第36話 盗賊を換金して小躍りするよね
結局、あの後特にイベントもなく次の街についた一行はいきなり門の前で止められる。
「そこのお前ら、そのバカでかい檻はなんだ!」
「盗賊だよ、襲われたんだ。んで生きて捕まえたんだから、金くれって話」
カイウェルがぶっきらぼうにいうと、それをうさん臭そうにみる兵。
「偉そうなバカだな、身元の確認もなしに渡せるわけないだろが」
「お前ら何処に眼をつけてんだ、この馬車の紋章みてからいえよボケナス」
チンピラの様にカイウェルが自分達の馬車を親指で指すと、そこにはデカデカと王家の紋章が……。
「こっこれは王家の紋章、さては貴様ら盗賊の一味か!!」
「なんでそうなるんだよ!」「こんな、汚い連中が王家に連なる訳がないだろが」
「言われてるよカイ君」「うるせぇ」
プププとやっている、ササラにムッとするカイウェル。
そこへ、近衛兵の騎士二人が慌てて滑り込む。
流石の衛兵でも、近衛兵の特別製の甲冑を見間違えるはずもなく落ち着いた。
「見て下さい、盗賊が王家の馬車で!」
「バカモノ!、その方は王子のカイウェル様だ」
「は?」「あのバカ王子の?」「そうだ、あの問題児の冒険者の真似事を嬉々としてやるチンピラ以下のクソバカカス王子だ」
「この汚い粗暴な奴が?」「偉そうじゃなくて本当に偉いだけだった?」
近衛二人がゆっくり頷く。
「微妙にむかつく納得のされ方だな」「自業自得です」
「んで、金はでるんだろうな」「そりゃ身元確認して、お尋ねものか確認して。指名手配ならしかるべきお金をお支払い致します。それが、一連の我々の仕事ですので特例はありません」
早速確認を始める衛兵が、一人を指さして言った。
「こいつだけ、金貨十枚の賞金がかかってますね。他は通常の盗賊と同じで、銀一枚の扱いになります」
ひゅーと口笛を吹く、カイウェル。
「すげぇじゃん」「カイウェル様、実力だけなら誰もが認めますからね……。その辺の盗賊も賞金首も大して変わらないって感じですか」
「そら、師匠より酷く無きゃ楽勝だろ(笑)」
「カイく~ん、それは妙に引っかかる言い方ですなぁ」
「姉さんも、もう少し自覚してよ……」
「運賃と討伐で折半だな、鈴さん悪いけど俺の分から金貨二枚分受け取ってくれ」
そういって、金貨二枚をほいっと渡すカイ。
「同じく、生活費にいれといて」と金貨四枚渡すササラ。
「じゃ、今日はしゃぶしゃぶにしましょ♪」と鈴が言えば、二人は獣の様な雄たけびをあげて両膝をつき天に両手を突き上げて吼えた。
「「いよぉぉぉぉぉぉぉぉし!!」」
「あの……、そのしゃぶしゃぶというのは」と近衛の一人が尋ねる。
「最高に美味い鍋料理だよ、高すぎて中々手がでないが」
(王子が手がでないってどんだけヤバい料理なんだよそりゃ)
ともう一人の近衛が苦笑しながら思った。
「宜しければ、近衛のお二方もご一緒して下さいな♪」
「いえ、我々は……」「食え!これは勅命だ」
「はい…、判りました」
何を食わされるんだろうという、不安の中で衛兵は天に祈った。
「鈴さん、折角この二人も食べるんだ。いいお肉いい野菜で行こう♪」
これ以上ない位ご機嫌のカイとササラが、スキップしながら街に入っていった。
「「本当、俺達は何を食わされるんだ……」」
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