嵐の前の静けさ
「お邪魔しますわ!」
「はいはーい、狭い家だけどゆっくりしていってねー?」
「あっ、葵さん、こんにちは!」
今日は晴海さんの姉の娘、美海にとって従姉妹の
葵さんはクオーターで金髪のナイスバディ、若干晴海さんに似た顔立ちの美人さん。
晴海さんと美海は黒髪なのに、晴海さんのお姉さんと葵さんは金髪って…… 両親は同じなのに不思議だ。
そしてその葵さんの後ろに隠れ、ひょっこりと顔を出しているのが……
「
「こ、こんにちわ……」
葵さんの娘さんで紫音ちゃん五歳。
葵さんに似た顔をしているが髪は茶色で、少し恥ずかしがり屋さんなのかお母さんである葵さんの後ろにずっと隠れている。
「しおんちゃん! しおんちゃん!」
おっ、大海が紫音ちゃんに気が付いてトテトテと駆け寄っていった。
「た、たいがくん、こんにちわ……」
「しおんちゃん! あそぼ!」
「う、うん!」
もうすぐ三歳になる大海は紫音ちゃんと遊ぶのを楽しみにしていたようで、朝から葵さん達が来るのを今か今かと待っていた。
大海にすれば紫音ちゃんは再従姉弟、親戚同士だから仲良しなのはいいことだ。
「ふふっ、すっかり紫音も大海くんと仲良しになりましたわね」
「うふふっ、そうねぇ」
大海は自分のおもちゃ箱を引っ張り出し、あれこれと見せては紫音ちゃんに貸してあげている。
そして二人で楽しそうに遊び始めた。
「皆さん、これ…… うちのお団子をお土産に持ってきましたわ」
「あらぁ、ありがとう! うふふっ、葵ちゃんちのお団子、美味しいのよねぇ」
「はい、葵さんお茶ね…… わぁっ! 美味しいそうなお団子!」
「ありがとうございますわ!」
こうして美人が三人揃って座っていると圧巻というか…… ドン、ドン、ドーン! という感じだ…… どこがとは言わないが。
ちなみにドーンは葵さん。
晴海さんより凄いだなんて…… イテッ!
「……総一?」
あ、あははっ、いや、つい目がいっちゃっただけで…… イタッ!
「……そーくん?」
晴海さんまで…… すいませんでしたぁ……
「ふふっ、仲良しですわね」
いやぁ…… あははっ……
ついついドーンを見てしまったら、美海からは太ももをつねられるし、晴海さんは…… 潜水艦を今にも握り潰すんじゃないかというくらい強く握られてしまった。
テーブルの下で分からないからバレないけど、お客さんの前だからね? ほら! 美海まで対抗して潜水艦に手を伸ばしてるから!
「うふふっ、私達、とーっても仲良しなの」
「そうそう、いつもこんな感じよ」
うぅっ! 左右からピッタリとくっついては胸部装甲を押し付けてニギニギ……
「ふふふっ、でも幸せそうで安心しましたわ…… お母様が『わたくしには生き別れた妹がいて、ずっと探しているけど見つからない』とずっと聞かされてましたから、まさかこんな近くにいるとは思いませんでしたが」
「お姉ちゃんにも色々迷惑かけちゃったわね…… でもその分幸せも見つかって宝物も手に入れたから、今はこれで良かったと思っているわ、うふふっ」
「……晴海さんは強い女性ですわね、さすが『鬼島家』の女性ですわ」
晴海さんがここら辺では有名な大企業『鬼島グループ』のご令嬢だったとは…… 今は絶縁されて直接は関係ないが、あのおっとりほんわかした晴海さんが、ねぇ……
さっきからずっとニギニギしてるし。
「お姉ちゃんに比べたら私はそんなに…… うふふっ」
「お母様は…… まぁ、あの通り、自分にも他人にも厳しい性格ですから……」
「元々家族には甘々なんだけどね、仕事になると人が変わっちゃうのかも」
「……わたくしは小さな頃から英才教育と言われ、厳しくされてましたが…… お父様の病気が治って、紫音が生まれてからは確かに甘々になりましたわね」
「葵ちゃんも大変だったのねぇ…… 私が居なくなったからお姉ちゃんも余計にプレッシャーを感じていたのかもしれないわ、ごめんね葵ちゃん」
「晴海さんは関係ありませんわ…… ところで美海さん?」
「んっ? 何?」
「あの話、どうしますの?」
「ああ…… うん…… まだ話してないのよね」
あははっ、どうしたんだ凪海? 大海お兄ちゃんは紫音お姉ちゃんと遊んでるよ? もしかして凪海も一緒に遊びたいのかな。
「ねぇ、総一…… まだ働きたいと思ってる?」
「……へっ?」
いや…… いきなり何の話!?
そりゃ…… いつまでも家でヒモみたいな生活をしていたらいけないとは思っているし、ご近所さんから『鬼島さんちの旦那さん、働きもせずに母娘に手を出してるのよ? おサルさんなのかしら?』とか言われなくて済むから…… 働きに出たいとは思っているよ?
「それなら…… 葵さ……」
「ダメよ! そーくんは働きに出ちゃダメ!」
は、晴海さん?
「ママ…… 気持ちは分かるけど、総一のためでもあるのよ? 総一のちっぽけなプライドを保ってあげるのもパートナーとしての務めでもあるわ」
「そーくんにプライドなんてないもん! いっつも私達に負けても嬉しそうにしてるし!」
「それはそうだけど…… 悔しそうにしている顔も可愛いじゃない」
「うふふっ、そうよね! 『もう降参!』って言いながらも魚雷を発射しちゃうところなんかも…… すごく可愛いの!」
「『魚雷を発射したばかりだから』って顔も堪らないわよね?」
「「ねぇー?」」
……一体何の話をしてるんだ?
貶されているような気がするんですけど。
「まあ! 情けないですわね! うちの主人なんか『もう食べられない!』って言っても一度火が付いたらなかなか止めてくれなくて…… ふふふっ、いつも頭が真っ白になっちゃいますわ!」
「葵ちゃんの旦那さんは異常よ…… 他の三人も相手にしてるんでしょ?」
「『おだんご』作りも奥が深いわねぇ……」
「えぇ、『おだんご』は奥に深く…… ではなくて奥が深いですわ!」
……凪海? パパと一緒にお兄ちゃん達と遊びに行こうか? よし、行こう!
その後も三人は色々盛り上がりながら話を続けていたが、俺は子供達と怪獣ごっこをして盛り上がっていた。
「ぱぱ! よわよわでだめだめー!」
「たいがくん…… ぱぱにそんなこといったらだめだよ?」
「はるままもみうままもいつもぱぱにいってるよ!」
「そ、そうなの?」
「あぅっ! きゃっ、きゃっ! ぱぁぱ!」
うぅっ…… 大海にまでバカにされてる! 凪海は座っている俺の横で捕まり立ちしながら肩をペチペチ叩いてくるし……
パパの威厳が……
「うふふっ、見て美海、あのそーくんの顔……」
「ふふっ…… 可愛い」
チ、チクショーー!!
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