第5話 部屋で出て来たお菓子が美味しく無かったよね
「あー疲れたー疲れたー」
そういって、やたら広い部屋の椅子ではなく床にへそ天大の字で転がるササラ。
「ササラちゃん…」それをあきれ顔で鈴が席に座る。
豪華な室内には、フカフカのソファーと美しい樹のテーブル。もこもこの絨毯が敷かれており、ササラが絨毯に沈み込んでローリング。
「失礼します」そういって、案内してくれたメイドがお菓子をのせたワゴンを押して部屋に入って来た。
まず床に転がるササラを見て、虫でも見つけたような顔になり。鈴の方を向くと、鈴は実に美しい所作で紅茶を飲んでいるのを見て輝く笑顔になった。
(この二人が姉妹って嘘でしょ、こっちの御令嬢がカイ様の想い人……)
「おかし~おかし~」そういって、ワゴンの上の菓子のクッキーをかっさらうササラ。
「ありがとうございます、姉が我儘いったようですみません」
軽く会釈をする様にメイドに頭を下げる鈴に、メイドが逆にあたふたした。
「い…いえ……、国王様にもお菓子を出す様に言われておりますので。紅茶の替え等は必要でしたら仰って頂けると助かります」
一礼すると、ドアの直ぐ右側に背筋を正して立つ。
ササラがいつも通り、ハムスターの様に口に突っ込むが急に真顔になると首をひねる。
「どうしたの?ササラちゃん」
「これ、美味しくないよ」
(はぁぁぁ?何言ってんだこの小娘は、そのお前の手で持ってるクッキー一個で私の給料何か月分だと思ってんだゴラァ)
再び何かGを見る様な、顔になるメイド。
鈴も、そっと一つタルトを小さな皿に移してからゆっくりとナイフできって小さくして口に運ぶ。
(所作の一つ一つが美しいわ~、憧れる)
途端に、フォークをテーブルにことりと置いて眼を閉じ。鈴がしばらく目を閉じて、ゆっくりと咀嚼して紅茶を一口飲んだのちに眼をあける。
「なっ何か問題がありますでしょうか……」
「ササラちゃん、これは美味しくないのじゃなく。甘さをかなり控えめにした感じね。おそらく、果物の果汁やハチミツをベースに甘さを出したものよ」
(あんな小さな一口でそこまで判るもんなの?!)
「問題はないわ、ただササラちゃんが食べたかったお菓子じゃないわよね」
そこで少し考え、私のスキルを使っても大丈夫かしらと鈴が尋ね。
室内を破壊するようなものでなければ、どうぞお使いくださいとメイドが言った。
「ルーム」そういうと、いつもの扉が現れメイドが見慣れぬ扉にびっくりした。
「ちょっと、行ってくるわ。直ぐに戻るから、少し待っててね」
そういうと、鈴が扉を開けて中に入っていく。
しばらくすると、駄菓子屋に売ってそうなお菓子をビニール袋に乱暴につめた詰め合わせを一つ抱えて鈴が戻って来た。
「はい、ササラちゃん。お夕食があるかもしれないから、食べ過ぎはダメよ。あと、ゴミはルームに持ってくからちゃんと最初のビニール袋にいれてよね」
「ありがと~、さっすが鈴」
そういって、ビニール袋から飴を取り出すと乱暴にむいて食べ始めた。
「ごめんなさいね、折角持ってきてくださったのに」そういって鈴が笑えばメイドも「私の事は、マリンとお呼び下さい。それに、どうかお気になさらず」そういって笑った。
「マリンさんもおひとつ如何でしょうか?、安物のキャラメルですけど味はそこそこいけるんですよ」
そういって、一つの袋を差し出す鈴。それを両手で宝物を受け取る配下の様にうやうやしく受け取ったマリン。
「これは、一体どうやって食べるのかしら」
「これは、外を外すの。こう包み紙って呼ばれてるこの曇った色の皮みたいのをこうやって」そういって、鈴が微笑みながらそっと包み紙を外し茶色の四角いキャラメルが出て来た。
「それで、このキャラメルをこうして口に一個入れる」
鈴は自分でやって見せ、マリンも真似してキャラメルを口の中に入れた。
「あっま~い、おいしぃぃぃぃぃぃ。何よこれ!!」
その横で一箱全部の包み紙をいっぺんに外してハムスターになっているササラを見て、マリンの顔が悲壮に染まった。
「そんなっ!勿体ない」
「もぎゅ?もぎゅぎゅぎゅ」
「ササラちゃん、口の中空にしてからじゃないと何を言ってるか判らないわ」
苦笑する鈴、ササラは頷くと一気にその辺に置いてあった缶ジュースで流し込む。
「ぷは~、袋に缶ジュースまで入れてくれるなんてやっぱ気がきいてるね☆」
マリンが震えながら、そちらをササラを睨む。
「欲しければ鈴からもらえばいいじゃん、ほら両手を出して頂戴って」
それを聞いて、深いため息をつくと苦笑して「マリンさんキャラメルもっといります?」と鈴が聞くと高速で首を縦に振った。
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