111:走れ!死霊使いを瞬殺しろ!
A:前衛:セイヤ【刀】・ネネ【短剣・斥候】・ドルチェ【盾・槍】
後衛:ミーティア【弓・火魔法】・ウェルシア【風・水魔法】
■ネネ
■15歳 セイヤの奴隷
「<洗浄>」
初めて訪れた三階層は色々と厄介だ。
空が青く、緑が多かった二階層に対して、空は灰色、周りは茶色ばかり。
足元はぬかるみが多いし、走りづらい。
「<洗浄>」
敵は今のところ弱いけど、アンデッド……特にゾンビ系の魔物は気持ち悪い。
すごく臭うし、剣で斬りつければ脆いくせに死肉が飛び散る。
首を飛ばしても全然動いたりする。気持ち悪い。
「<洗浄>」
隣で走るご主人様はさっきからハンカチを鼻口に当て、右手一本で<飛刃>のみの攻撃を繰り返している。
ぬかるみも気に入らないらしく、何でもない所で<空跳>も使っている。
あと<洗浄>の頻度が半端ない。
「あー、ほんと酷い階層だな。サリュー! 大丈夫かー!」
「ダメでーす!」
「だよなー。<洗浄>」
サリュはスキルを使わなくても嗅覚が優れているから、死臭が辛いらしい。
ご主人様みたいにハンカチを当てながら光魔法と神聖魔法を連発してる。
確かにアンデッドには弱点属性なんだけど撃ち過ぎな気がする。
「思ってた以上にきついな。おーい、『不死城』まで一気に行くぞー。休憩は適宜とるけど場所選ぶから疲れたら申告してくれー」
『はいっ』
一刻も早くこの三階層を抜けたいらしい。
元々この階層は一日で抜けるつもりだったから予定通りではあるんだけど。
寝る場所も最初から『不死城』って決めてたし。
その『不死城』って言うのは、三階の奥にある廃城エリア。
ここの【領域主】だけが討伐されていなくて、おそらくその先に四階層への階段があると思われている。
だから昨晩と同じように、城の一室で一泊して、【領域主】に挑んで、四階に行くつもり。
一緒に走るミーティアが声をかける。
「ご主人様、まっすぐ行くと『巨大墓地エリア』ですが、よろしいのですか?」
「行きたくないけどそのルートが一番早いし、一番楽だろ。<洗浄>」
「ええ、まぁそうなのですが」
私たちが走っている『ぬかるみ湿地帯』の左手には大小の沼が点在する『沼エリア』が広がる。
その奥には湖みたいな大きな沼もあるらしい。
マッドスネークやマッドスパイダーが現れ、【領域主】はメデューサボールとか言う蛇の集合体らしい。なんでも石化させるとか。
右手は『枯れ木の森エリア』。枯れ木に偽装したトレントやコカトリスが居る。
その奥は『山岳荒野エリア』になってて、バジリスクとかが出て来るらしい。コカトリスもそうだけど石化ばっかしてくるね。
そこの【領域主】はドラゴンゾンビらしい。飛ぶわけじゃないけど強いんだとか。
二階層で言うところのタイラントクイーンのような立ち位置。
今にして思えばウェアウルフロードよりタイラントクイーンの方が強いと思う。
で、真っすぐ行った一番奥に『不死城』があるんだけど、その手前に『巨大墓地エリア』と『廃墟エリア』がある。
確かに横のエリアからぐるっと行くと遠回りだし、石化の敵ばっか出て来るから嫌らしい。
まぁサリュが居れば問題ないんだけど。
ともかくそうした方針が改めてご主人様から通達され、みんなで真っすぐ走る。
各パーティーから遠距離攻撃ばかりビュンビュン出ていて見ている分には面白い。
意地でも近寄らせないって意気込みを感じる。
……私、全く攻撃してないけど。
索敵がんばってます。
周りを見れば、同じように遠距離攻撃手段のないヒイノ、ドルチェも走るだけ。
ツェンも魔法は連発できないらしく走るだけ。
エメリーは<投擲>あるけどゾンビ相手に投げたナイフの回収はしたくないらしい。走るだけ。
せめてスケルトンくらいは倒します。
あと索敵がんばります。
そうこうしているうちに『巨大墓地エリア』が見えてきた。
木の柵に囲まれた巨大墓地。
見渡す限りの墓石。所々に大きめの石碑や石塔もある。
そして当然のように襲い掛かるアンデッド軍団。
ゾンビの上位種、グール。スケルトンの上位種、スケルトンナイト。
それと魔法しか効かないゴーストも出て来る。
「殲滅しろー! 進めー! 一気に抜けろー! <洗浄>」
『はいっ!』
墓石が邪魔で三パーティーが距離を開けての横並びとはいかない。
それでも墓石と墓石の間を縫うように、ある程度パーティーで固まって前進する。
「<飛刃><洗浄>」
「
「
私とドルチェは走るだけ。
ご主人様とミーティアとウェルシアが頑張ってる。
ウェルシアは<魔力凝縮>は使っても範囲は狭めないらしい。一気に大量に倒したいからね。
そうして殲滅していると、奥の方に察知反応が。
魔物が一塊になってる。
群れじゃない。密集してる。
「ん! 【領域主】、いた!」
「デスコンダクターか!」
事前情報で聞いていた『巨大墓地』の【領域主】。
見た目は大柄なゾンビだけど、フード付きのボロボロローブをかぶり、手にはねじれた杖。
アンデッドを操るアンデッド、デスコンダクター。
アンデッドを軍隊のように操る事もできるし、召喚みたいに地面からアンデッドを生み出したりもする。
闇魔法も強力で、アンデッド軍団に頼らず、デスコンダクター単体で戦っても強いんだとか。
さすがは三階層の【領域主】。
一筋縄じゃいかない。
それに対してご主人様は―――
「サリュー! 頼むー! <洗浄>」
「はいっ!
Cパーティーの方から極太の光線が発射された。
バシュゥゥゥゥン! って。
デスコンダクターを囲むように密集していたグール達をまとめて飲み込む。
……当然、跡形もないよね。
「よーし、さっさと抜けるぞー!」
『はいっ!』
憐れ、デスコンダクター。
でも君は誇っていい。
サリュの【聖杖】からの
もうこの階層はサリュ一人でいいような気がしてきた。
頑張れサリュ。
私は応援する。あと索敵する。
ちなみにデスコンダクターのドロップ品は走りながらもエメリーがささっと回収していた。
そのすぐ後に<生活魔法>でしっかり念入りに手を洗っていた。走りながら。
エメリーさすがだな、と思った。
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