第2話 メスガキなメイドをわからせた!

「おんぎゃあ、おんぎゃあ!」


 意識を取り戻した俺は、見目麗しい金髪のご婦人の腕に抱かれ泣き声を上げていた。


 おんぎゃあ!? え、何これ? 俺、赤ん坊なの??


 この状況からすると、俺はトラックにはねられて死んだ後、どういうわけか異世界に転生したようだ。


 後々わかったことなのだが、俺はヒョーガキア大陸にあるコドジアという国の王子として生まれた。


 王子ということでそれはそれは大切に育てられた俺は、異世界で人生一からやり直せると希望に満ち溢れていたのだが……。


 人間の本質というのはそう簡単に変わるものではない。


 成長するにつれ、俺は元いた世界での氷河期おじさんのように、ずっと子供部屋に引きこもり続けた。


 そして、気付けばあっという間に40年以上もの歳月が流れ、こっちの世界でも立派な引きこもりおじさんになっていたのだった。


 もちろんその間、城からも出ずに冒険もしてこなかった俺は、レベルも1のままという超がつくほどのクソざこだ。


 だが、そんなどうしようもない俺にもついに大きな転機がやってきた。


 この世界では便利なことに、人生を辞めたくなった場合、途中で中断できるシステムがある。


 具体的には、氷河の女神を祀る教会の神官から、再生の呪文という長ったらしい意味不明の文章を教えてもらい中断する。


 そして再び人生を始めたい場合には、その呪文を唱えると中断した状態から始められるというわけだ。


 せっかく王子として転生できたのに、また前世のような引きこもりになってしまった俺は何度も人生を辞めたくなり、その度にこの中断と再生を繰り返してきた。


 だがついこの間、いつものように中断と再生をしたら呪文を間違えたらしく、再生した俺のレベルはなんとカンストしていたのだった。

 

 その他のステータスも全てカンスト状態、魔法も全部習得していた。


 これでようやく無双ハーレム展開できると狂喜乱舞した俺は、さらに道具一覧にも何やら見慣れないものがあることに気付いた。


 ――《わからせ棒》――


 こ、これはこの国を作ったご先祖様が持っていたという伝説の道具じゃないのか!?


 かつてご先祖様である氷河期の勇者は、この《わからせ棒》を使ってメスガキどもをわからせながら旅をして、世界を平和に導いたのだという。


 それが何の因果か、今はこの俺が手にしている。これもご先祖様の遺志ということなのか。


 ――使ってみたい。俺はそんな衝動に駆られた。


「あれ~、王子様のやつ再生してんのかよ~♡」


 そこへ専属のメイドが、ノックもなしに俺の部屋へ入ってきた。


 最近やってきたこの青髪のメイドは、前世でいうとまだJCくらいな感じなのだが、可愛い顔してとにかく口と態度が悪い。ついでに胸までけしからん。


「つーか、何この部屋、ちょ~イカくせ~んだけどぉ~♡ そこらじゅう使用済みのティッシュだらけだしよ~♡ 掃除するのめんどくせ~から、もうずっと死んどけよ、ざ~こ♡」


 あ? 今、ざこって言ったか??


 このメスガキ、俺が最も忌み嫌うセリフを言っちまったな。


 こっちにはもうあの伝説の道具があるんだ。メイドの分際で、王子である俺を馬鹿にするとどうなるかってことをわからせてやる!


 俺は《わからせ棒》を使った。


「え? ちょ、いきなり何なの?? そんなキモいの見せんな!」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「お、王子だからって調子こいてんじゃねーぞ! ……う、うそ? やだ、待って、ねぇ、お願い! やめて! ひ、ひいいいい!」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「ひゃあ!? お゛お゛お゛お゛お゛……、あっ♡ あっ♡ あん♡ あっ♡ おっ♡ んあっ♡ あひっ♡ ふあっ♡」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「ハッ♡ ハッ♡ ハッ♡ あ゛ん♡ あっ♡ おっ♡ あっ♡ ん゛おっ♡ だ、だめぇ……、も、もう限界~♡ はああああああ♡」


※ ※ ※


「王子様♡ これからは心を入れ替えてお仕えします♡ お部屋も私もい~っぱい汚してくだしゃい♡」


 まだ上気した顔のメスガキメイドが、媚びるような目でそんなことを言ってきた。


 どうやら俺は、このメスガキメイドをわからせることに成功したようだ。


「まずはここ、お掃除しときますね♡ ……失礼ひまふ♡」

 

 ほう、いい心がけだ。俺はメスガキメイドにしっかりと掃除させたのだった。

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