まいうぇい☆彡
めいき~
第1話 カイ君王子様だったよね
「にしても、あっちにうっすら街が見えんな…」
手でひさしを作って、眼を細めたカイが正面にデカい壁があるのを指さして言った。
「おいっちに、おいっちに」
その場で、赤ジャージのまま屈伸を始めるササラ。
鈴がそれを見て、苦笑した。
「まさか、ササラちゃんあそこまで走る気?」
「うむ」
カイも、それしかねぇかと苦笑した。
「私のステータスは、ゴミレベルなんですが」
「私か、カイ君がおぶってくから大丈夫」
「「なんですと!!」」
「どっちがいい?」
そういって、カイと自分の背中を交互に指さした。
「ササラちゃんで」と即答した。
「ガッデム!」叫びながら、項垂れるカイ。
「おーけー、じゃあのったのった」
「カイ君悪いけど、なんか出て来たら見敵完殺でおなしゃす」
「まかせな!」そういって、ロングソードを右手にもって走る。
しばらく、走っていると後ろから叫ぶ様にササラが言った。
「このままの速度で、行ったらあの並んでる行列に突っ込むんじゃない?」
「俺達は大丈夫だが、鈴はヤバいよな。速度落とそう!」
そういって、徐々に速度を落とし始める。
ちなみに、ササラの背中であおる風に顔が後ろに色々引っ張られて乙女としては残念な顔になっていた鈴がササラの頭を叩きながら言った。
「気づくのが、おっそいよぉ」
色んな自分からでた汁まみれの顔を吹きながら、涙目で文句を言う。
「めんご~、しかし凄い行列ね」
一番最後尾に鈴を地面におろしながら、ササラがのどかにいって鈴がジト目になる。
「本当すげーな、なんでみんなこっち見てんだよ」
目ん玉ひん剥いて、一つ前の商人が地面に座り込んでカイに頭を下げ始めたではないか。
「ぼっちゃま~、ぼっちゃま~!」
凄い勢いで、こっちに走ってくる水色髪のメイドがいて衛兵がメイドに向かって敬礼していた。
「俺らも、頭下げといた方が良いかな」
「トラブルにならない為にも、そうしときましょ」
カイとササラが示し合わせて、三人で頭を下げた。
カイの前で、水色髪のメイドが急停止すると開口一番カイの頭を叩いた。
「俺、何かしました?」
メイドはその言葉に溜息をつくと、もう一度カイの頭を軽く叩いた後でカイだけその場で立たせると臣下の礼を取る様に肩膝をつく。
「もうっ!、カイぼっちゃま。一人で森にいくぜとか言って、一週間も帰らないから心配しましたわよ。ところでこちらの女性の方は……」
「チビのが師匠で、美人の方が鈴。二人は姉妹だけど?」
その瞬間、頭の上から足先を二人に視線を向けて三往復したメイドはカイを往復ビンタで六往復した後叫ぶ様に言った。
「ぼっちゃま!そういう事でしたら、お迎えの馬車をご用意させて頂きましたのに。成程、心に決めた人が居るから見合いは全て断ってくれとあれ程おっしゃっていたのはこういう事でしたか……」
「私達、なんか勘違いされてない?」
「絶対、勘違いされてると思う」
「所で、ぼっちゃまって俺?」
自分の事を指さすカイ、瞬間メイドがカイの顎を飛び膝蹴りした。
空中に浮いた後、どさりと地面に転がる。
「記憶はもどりましたか?ぼっちゃま。貴方は、このヴェルディバーグ国唯一の王子カイウェル・フォン・プレセアドルアン・ジョデニミス・ヴェルディバーグ様じゃないですか。最近は私の監視も抜けて、遊びに行くぜとか言ってはあっちこっち冒険者しくさってからに」
「「「なんだって!!!」」」
三人で叫ぶ、カイとササラと鈴の三人。
ちなみに、その台詞を聞いた瞬間列の前の人が平謝りし始めた。
「俺、貴族どころか王子だった件」
「ぇ~、このまるでダメ男が王子様とかこの国終わってない?」
「ササラさん酷い」「事実よ」
「えぇ、えぇ真に残念ながらこのまるでダメ男が唯一の王子です。私も転職を本気で何度も考えてしまう程に奔放自由な方で困っておりまして」
ササラの言葉に、しみじみ答える水色髪のメイド。
「申し遅れました、カイ様の専属メイドでピーリカと申します。どうか、リカとお呼びください」
溜息をつきながら、カイを指さして。「このボンクラは、実は先月も俺貴族がよかったな~伯爵とか子爵とかになれたりしない?とか王に言ってめちゃくちゃ困らせたりしてたではないですか」
「普通に考えたら、唯一の王子が貴族になんかなれるわけ無い件について」
「俺いいそうだわ~、王子なんて馬鹿の定番じゃん」
「その定番以上のバカ王子が、貴方様ですカイ様」
「とにかく、貴方がここに並んでいるのは色んな人の迷惑ですから」
そういって、リカが両手を二回叩くと悪趣味な髑髏だらけの馬車が紅い魔法陣から現れた。
リカが馬車の扉をあけると、お乗りくださいと笑顔をササラと鈴に向けた。
「おい、ぼっちゃまお前は逃げんな」
カイに向けた笑顔と声は、何処かドスが利いた笑顔になっていた。
二人を乗せた後、カイは簀巻きにして馬車の屋根にくくりつけると馬車は城へ向けて動き出した。
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