・くっ!」


誰かいる、何か言ってるけどわかんね~・・女の・・人?・・・・

ドサッ!

「・・・丈夫で・・か!・・出血・・・い・・どこか・・・」



・・・・



運ばれてる・・ダメだ、もう眠い・・・

・・・・・・

神代の意識が途切れた



「・・・に・・・託・・・・」


・・・?

何か聞こえる・・目の前が真っ暗だ・・・


「・・前に・・力を・・・託・・・」


何言ってるか聞こえねぇよ・・・もっと大きな声で言え・・・


「お前に俺の・・・を、力を託す、任せ・・・」


神代は、目を覚ますと何故か自宅のベットの上で寝ていた




――第2話に続く

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