第24話 同盟。女狐。そして転がされる強慈郎。
交流会から数日経ち、各々陣営の主要人物達は司令官ライナスによって招集をかけられていた。
中央管理棟最高司令室。居住区からでも見えるような巨大な棟の最上階に配置された、中央管理棟最高司令室。
壁面には大型の戦況モニターや宇宙映像が映し出されていた。ここは全ての情報が集まる最高機密エリアである。
「さて、諸君。先日の交流会ではよく頑張ってくれた。大いに活気付けてくれたことを改めて感謝する」
ライナスからねぎらいの言葉をかけられた彼らは各々が反応を示した。
「早速だが、我々宇宙要塞トリリオンは『鬼ヶ島』と同盟を結ぼうと考えている」
その言葉に室内が騒めく。しかし、それを意に介さずライナスは続ける。
「この会議はその最終確認だ。後で宇宙艦隊総司令部で調印式を行うことになる」
そこでライナスは一息つき再び話し始める。
「そして、同盟に至った経緯だが銀河連邦が……この要塞に宣戦布告をしてきた」
その言葉に一同がどよめく。しかし、彼は更に続ける。
「奴らが派遣した戦力はおよそ艦船は合計で100隻以上」
その言葉に室内の空気が重くなる。無理もない話だ。彼らは鬼ヶ島が来るまで、要塞内では大した戦力を保有しておらず、銀河連邦とまともに戦えるほどの戦力はなかったからだ。
その言葉に一同は驚きの表情を見せたが、すぐに納得した表情へと変わる。彼らも薄々感づいていたのだろう……このままではいずれ敗北すると……そしてこの提案は願ってもないものであった。
「そこで我々は同盟を結ぶことを決定した。そして銀河連邦の艦隊を迎え撃つために、この要塞に『鬼ヶ島』の艦隊が駐留する」
その言葉に室内が再びざわつく。しかし、彼はそれを無視して話を続けた。
「……だが、我々もただ手をこまねいているだけではない。既に戦う準備をしている」
その言葉を聞いた一同はさらに驚きの表情を見せたがすぐに納得した表情へと変わる。彼らは薄々感づいていたのだ……このままではいずれ敗北すると。
「我々は銀河連邦の艦隊を迎撃するために、現在戦力増強計画の真っ最中だ」
ライナスはそう言って不敵な笑みを浮かべる。彼はまだ諦めていなかったのだ。その自信に満ちた表情を見た彼らは再び息を吞んだ。
「今後は鬼ヶ島との協力体制を築くことを第一とし、そのためにもまずは相互理解を深めていこうと思う」
そして、この作戦に全面協力する旨を約束した後、会議は終了した。
―――
されから更に一か月、季節はすっかり夏へと変わっていた。同盟締結から銀河連邦との戦いに向けての準備は着々と進んでいた。
そんな中、青雲斎に呼び出された強慈郎、イリシウム、ミザリィは彼と共にある部屋へ向かっていた。
「お待ちしておりました」
部屋に入ると青雲斎から声がかかり、後ろには『ブラックジャックス』の艦長、ネレアの姿があった。
「よく来てくれたね。実は君たちに頼みたいことがあるんだ」
「改めて呼びした理由はなんだ?」
単刀直入に強慈郎は尋ねるがネレアはそれに答えず、代わりに青雲斎に視線を向ける。それを受け彼は説明を始めた。
「この一か月、強慈郎達は宇宙の歴史、銀河連邦について、座学に励んでもらいました」
「あぁ、クソほど役に立たない話しな」
「この私がついているのに、あんなの時間の無駄ですよ」
心底嫌そうな顔で吐き捨てる彼とふんぞり返るイリシウムの顔を交互に見て、気まずそうに説明を続ける。心なしか冷や汗をかいているようだ。
「座学に関してはその、必要なことでしたので……。それで、今回あなた方をお呼びしたのは他でもありません。『ブラックジャックス』の戦闘部隊と同盟を組んでいる鬼ヶ島のメンバーで共同訓練を行って欲しいのです」
その言葉に三人は驚きの表情を浮かべたが、特にミザリィは興奮気味であった。
「え、強慈郎と手合わせできるのか?」
目を輝かせながら問いかけるミザリィだったがネレアはそれを制するように言葉を投げた。
「いや、今回は共同訓練だから。手合わせは無しだよ」
「そ、そうか……それは残念だな……」
彼女は少し残念そうな表情を浮かべたがすぐに切り替えたようだ。そんな彼女に青雲斎は優しく声をかける。
「大丈夫ですよミザリィ。皆さんとの訓練できっと良い経験になるはずです」
「そうだな!よしっ頑張るぞ!」
意気込む彼女にネレアは微笑むと、話を続けた。
「もう一つ、お願いしたいことがあるんだが……強慈郎くん」
「ん?なんだ」
強慈郎が聞き返す。
「私の弟なんだが、あれ以来すっかり塞ぎ込んでしまってね……。我々も説得を試みたんだがノーリアクションでね。そこで君に活を入れてやってほしいんだ」
「あれ以来ってのは、俺たちが地球を出てすぐの事か?」
バツが悪そうに外を向き、俯きながら答える。
「そうだね。君に負けたことがよほどショックだったみたいだ」
「……わかった、俺も付き合おう」
その背中を見て流石に同情をしたのか、頷く強慈郎の言葉を聞いた瞬間。
「助かるよ、ありがとう!では早速仮想戦域センターを抑えよう」
まるで先ほどまでの態度が嘘のように明るい声を出すとネレアは青雲斎に訓練場の手配をするよう伝える。
「かしこまりました」
彼が部屋を出ていくのを見届けると、強慈郎が口を開く。
「おい、さっきのは演技か?」
「おや、なんのことかな」
とぼけるように笑みを浮かべる彼女に強慈郎は舌打ちをした。
「弟の事を気に病んでたんじゃないのかよ」
「少し手のささくれが気になってね。あはは」
強慈郎は呆れながらもそれ以上追及はしなかった。
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