第54話 異世界で銭湯を再現しちゃうよね
「って訳で材料も買ったし、ちゃっちゃと作っちゃいますか」
「壁とかはヒノキだと流石にもったいないのだけど、湯舟はヒノキにしたいわよね」
そういうと、アイテムボックスから鉋を取り出して片目をつぶり裏側を見ながら刃の出方を確認する。
「それは何をしてんだ?」「カンナをみれば、腕が判るってなモノよ。買って来た建材を更にこれで整形するの、んでぴっちり組んだ後でもう一回ペーパーやカンナで磨いて表面を仕上げる」
鋸の刃も一つ一つ確認し、不備があれば叩いたり整えたりして。一つ一つ、道具を並べていく。その眼は真剣そのものであり、気迫が伝わって来るではないか。
「魔法で出さねぇのかよ」「バカねぇ、こう言うのは手作りするから意味があるの」
全ての道具を並べおえると、シエルが首を傾げた。
「釘は? ボンドは? 設計図は?」「使わないしいらないわ、まぁ見てなさい」
肩をぐるんぐるんと回しながら、紐と炭で目印をつけ彫刻刀で印を入れながらノミで整える。
「何度も何度も同じものをつくってれば、体が自然と動く。でも、この手法は非効率だからビジネスには向かないのよね」そういって、まるでパズルの様に組み込んで木の槌でコンコンとやりながらはめ込んでいって、外を軽く磨いて整えたものをシエルに渡した。
それを、力任せに外そうとしても外せず身体強化してもびくともせず。ついにはへたり込んでしまった。
「軟弱ねぇ」「なんだこりゃ、釘も無しでこんな樹がきちんと組み上がるもんなのかよ」「買って来た一枚一本の樹じゃダメよ、風呂に使うともなれば湿気や温度変化で幾らでも歪むもの。まともにやったら水漏れもしちゃうだろうし強度も大して出ないわ」
「だから私は、宮大工の耐震みたいによくしなりよく逃がすはめ方をして。四層にしてガラスや薬剤によるコーティングと圧力による加工で材料を作って、魔法できっちり止めた後組み上げてついだのよ」
「言ってる意味が判んねぇ」「アイテムボックスの中でチョメチョメ加工して引っ付けたら釘やボンドより頑丈にはまるってだけ理解してね」
カップソーで、湯を逃がす穴をあけて取りつけながらサクサク湯舟を作っていく。
更に、ザラ板に滑り止めをして床にはめたり番台や暖簾。覗き防止用のギミック等を組み込みお湯や水が出る水道に鏡を取りつけ、飲み物用冷蔵庫も動かせない形で取りつけ。空気中の魔素から水や電気を作る様な魔法陣をノミで刻んでは魔力を流してチェックしている。
夕焼けが沈んだ後も、夜通し防音結界の中でトンカントンカン作り続け翌朝はうっつらうっつらしながら瓦を焼いていた。
窯はどうしたのかと聞いたら、裏に勝手に小さいのを創造魔法で作ってそれを使ってると聞いた時は「それで建物だしゃ早いじゃねぇか」とあきれていた。
「創造魔法でだすと、私と接続切った瞬間に消えちゃうのよ。だから、作りこまなきゃね」
「所でこの防犯用のギミックって何が起こるんだ?」「いきなり視界がブラックアウトして、パンイチで外にほっぽりだされて。体中に私はのぞきをやりましたって入れ墨が一か月間体中に出てきて消えなくなって自動で衛兵に通報されるだけだけど?」
「男女問わず?」「男女問わずよ」「そいつは……色んな意味でやべぇな」
「私は、心が云々とか知らんがなってタイプ何で体の性別で判定が出る様にきっちりかっちりやります。ここは異世界だし、そりゃーもう徹底的にやりますとも私が作ったんだから私がこの銭湯のルールでぇす。文句はうけつけませーん、例外は五才以下で大人が一緒に必要でしょうって位かな」
「そりゃー、あんな戦闘見た後でアンタがそう決めましたって言って文句言う奴はこの街にはいねーだろ(笑)。王家のお墨付きもあるみたいだしな」
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