07:街にやって来た″異物″
■ポリッツ
■25歳 Cランク組合員 レンジャー
俺はポリッツ。アフォードの街の魔物討伐組合に所属している組合員だ。
今日も依頼の討伐を何とか済ませ、アフォードの街へと帰って来た。
すると何やら街の入口が騒がしい。
何か問題でも起きたのかと覗いて見れば、そこには異様な光景が広がっていた。
門番である衛兵と、街に入ろうとする三人の男女。それは別に問題ではない。
指名手配の犯罪者でもなければ身分証明がなくとも仮の手続きで街に入る事はできるのだから。
問題は、その三人が真っ黒の貴族服のようなものを着た
しかもメイドでありながら武器を携帯している。戦えないはずの
いや、そもそも
仮に俺が衛兵の立場でも訝しんで見てしまうだろう。
おまけに今日の門番の片割れは
種族意識が高くて嫌味な奴だ。俺も何度か嫌がらせを受けたことがある。
あいつの前に
衛兵って身分を盾にして遊び感覚で殴ってくる最悪のやつだ。
「
案の定、やつはそう言いながら
……が、俺はその時、
その
俺は種族柄、危険察知能力に長けている……と思っている。
その危険察知が俺に警報を鳴らすのだ。
″
きっと誰もが
でも俺は自分の能力を信じている。
恐らくあの
―――ドグシャアア!!!
と、そんな事を思うまでもなく、
門の周りで立ち止まっていた人々が絶句する。
そりゃそうだろう、
「おい、それでもう通っていいのか?」
「は、はいっ!」
なんか、とんでもないヤツが来たな。
いつまで居るのか知らないが、出来る限り会わずに過ごしたいものだ。
♦
依頼の報告をしに、魔物討伐組合へと帰って来た。
するといつも以上に組合内が騒がしい。
「おいおい! てめえみてえなヤツが組合員になれるわけねえだろうが! 邪魔だからとっとと帰れや!」
声を張り上げているのはDランクの
あいつは新人いびりが趣味みたいな嫌なヤツだ。
組合から何度注意されても治らねえ馬鹿だ。
……って相手は
会わずに過ごしたいって言ったのに、早速会っちまったじゃねえか!
あいつら何しに組合なんかに来てんだよ!
……いや、話しを聞く限り、組合に登録に来たんだな。
で、
そりゃそうだ。
「
「ゴブリン?」
「ご主人様、
秀でている所と言えば、狡賢く生きる事や繁殖しやすい事。
だから
そんな説明をメイドから受けている所を見るに、男はそう呼ばれている事を知らなかったようだ。
「ほお、上手い例えじゃないか。なかなか的を得ている」
「なんだ、嫌味も分からねえ阿呆かよ。いいk」
「俺がゴブリンならお前は熊以下だな、地べたを這いずるミミズかな?」
「!? てめえっ!」
なんでわざわざ喧嘩を売るのか、あの
まぁ衛兵の
案の定、殴りかかって来た
「いてええええっ!!! この野郎!!!」
「あー、受付嬢さん。組合員同士の喧嘩ってやっていいもんなの? 罰則とかある?」
目の前でそんな光景を見せられている受付嬢もしどろもどろだ。
組合員同士の小競り合いなんか日常茶飯事だから罰則なんてない。
ただもちろん殺したら捕まるし、一方的な過失なら罰則もある。
それこそ
今回のケースを見れば突っかかって来たのは
まぁ組合長が
ともかく倒して問題ないと確認した
「ミミズらしく地べたで寝てろ」
そう言い放つ
みんな感じたようだ。
あの
それから
担当した受付嬢はまだしどろもどろを引きずっている。可哀想に。
それで帰ると思いきや、今度は倒した魔物の部位を売りたいと、買い取り窓口に行った。
小さな鞄が不自然だったが、やはりマジックバッグのようだ。
あんな高価なもんを
しかし驚くのはそれからだった。
マジックバッグから出て来るゴブリンの角やホーンラビットの角、毛皮、ウルフの毛皮も大量に出て来る。
最後にはゴブリンキングが丸々そのまま出て来やがった。
どんだけ容量のあるマジックバッグなんだよと突っ込みたいのが一つ。
野次馬の俺たちも、受付嬢も、組合の中にいる全てのやつが、目と口を開けたまま止まってしまった。
「どうした? 買い取れないのか?」
「……ハッ! い、いえ買い取ります! 計算しますのでしばしお待ちを!」
どうにか立ち直った受付嬢の努力により、
それを羨ましいなんて思わない。
やっぱりあいつはヤバイ、改めてそう思う事しか出来ない。
願わくば、もう会わない事を祈るのみだ。
♦
獣神ダルダッツォ様はどうも俺の祈りを聞いてくれないらしい。
組合を出て武器の修繕をしに、馴染みの武器屋に行ったら……また居た。
真っ黒な主と、戦闘メイド二人。謎の三人組。
ここの親父は偏屈なんだが腕は良いと評判だ。
当然「戦えもしない
「なんだこの剣! 材質が全く分からねえ! こんな美しい剣を見るのは初めてだ! 傷一つねえがホントにこれで魔物斬ったのか!?」
「ああ、かなり斬ったぞ。修繕する必要がないのならいいんだ、一応見て貰おうと思っただけだからな」
剣に惚れこんだ親父からなんとか奪い返した
……いや、お前あれだけ魔物素材入れてたマジックバッグに、まだこんだけ入れてたのかよ!
国宝級のマジックバッグか!?
さすがに突っ込みたいぞ! 口に出して!
……しませんけどね。
ともかく、
またもかなりの金を手に入れていた。
全く羨ましくない。
むしろ恐ろしい。
絶対に何かよろしくない事態に巻き込まれそうな予感がする。
俺は自分の危険察知能力をフル活用し、その場を後にするのだった。
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